運動中の筋, 脳における酸素動態
📖 文献情報 と 抄録和訳
健康成人における運動中の脳および筋組織の酸素化:系統的レビュー
[背景・目的] 近赤外分光法(Near-infrared spectroscopy, NIRS)技術により、運動中の脳酸素化と骨格筋酸素化を同時に測定できるようになった。この技術は発展し、現在では実験室やスポーツの場でうまく利用されているため、この系統的レビューは、エビデンスを統合し、運動中の大脳および筋系における血流調節と酸素(O2)変化(すなわち、O2供給とO2消費のバランス)の統合的理解を深めることを目的とした。
[方法] PubMed、Embase、Scopus、Web of Scienceの各データベースを用いてシステマティックレビューを行い、運動中の近赤外分光システムを用いた脳および筋の血行動態変化を同時に調査した関連研究を検索した。このレビューでは、英語で書かれ、2023年2月9日以前に入手可能な原稿を対象とした。スクリーニングの各段階では、独立した2人の著者が評価を行い、意見の相違は第3の著者が解決した。研究の方法論的質の評価には、Joanna Briggs Institute Critical Appraisal Checklistを用いた。
[結果] 20の研究が含まれ、そのうちの80%は方法論的に質が高く、290人の若年または中年成人を対象としたものであった。サイクリング(n=11)、トレッドミル(n=1)、膝伸展(n=5)、上腕二頭筋の等尺性収縮(n=3)、デュエットスイム(n=1)など、さまざまな種類の運動が脳および筋の血行動態の変化を評価するために用いられた。大脳の血流動態解析は前頭皮質(n=20)に焦点を当て、筋肉では外側広筋(n=18)、腓腹筋(n=3)、上腕二頭筋(n=5)、三角筋(n=1)、肋間筋(n=1)を対象とした。全体として、筋の脱酸素性は運動中に増加し、随意的な疲労でプラトーに達するが、脳ではオキシヘモグロビン濃度は運動強度とともに増加し、プラトーに達するか疲労点で減少する。
[結論] 筋肉と大脳の酸素化は運動に対して異なる反応を示し、運動中、筋肉は酸素利用を増加させ、大脳組織は酸素供給を増加させる。しかし、疲労困憊点では、筋と大脳の酸素化はともに低下する。これは、筋では血流量の低下とO2抽出の減少によって特徴づけられるが、脳では酸素化はプラトーまたは低下に達し、運動中の運動障害を引き起こす可能性がある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
運動中の筋肉、脳における酸素動体は、当たり前なのだが、目に見えない。
それを調べることができるのが、赤外分光法(Near-infrared spectroscopy, NIRS)技術だ。
今回の抄読研究は、そのNIRS技術を用いた研究を束ねて、各運動中の、各筋、脳における酸素動態を明らかにした。
その結果として、運動中には概ね酸素供給を増加させ、疲労困憊時には酸素化は低下した。
さらに、重要な点として異なる筋肉は、運動中に異なる酸素化反応を示すことが分かった。
活動量の少ない筋肉は、より大きな脱酸素化を示す傾向があった。
これは、運動中の血流分配の理解を深め、トレーニングプログラムの個別化に役立つ可能性がある。
見えない世界を切り拓く最新の技術、その威力が発揮された一論文と言えるだろう。
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