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高齢者施設の組織的背景と疼痛


📖 文献情報 と 抄録和訳

介護付き高齢者向け住宅における組織的背景と入居者の疼痛との関連:反復横断研究

📕Hoben, Matthias, et al. "Association Between Organizational Context and Resident Pain in Assisted Living: A Repeated Cross‐Sectional Study." International Journal of Geriatric Psychiatry 39.11 (2024): e70005. https://doi.org/10.1002/gps.70005
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[背景・目的] 高齢者の集団介護においては、入居者の疼痛はよく見られるQOL上の課題であり、組織的背景が、入居者レベルの要因以外の入居者の疼痛の差異を説明する可能性がある。ほとんどの研究は、主に介護付き住宅(AL)を無視して、介護施設(NH)に焦点を当ててきた。AL入居者は、NH入居者と同程度の疼痛リスクにさらされているが、ALではサービスや人員資源が少ない。私たちの目的は、COVID-19パンデミックの最初の2波の期間中、ALの組織的背景が居住者の疼痛と関連しているかどうかを調査することでした。

[方法] この反復横断研究では、コロナウイルス感染症の第1波(2020年3月~6月)と第2波(2020年10月~2021年2月)において、主要連絡先から収集したALホーム調査と、これらのホームにおける行政上の入居者アセスメント・インストゥルメント・ホームケア(RAI-HC)記録とを関連付けました。調査では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に対する備え、正看護師または診療看護師の有無、直接ケアスタッフの不足、スタッフの士気の低下、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行、入居者の居室への隔離、医師とのビデオ通話のサポート、介護者の関与の促進について評価しました。従属変数(中程度の日常的な痛みまたは激しい痛みの強度)と入居者の共変量はRAI-HCから得た。一般化推定方程式を用いて、入居者の評価と共変量を繰り返し調整し、パンデミック時の入居者の痛みにALの組織的背景が関連しているかどうかを評価した。

✅ 診療看護師とは?
・ナース・プラクティショナー(Nurse Practitioner: NP)、または日本語では「診療看護師」と呼ばれる職種は、通常の看護師とは異なる高度な医療行為を行うことができる上級看護師のこと。

[結果] 41施設985人の入居者(第1波)と42施設1134人の入居者(第2波)を対象とした。疼痛の有病率 [95% 信頼区間] は、20.6% [18.6%–23.2%] (2019年3月~6月) から19.1% [16.9%–21.6%] (2020年10月~2021年2月) へと、有意ではないが減少した。

■ 高齢者施設の組織的背景と疼痛
・診療看護師の利用可能性(OR: 0.761, p=0.035):診療看護師がいる施設では、痛みの発生率が24%低い。これは、診療看護師が痛みの管理において重要な役割を果たしている可能性を示唆している。
・直接介護スタッフの不足(OR: 0.684, p=0.0044):スタッフ不足が報告された施設では痛みの発生率が32%低い。スタッフ不足による「痛みの見逃し」がある可能性を示している。
・居室の隔離措置(OR: 1.616, p=0.0011):居室隔離が行われた施設では、痛みの発生率が1.62倍高い。精神的孤立や活動性の低下が影響している可能性がある。
・COVID-19アウトブレイクへの準備状況(OR: 1.383, p=0.034):準備が良好であると評価された施設では、痛みの発生率が1.38倍高い。これは、感染対策が優先される一方で、痛みの管理が手薄になる可能性を示唆している。

[結論] ALの組織的背景因子は入居者の疼痛と関連していた。政策および管理上の介入は、このような因子に対処することが可能であり、またそうしなければならない。それは、AL入居者のケアの質を改善するための強力な手段となり得る。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

これまで、施設入居者関連の研究に関する文献抄読はたくさんしてきた。
・施設入居者のADL機能低下の予後
・介護施設における転倒。履き物の関与と転倒メカニズム
・高齢者の施設入所の関連要因
・etc…

今回の抄読研究は、リハビリテーションにおいて、いや医療において重大なアウトカムの1つである疼痛に対して、「施設の組織的背景が関連している、さらに具体的な関連を認めた項目はこれです」ということを明らかにした研究であった。
最終モデルにおいて、4つの要因を認めたが、その中で注目したい項目は『居室の隔離措置』である。
「感染対策、同室者とのトラブル、etc…」、本人の希望である場合も多いが、様々な理由によって居室の隔離措置はなされる。
その隔離措置がなされた場合、疼痛の有病リスクが高くなるという。
この隔離措置自体は、仕方がない場合も多いので、もし隔離措置がなされた場合には、より一層、疼痛発生、疼痛重症化に注意しながら介入を進める必要があるのかもしれない。
病院組織を構成する一員として、考えさせられる研究だった。

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