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運動誘発性疼痛が筋出力に与える影響


📖 文献情報 と 抄録和訳

運動誘発性および一定の実験的疼痛が筋力産生に及ぼす影響

📕Cabral, Hélio V., et al. "Effect of movement‐evoked and tonic experimental pain on muscle force production." Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports (2023). https://doi.org/10.1111/sms.14509
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[背景・目的] 運動や機能テストを行う際、動作や筋収縮によって誘発される痛みは、緊張性の痛みと比較して、個人の動き方を変化させるより強い刺激となりうる。我々は、実験的に誘発された膝の痛みが発生したトルクに直接関連する場合(運動誘発性)、一定の痛みを伴う刺激(一定)と比較して、筋力産生の低下が大きいかどうかを調べた。

[方法] 21名の参加者が、無痛時(ベースライン)、疼痛時、疼痛後に3回の等尺性膝伸展最大随意収縮を行った。膝痛は、膝窩下脂肪パッド上に10Hzの正弦波電気刺激を連続的または膝伸展トルクに比例して変化させることで誘発した。ピークトルクと収縮持続時間は反復で平均し、ベースラインに対して正規化した。

[結果] 一定疼痛では、参加者は安静時よりも収縮時の方が疼痛強度が低いと報告した(p < 0.001)のに対し、運動誘発性疼痛では、疼痛強度は収縮とともに増加した(p < 0.001)。

膝伸展トルクはどちらの疼痛条件でも減少したが(p<0.001)、一定疼痛と比較して運動誘発性疼痛ではより大きな減少が観察された(p<0.001)。参加者は、運動誘発性疼痛と比較して、一定疼痛の方がより長い時間トルクを出していた(p = 0.005)。

[結論] この結果から、動作誘発性疼痛は緊張性疼痛よりも膝伸展トルクを減少させるより強力な刺激であることが示された。強直痛時に観察される収縮時間が長いのは、筋収縮時に知覚される痛みの強度が低い結果かもしれない。全体として、今回の結果は、強直性疼痛と運動誘発性疼痛に対する運動適応が異なることを示唆しており、疼痛に対する運動適応は疼痛を制限するための目的戦略であるという考え方を支持している。このメカニズム的な証拠は、強直性疼痛または運動誘発性疼痛のいずれかを強く経験している人は、異なる運動適応を示す可能性があることを示唆しており、これは運動処方に重要である可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

No Pain No Gain.
痛みなくして得るものなし。

しばしば、筋力トレーニングにおいて適応される言葉と理解している。
そして、運動全般、人生全般にも適応される可能性のある言葉だ。
今回の論文は、この言葉の逆方向の意味合い、痛みがあると失うものがある、という側面を明らかにした。

疼痛、特に運動誘発性の疼痛は筋出力(今回の場合膝関節伸展トルク)を減少させたのだ。
これは、たとえば歩行時に運動誘発性の疼痛がある場合、力が入らずに支持性が低下してしまう、というリスクとつながる。
運動誘発性の疼痛は、なんとか減少させたいところである。

ただ、気になるのは最近注目されている運動誘発性痛覚低下(関連note参照)、との関連である。
痛みながらも運動を続けることで、疼痛が軽減されてくるメカニズムもあるかもしれない。
このあたりは、運動様式や頻度、持続時間などと関係してくるところだろう。
たとえば、歩行など荷重により疼痛誘発されるなら、エルゴメータで運動をかせぐことで疼痛軽減を狙う、など。
なんにせよ、だんだん具体的にしてきたいところだ。

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