認知症前 / 診断時 / 後。転倒発生率の経時的変化
📖 文献情報 と 抄録和訳
認知症診断前、診断中、診断後の転倒事故:人口ベース研究
[背景・目的] 認知症の診断段階における転倒事故発生のタイミングは不明である。研究目的:認知症患者の転倒事故が増加し始める時期を特定し、認知症患者が最も転倒事故のリスクにさらされる時点を探り、認知症診断前後の転倒関連因子の違いを確認することである。
[方法] 本研究は、認知症患者2,707名と、認知症でない1対1のマッチング対照者2,707名を対象とした。認知症診断と発症日は、国際基準に従ってNational Patient Registry (NPR)とSwedish Cause of Death Registerから特定された。転倒による傷害と慢性疾患の既往に関する情報はNPRから入手した。データは条件付きポアソン回帰と一般化推定方程式モデルを用いて分析した。
[結果] 認知症患者における転倒の発生率は、対照群と比較して、診断前4年から増加し始め(発生率比[IRR]1.70、95%信頼区間[CI]1.30-2.22)、認知症診断年にピークに達した(IRR 3.73, 95% CI 3.16-4.41 )。大量飲酒、身体活動、および心臓代謝疾患(CMDs)は、認知症患者の転倒事故と関連していた。
[結論] 認知症の人は、診断までの4年間から転倒の発生率が高く、診断の年にピークに達する。高齢、女性、大量飲酒、身体活動、CMDsは、認知症患者の転倒を予測する可能性がある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
こういうニュースを見たことがある。
「たそがれ時(夕暮れ)時は、一日の中でも歩行者が死亡する交通事故が多発する危険な時間帯」(🌍 参考サイト >>> site.)
その理由は、以下のようなものらしい。
周囲の視界が徐々に悪くなる(明るさが急激に変化するほうが運転(歩行)に支障をきたしやすい)→ドライバーが歩行者の姿を認識しづらい
辺りが急激に暗くなると歩行者にとってもに視認性が下がってしまう→歩行者が車の姿を認識しづらい
そして、今回の研究を見たところ、認知症の診断においても、たそがれ時(非認知症→認知症への移行期)があり、その期間において最も転倒の危険性が高いことが明らかになった。
その理由としては、以下のようなものだろうと仮説する。
認知症診断前:健常者だからもちろん転倒リスクは低い
認知症直前〜診断時:本人の危険認識低下や異常行動がある一方で、周囲の人間はそれに気づいていないため、最もリスクが高くなる。身体機能低下も併存するかもしれない。
認知症診断後:本人の危険認識低下や異常行動は変わらないが、周囲の人間がそれに気づき、モニタリング &サポートや行動抑制できるため、転倒リスクは急激に低下する
つまり、大事なことは「周囲の人間の早期の気づき」である。
そのためには、モニタリングしやすいマーカーから認知機能障害を疑える周囲の人々の認識やシステムを構築することだ。
例えば、最近のエビデンスを利用すれば、認知症の前兆として「歩行速度低下」がマーカーとして有用であることが示唆されている。
これを利用して、ウェアラブル(スマホなど)で常に歩行速度をモニターしておいて、それが低下したときに「認知機能低下かも?、認知症かも?」などの連絡が家族に自動で行くシステムとか。
大事なのは、夜の前兆に気づくこと。
たそがれ時、移行期は、一番危険なのだ。
それは、覚えておこう。
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