Gait solutionの威力。理想の背屈補助を実現
📖 文献情報 と 抄録和訳
亜急性期脳卒中患者の歩行におけるオイルダンパー付き足首足部装具と非関節型足首足部装具の比較:無作為化比較試験
Yamamoto, Sumiko, et al. "Ankle–foot orthosis with an oil damper versus nonarticulated ankle–foot orthosis in the gait of patients with subacute stroke: a randomized controlled trial." Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation 19.1 (2022): 1-10. https://doi.org/10.1186/s12984-022-01027-1
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar
✅ 前提知識:Gait solutionとは?
- 油圧調整範囲:抵抗がない状態から半固定まで無段階に調整可能
- 底屈制動範囲:初期角度から底屈方向に18度
- 初期設定角度:パーツ交換により0度と5度の2種類選択可能
- 制動力調整範囲:2Nm~20Nmまで無段階調整
- 制限体重:70kg(ゲイトソリューションデザイン・プラスチックタイプ・金属支柱タイプ)、 90kg(ゲイトソリューションデザインR1)
- 適応症例:片麻痺、腓骨神経麻痺等。足関節底屈および内反筋群の痙性が軽度から中等度。著しい足部の変形や拘縮がない。立脚相の著しい膝折れや反張膝がない。
- 効用:(1)踵接地時に底屈の動きを油圧により制動することにより滑らかな体重移動を可能にします。(2)なめらかな体重移動により自然な歩容を得ると同時に左右の対称性、バランスのとれた歩容を実現することができます。バランスのとれた歩容を実現することによりきれいに歩ける、つかれない、歩行速度の増加などの効果を得ることができます。(3)遊脚相つま先のクリアランスを確保することができます。
🌍 参考サイト >>> site.
[背景・目的] 脳卒中患者の歩行改善は、足関節装具(AFO)の使用・不使用の観点から検討されているが、AFOの種類による効果は不明である。本研究では、背屈抵抗がなく足底屈剛性があるオイルダンパー付きAFO(AFO-OD)と背屈・足底屈剛性がある非関節型AFOの歩行への影響を無作為比較試験で比較検討した。
[方法] 脳卒中亜急性期の患者41名(男性31名,女性10名,平均年齢58.4±11.3歳)を無作為に2群に割り付け,AFO-ODまたは無関節AFOを装着して理学療法士により2週間にわたり毎日1時間の歩行訓練を行った.モーションキャプチャシステムを用い、ベースラインとトレーニング後の装具なしの歩行状態を測定した。データ解析は、関節運動学、空間的・時間的パラメータ、地面反力、および脛骨と垂直の角度に焦点を当てた。トレーニング後の2つのAFOグループ間のAFOを装着した歩行の差を明らかにするために、paired t-testまたはMann-Whitney U検定を行い、有意水準はp = 0.05とした。
✅ 図1. 本研究で使用した足首足部装具。左:オイルダンパー付き足関節装具(AFO-OD)。右。無関節型足部装具
[結果] 36名の患者が研究を完了した(AFO-OD群17名、非関節型AFO群19名)。AFO-OD群では、非関節型AFO群と比較して、単立において足関節がより背屈し(p=0.008、効果量r=0.46)、立脚における足関節のピークパワー吸収が大きく(p=0.007、r=0.55)、足関節のピークパワー吸収は、非関節型AFO群でより大きかった。ピークパワー吸収量はAFO-OD群では患者間で差があった。
✅ 図2. トレーニング後の各AFO群における1歩行サイクルの平均足関節力を示すグラフ(AFO-OD群、n=17;非関節型AFO群、n=19)。太線は平均値、非太線は標準偏差を表す。AFO:足関節装具,AFO-OD:オイルダンパー付き足関節装具,IC:イニシャルコンタクト,FO:フットオフ
また、AFO-OD群では、初期接触時(p = 0.008, r = 1.51)、遊脚前(p = 0.045, r = 0.91)、遊脚相(p = 0.045, r = 0.91)において背屈角度の増加が見られた。また、足関節屈曲モーメント、足関節の発電量、空間的・時間的パラメータ、地面反力、シャンクと垂直角は両群間に差がなかった。
✅ 図3. チェックトレーニング後の各AFO群(AFO-OD群、n=17;無関節AFO群、n=19)の1歩行周期における足関節の平均角度を示すグラフ。太線は平均値、非太線は標準偏差を示す。AFO:足関節装具,AFO-OD:オイルダンパー付き足関節装具,IC:イニシャルコンタクト,FO:フットオフ
[結論] 本研究の結果、足底屈剛性があり背屈抵抗がないAFOは、非関節型AFOと比較して足関節の運動学的および動力学的に大きな改善をもたらすが、ピークパワー吸収の結果は患者間で大きく異なることが示された。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
まず、この研究はRCTであることに注意が必要だ。
介入2週間後での比較を行っているので、足関節角度自体にも両群でベースの違いが大きいと思われる。Gait solution群では良くなったわけだ。
装具装着直後の即時効果を見ているわけではないので、そこは識別して考えたい。
さて、Gait solutioonとは、一言でいえば「背屈補助に油圧制御を用いた装具」である。
そして、油圧制御を用いることで、一定範囲(初期から底屈方向へ18度)におけるグラデーション的な底屈運動が可能となるわけだ。
しばしば、足関節固定型のShoe-horn Brace(SHB;上記文献中のNonarticulated AFO)で問題になるのが「ブロック現象」だ。
以下の画像を見ていただきたい。
この場合、足関節が固定されているため、踵接地直後の急激な足関節底屈トルクがそのまま下腿を前傾させる力となり、「ガン、ガン!」というような接地となる。
抄読中の図3のIC直後に注目していただきたいのだが、Nonarticulated AFOは一瞬底屈にガンと動いた後、一気に背屈方向に傾斜している。
これはブロック現象だと思われる。
一方で、Gait solution(AFO-OD)においては、ローディングレスポンスまではかなり緩やかな足関節角度の底屈→背屈を実現している。
それによって、前脛骨筋の遠心性収縮、ひいては大腿四頭筋の遠心性収縮が適切に導かれることだろう。
以下のようなビジュアルだと思う(もう少し遠心性足関節底屈ありそうだが)。
歩行における、とくに立脚初期の足関節制御はガラス細工のように繊細だ。
ちょっとした力の違いによってロッキングにもなれば膝折れにもなる。
以下の図をご覧いただきたい。
📕長田悠路. 理学療法ジャーナル 52.1 (2018): 51-57. >>> doi.
この図における優秀な「小人」がGait solutionだ。
さらに、油圧強度をセラピストが、動作観察に基づいて絶妙にコントロールできれば、鬼に金棒といえる。
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