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スポーツ選手における遺伝子型と腱・靭帯損傷リスク
📖 文献情報 と 抄録和訳
スポーツ選手における一塩基多型と腱・靭帯損傷:系統的レビューとメタアナリシス
📕Fukuyama, Yumi, Haruka Murakami, and Motoyuki Iemitsu. "Single Nucleotide Polymorphisms and Tendon/Ligament Injuries in Athletes: A Systematic Review and Meta-analysis." International Journal of Sports Medicine (2024). https://doi.org/10.1055/a-2419-4359
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✅ 前提知識:血管内皮増殖因子(VEGFA)遺伝子型とは?
・VEGFA(血管内皮増殖因子)は、組織の修復や血管新生に重要な役割を果たす。
・VEGFA遺伝的多型は血流や酸素供給に影響を与え, 腱・靭帯の強度や回復力を変える可能性がある。
[背景・目的] この系統的レビューとメタアナリシスは、複数の競技スポーツを行う青年期および成人アスリートにおける遺伝的多型と腱および靭帯損傷の関連性を特定することを目的とした。
[方法] PubMed、Web of Science、EBSCO、Cochrane Library、MEDLINEのデータベースを2023年7月7日まで検索した。対象となった論文には、腱および靭帯の損傷に関する遺伝学的研究と、負傷した選手と負傷していない選手の比較が含まれていた。
[結果] このレビューには、12件の論文のメタ分析から、1,687件の負傷例と2,227件の対照例をまとめた31件の論文が含まれていた。144の候補遺伝子多型(同定されたのは一塩基多型のみ)を特定した。メタ分析には、血管内皮増殖因子A(VEGFA)rs699947、コラーゲンI型α1 rs1800012、コラーゲンV型α1 rs12722、マトリックスメタロプロテアーゼ3 rs679620が含まれた。VEGFA rs699947 多型は、C アレルを有する運動選手において、傷害リスクが低いことを示した([C vs. A]: OR=0.80、95% CI: 0.65–0.98、I 2 =3.82%、p=0.03)。これらの損傷のリスクは、他の多型によって影響を受けなかった。
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[結論] VEGFA rs699947 多型は、運動選手の腱および靭帯損傷のリスクに関連している。この研究は、運動選手のこのような損傷のリスク要因の理解に貢献する遺伝的変異に関する洞察を提供している。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
怪我をしやすい選手、怪我をしにくい選手、いると思う。
怪我のしやすさは、身体機能や、スポーツ種別や、ポジション、メンタル、多岐にわたる影響を受けると思う。
その中で、今回の抄読研究は『遺伝子型』が怪我のしやすさに影響する、ということをメタ解析において明らかにした。
実際に調査されたのは血管内皮増殖因子(VEGFA)の遺伝子型で、僕もこの研究を読んで初めて知った。
前提知識にも書いたように、VEGFAは、組織の修復や血管新生に重要な役割を果たす。
その遺伝子型が異なることは、血流や酸素供給に影響を与え, 腱・靭帯の強度や回復力を変える可能性がある。
そして、メタ解析の結果として、Cアレルを有する選手は、傷害リスクが低いことが示された。
今回学んだことは、元々(先天的に)怪我をしにくい選手、しやすい選手がいる、ということ。
それを知っておくことは、後天的にコントロールできる部分で傷害リスクを低める需要の高低を知ることに近しい。
新たな視点を与えてくれる論文だった。
⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨
📕スポーツ選手における遺伝子型と腱・靭帯損傷リスク
— 理学療法士_海津陽一 Ph.D. (@copellist) February 18, 2025
・12論文を包含
・血管内皮増殖因子(VEGFA)遺伝子型:組織修復や血管新生に重要な役割
・VFGFAと腱・靭帯損傷リスクの関連
🔹Cアレルを有する選手は傷害リスクが低かった (OR 0.8)
遺伝的(先天的)に怪我をしやすい, しにくい選手がいるようです😲 pic.twitter.com/U8k9wGeCQq
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