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パフォーマンスの性差。その解剖学的・生理学的理由


📖 文献情報 と 抄録和訳

人間のパフォーマンスにおける性差

📕Hunter, Sandra K., and Jonathon W. Senefeld. "Sex differences in human performance." The Journal of Physiology (2024). https://doi.org/10.1113/JP284198
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[レビュー概要] 生物学的変数としての性は、生物医学研究において過小評価されている側面であり、近年その重要性が明らかになってきた。この総説では、ヒトの身体能力における性差についての現在の理解を評価する。男性は、特に男性の思春期以降、より速く、より強く、よりパワフルであるため、多くの身体能力において女性よりも優れている。本総説では、ヒトの身体能力におけるこうした性差の一因となる、生理学的・解剖学的システム(一般に性ステロイドと思春期によってもたらされる)における主要な性差を明らかにする。具体的には、ヒトの身体発育に影響を及ぼす主要な性ステロイドの影響を取り上げ、「実データ」とエリートアスリートの観察研究から得られた知見を論じ、身体パフォーマンスのいくつかの側面における性差に寄与する主要な生理学的メカニズムを明らかにする。(1)絶対的筋力とパワー、(2)相対的パフォーマンスの指標としての四肢筋の疲労性、(3)最大有酸素パワーと持久力。筋力、パワー、スピード、持久力に関わる人間のパフォーマンスにおける深い性差は、主に性ステロイドホルモン、性染色体、エピジェネティクスの直接的・間接的な影響に起因するものであり、思春期から成人期にかけてのスポーツにおける性差に基づくカテゴリーに関する政策決定の科学的根拠と枠組みを提供するものである。最後に、生物学と生理学の多くの分野において、女性に関する研究や情報が不十分であるという、ヒトのパフォーマンス研究における性差の偏りと問題を浮き彫りにし、知識のギャップとインパクトのある研究の機会を作り出している。

■ 男女間の解剖学的および生理学的な違い

この図は、男女間の解剖学的および生理学的な違いが、スポーツや身体パフォーマンスにどのように影響を与えるかを示している。以下の各ポイントは、男性が一般的に女性よりも優れたパフォーマンスを発揮する理由を解説している。

・神経駆動(Neural Drive): 男性と女性は似たような、最大限に近い神経駆動レベルを持つ。つまり、筋肉を最大限に活性化する神経信号の強さに性差はない。
・脂肪組織(Adipose): 男性は相対的に女性よりも体脂肪が少ない。脂肪の分布や機能の違いもパフォーマンスに影響を与える。
・筋線維(Muscle Fibers): 男性は速筋線維(タイプII)の割合が高く、遅筋線維(タイプI)の割合が低い。速筋線維は瞬発力やパワーに優れ、スポーツパフォーマンスに重要な役割を果たす。
・骨格筋(Skeletal Muscle): 男性は筋肉の断面積が大きいため、筋繊維の違いと相まって、男性は女性よりも強く、速く、よりパワフルな筋肉を持つ。
・心臓(Heart): 男性の心臓は大きく、1回の拍動で送り出せる血液量(心拍出量)が多い。これにより、運動中の酸素供給が効率的になる。
・肺と気道(Lungs & Airways): 男性は女性よりも肺が大きく、気道の断面積も広い。これにより、より多くの酸素を取り込むことができる。
・赤血球(Red Blood Cells): 男性は女性よりもヘマトクリット値やヘモグロビン濃度が高く、酸素運搬能力が優れている。
・骨(Bones): 男性の骨は長く、密度が高く、強い。これにより、身体の支持力や耐久性が向上する。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

僕には姉がいるのだが、小学校低学年までは走力やその他パフォーマンスでも歯が立たなかった。
だが、小学校高学年〜中学くらいにかけて、事態は随分と変わってきた。
走るのも、投げるのも、身体的パフォーマンスにおいて僕の方が上回った。
「そういうもん」として、深く理由も考えぬまま、最近まで生きてきた。

男性と女性の違い、『性差医療』、というものが近年フォーカスされている。
その違いを具体的に捉え、それを評価や治療、研究などに活かす。
では、身体的なパフォーマンスにおける違いを生み出している具体的な仕組みとは、何か?
今回の抄読研究は、その部分を明らかにしてくれた。
神経駆動には違いは少ない、むしろ効果器側の骨格筋(断面積)、筋線維(筋タイプ)に大きな違いがある。
さらには骨、臓器、脂肪組織、赤血球にも違いがあるという。
これを逆手に取るならば、女性が神経駆動の部分を強化することは、パフォーマンス向上につながりやすいかもしれない。
男女の特徴を捉えることで、性別ごとのトレーニング可能性の領域の違いが見えてくる、気がした。

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