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脳卒中後の痙縮発症リスクの予測因子


📖 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中発症後3~6か月の痙縮の予測因子:5年間の後方視的コホート研究

📕McIntyre A, Teasell R, Saikaley M, Miller T. Predictors of Spasticity 3-6 Mos After Stroke: A 5-Yr Retrospective Cohort Study. Am J Phys Med Rehabil. 2024;103(12):1130-1134. https://doi.org/10.1097/PHM.0000000000002496
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✅ 前提知識:痙縮(Spasticity)とは?
・脳卒中後の痙縮とは、中枢神経系の上位運動ニューロン障害に伴い、筋肉の伸張反射が過度に亢進し、持続的な緊張状態になる症状である。
・麻痺側の肢が固くこわばることで動かしづらくなり、日常生活活動を阻害する要因となる。
・リハビリテーションでは、ストレッチや姿勢調整などを通じて筋緊張を適切に管理し、機能回復を図る必要がある。

[背景・目的] 本研究の目的は、脳卒中発症後3~6ヵ月における脳卒中後の痙縮の予測因子(修正Ashworthスケールスコア、1以上)を特定することである。

[方法] 研究デザイン:カナダの南西オンタリオ州の入院患者を対象とした、2015年から2020年までの5年間の後方視的コホート研究。社会人口統計学的データ、臨床データ、脳卒中関連データ、リハビリテーション関連データ、および結果測定データは、紙のカルテおよび電子データベースから抽出された。

[結果] 入院患者向け脳卒中リハビリテーションに参加した922人のうち、606人(男性55.8%、平均年齢70.9±14.2歳)が外来患者として再来院した。ほとんどの患者は、初めての脳卒中(n = 518、85.5%)で、虚血性(n = 470、77.6%)で、片麻痺(n = 449、74.1%)を伴う脳卒中であった。脳卒中発症後4か月までに、患者の20.3%(n=122)が脳卒中後の痙縮を発症していた。二項ロジスティック回帰分析により、脳卒中後の痙縮が有意に予測された(χ2(6)=111.696、P < 0.0001)。モデルの適合度は良好であった(χ2(8)=12.181、P = 0.143)。脳卒中後の痙縮の予測因子として有意であったのは、出血性脳卒中(P = 0.049)、年齢が若い(P < 0.001)、脳卒中の家族歴(P = 0.015)、低い入院時FIM(P < 0.001)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(抗うつ、抗不安薬)の使用(P = 0.044)、片麻痺(P < 0.001)の6つであった。

[結論] 患者は、脳卒中リハビリテーションの退院後、およびケアの継続期間を通じて、脳卒中後の痙縮について注意深くモニタリングされるべきである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

痙縮は難しい。
その仕組み、どんな要因が危険因子なのか、どんな介入をしたら痙縮を強めてしまうのか。
それらが、あまり分かっていないからだ。
そして、1人の患者さんの治療は、たった1つのもので、同じ時期に違う介入をやり直すことはできない。

だからこそ、痙縮に対する考え方には、セラピストによって考え方が大きく異なる印象だ。
「変な刺激を加えないように安静にした方がいい」と考える人もいれば、「筋トレや歩行練習を積極的に行っても痙縮を高めるリスクは少ない」と考える人もいる。
そうすると、治療を受ける患者さんは、その担当セラピストがどういう哲学を持っているかによって、受けられる治療が大きく変わってしまう。
今回の抄読研究は、そんな不明な部分の多い痙縮に光明を当ててくれる研究だった。
痙縮を高める6つの危険因子を明らかにしてくれた。
だが、これら6つの予測因子はあくまでも観察的なものだ。
これから知りたいことは、介入内容と痙縮リスクとの関連性である。
ますます、この領域に対するアンテナの感度を高めていこうと思う。

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