介護施設における転倒。履き物の関与と転倒メカニズム
📖 文献情報 と 抄録和訳
長期入所型高齢者介護施設における靴と転倒:ビデオキャプチャデータの分析
[背景・目的] いくつかの靴の特徴がバランスや歩行パターンに影響を及ぼすことが示されており、高齢者の転倒リスクに影響を及ぼす可能性がある。しかし、靴と転倒の関連を明らかにすることは、不正確である可能性のある自己報告に頼ることが多いため、本質的に困難である。
[方法] 2つの長期入所型高齢者介護施設で発生した転倒の記録ビデオをまずスクリーニングし、その時に履いていた履物(裸足、靴下、スリッパ/サンダル、靴)を記録できるかどうかを判定した。次に、これらの転倒を3人の評価者が独立して評価し、靴が転倒に寄与した可能性があるかどうか、またどのようなメカニズムが原因であった可能性があるかについてコンセンサスを得るために会議を開いた。履物の種類と転倒の特徴(提案されたメカニズムおよび転倒方向)との関連でクロス集計が行われた。
[結果] 58歳~98歳の高齢者118名(平均年齢82.8歳、SD 7.6)が経験した転倒は300件であった。これらの転倒のうち、履物を確認できたのは224例(75%)であった。コンセンサス会議の結果、履物が関係する可能性があると考えられた転倒の割合は40(18%)であった。転倒に履物が関与している可能性は、参加者が靴下を着用していた場合(14/19転倒;履物に関連した転倒全体の74%)が最も高く、次いで裸足(2/6転倒;33%)、スリッパ/サンダル着用(17/100転倒;17%)、靴着用(7/99転倒;7%)であった。
■ 履き物と転倒メカニズム
<スリッパ/サンダル(17件の転倒)>
・最も一般的な転倒原因は側方不安定性(9件、53%)であり、その次に不十分な固定(4件、24%)、不十分な滑り止め性能(3件、18%)、不十分なつま先クリアランス(2件、12%)が続いた。
<靴(7件の転倒)>
・主な転倒原因は不十分な滑り止め性能(3件、43%)と不十分なつま先クリアランス(3件、43%)、そして不十分な固定(1件、14%)であった。
<靴下(14件の転倒)>
・大部分の転倒原因は不十分な滑り止め性能(13件、93%)であり、残りの1件は過度な滑り止め性能によるものであった。
<裸足(2件の転倒)>
・すべての転倒は不十分な滑り止め性能によるものであった。
[結論] 履物は入所高齢者介護における相当数の転倒の潜在的要因である可能性がある。靴下の着用は高齢者を将来の転倒リスクにさらすと思われるので、この集団では避けるべきである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
以前、脳卒中患者の靴と足の問題、についての文献を抄読したことがある。
その中の、靴の問題として以下のようなものがあった。
🔹室内:スリッパが57%
🔹屋外:ウォーキングシューズが37%
🔹約半数が足に合わない靴+
臨床現場においては、足に合わない靴を履いている患者、不適切な履き物を履いている患者が多い、ということを学んだ。
そして、今回抄読した研究においては、不適切な履き物では、転倒リスクが高まる可能性が示唆された。
特に、履き物というより、靴を履いていない状態、靴下で歩くことの危険性が示された。
僕はリハビリテーション病院に勤務しているのだが、ベッドサイドでは靴下のままで洗面台まで歩く、という姿をチラホラ見かけることがある。
その靴下で歩いている状態は、スリップからの転倒のリスクとなる。
患者さんの生活指導として、すぐにでも組み入れたい。
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