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高齢者における入院関連機能不全のリスク要因


📖 文献情報 と 抄録和訳

高齢患者における入院関連機能不全のリスク要因:系統的レビューとメタアナリシス

📕Hao, Xiaonan, et al. "Risk factors for hospitalization-associated disability among older patients: A systematic review and meta-analysis." Ageing Research Reviews (2024): 102516. https://doi.org/10.1016/j.arr.2024.102516
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[背景・目的] 背景高齢患者の予後は、入院関連機能不全(hospitalization-associated disability, HAD)によって著しく制限されており、現在、HADの管理方法として利用可能な選択肢はほとんどない。本レビューは、高齢患者におけるリスク因子管理を中心としたHAD予防プログラムの開発に役立つ信頼性の高いエビデンスを提供することを目的として、HADのリスク因子を特定し、定量化することを目的としている。

[方法] 2024年3月にMEDLINE、Embase、PsycINFO、CINAHL、PubMedのデータベースを検索し、高齢患者におけるHADのリスク要因を多変量解析で調査した横断研究およびコホート研究を特定した。

[結果] 883件の研究をスクリーニングしたところ、そのうち21件が本レビューの対象基準を満たした。 調査の結果、高齢患者におけるさまざまなリスク要因とHADとの間に、相当な関連性があることが明らかになった。

①年齢
・85-94歳: OR 2.09, 95% CI 1.97–2.21
・95歳以上: OR 3.13, 95% CI 2.75–3.57
②性別
・女性: OR 1.18, 95% CI 1.13–1.22
③併存疾患
・高併存疾患: OR 1.85, 95% CI 1.71–2.01
④認知症
・認知症あり: OR 1.43, 95% CI 1.34–1.53
⑤入院期間
・1日増加ごとに: OR 1.08, 95% CI 1.05–1.12
・3-4日: OR 5.10, 95% CI 4.78–5.44
・5-7日: OR 13.05, 95% CI 12.20–13.79
・8日以上: OR 24.01, 95% CI 22.34–25.81
⑥ADL(入院時の生活機能)
・良好なADLはHADリスク増加と関連: OR 1.02, 95% CI 1.00–1.03
⑦身体機能低下
・SPPBスコア低下: リスク増加
⑧入院中の移動制限とせん妄
・移動制限とせん妄はHAD発症リスク増加の確定要因

[結論] 本レビューは、高齢患者におけるHADSのリスク要因に関する入手可能な証拠を総合的に統合したものであり、入院前および入院中のHADS予防戦略の開発に役立つ貴重な指針となる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前、Age and Ageing誌においてほぼ同様のテーマにおけるメタ解析が出版されており、文献抄読をした。
その文献中においては、以下10のリスク要因が報告されていた。

✅ 入院関連機能不全を引き起こす10のリスク因子
1. 褥瘡の存在(OR, 3.33; 95% CI, 1.82-6.09 )
2. ナーシングホームでの生活(OR、2.42;95%CI、1.29-4.52)
3. せん妄(OR, 2.34; 95% CI, 1.88-2.93 )
4. 手段的日常生活動作の障害(OR、2.08;95%CI、1.51-2.86)
5. 認知機能障害(OR、1.83;95%CI、1.56-2. 14)
6. 低アルブミン血症(OR, 1.79; 95% CI, 1.36-2.36)
7. 栄養不良(OR, 1.76; 95% CI, 1.03-3.14 )
8. 転倒歴(OR、1.71;95%CI、1.00-2.92)
9. 認知症(OR, 1.71; 95% CI, 1.23-2.38)
10. 併存疾患・合併症(OR, 1.09; 95% CI, 1.03-1.16)

今回の抄読研究においては、以上の項目と重複するものもあれば、違うものもあった。
その中で注目したのは、以下の2つである。

まずは、入院期間
この解析では、入院期間を4段階に分けて解析をしており、入院期間8日以上ではオッズ比が 24.01と恐ろしい数字になっている。
日本の回復期リハビリ病棟に入院する方は、ほぼこの条件を満たすので、入院関連機能不全のリスクは非常に高いと認識すべきだろう。

そして、ADL(入院時の生活機能)
これは予想に反した結果だった。
入院時のADLが “高いほど” HADリスクが高いという結果だったのだ。
おそらく、“伸びしろ” ならぬ “低下しろ” が多く残されているということなのだろう。
最初のADLが高いから大丈夫、ではなく高いからこそ低下には注意が必要と認識したい。

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