チーム医療における無礼。無礼が理学療法士に与える影響
📖 文献情報 と 抄録和訳
"あなたは患者を壊した";理学療法士が経験した医療チーム内での不躾さ-解釈的現象学的分析
📕Naylor, Michelle J., Christopher Boyes, and Clare Killingback. "“You’ve broken the patient”: Physiotherapists’ lived experience of incivility within the healthcare team-An Interpretative Phenomenological Analysis." Physiotherapy (2022). https://doi.org/10.1016/j.physio.2022.09.001
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Connected Papers
※ Connected Papersとは? >>> note.
🔑 Key points
🔹理学療法チーム内に "無礼(incivility)"が存在することを認識し、対処する必要がある。
🔹無礼は理学療法士に専門的、個人的に悪影響を与える。
🔹理学療法サービスは、スタッフのウェルビーイングを向上させるために、臨床医に対する無礼の概念と影響をより理解することが有益であろう。
🔹理学療法士の無礼の生活体験に関する斬新な理解。
🔹非礼の概念と理学療法実践との関連性をさらに探求するための基礎となる。
[背景・目的] 医療チームにおける非礼は、広く認識されている現象である。非礼の影響は広範囲に及び、医療機関、個人、患者ケアに影響を及ぼしている。これまで理学療法士に対する非礼の影響に関する研究はほとんどなく、現存する文献では看護師や医師が中心となっている。目的:急性期病院で働く理学療法士に対するぞんざいな態度の影響を調査する。
[方法] 解釈的現象学的分析を用いた質的デザインを使用した。半構造化面接を理学療法士グループ(n = 6)に実施した。分析解釈的現象学分析に共通する 6 段階の分析を用いて、転写物を分析した。また、研究の質を高めるためにメンバーチェックを行った。
[結果] 2つの上位テーマが確認された。上位テーマ1「非礼が専門家としての自己に与える影響」と上位テーマ2「非礼が感情的自己に及ぼす影響」は、新規性のあるテーマとして同定された。
■ 非礼が専門家としての自己に与える影響
[結論と示唆] 理学療法士に対する "無礼"の影響は、専門的にも個人的にも過小評価されるべきではなく、個人および職業全体に対する影響を緩和する戦略を特定し、実施するために、さらなる質的および量的研究が必要である。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
「あなたは先生が好きなの?」
「うん、大好きだよ」
「どうして?」
「わからない。多分、何でも話せるからだと思う。先生は、僕のいうことにちゃんと答えてくれる。そういうことだよ。思ったことをそのまま言えばいいんだ。それって、すごいと思わない?」
ペイフォワード
相手が、自分の言うことをちゃんと聞いてくれる、答えてくれる。
それって、当たり前の人間としての礼節、のはずだ。
だが、医療現場において、その当たり前の礼節が、ガラス細工のように壊れやすい。
・忙しすぎる
・医療者への礼節より、患者への礼節の方が大事
・複雑な上下の人間関係の中で、礼節がなくても表面上問題は起こりにくい
・・・etc...
ぼくは、特にThema③「職場の人間関係の緊張」に注目したい。
例えば、患者の病棟での活動性向上のために、「離床時間の延長とそのタイムスケジュール」を看護師に相談したいとしよう。
そのとき、極端な例として、以下2パターンの看護師がいたとしよう。
🔹看護師A:いつも笑顔で快く、患者のためには自分の労苦が増えることを厭わない
🔸看護師B:話しかけただけで不穏な表情 & 「忙しいから!」と何回かはねつけられたことがある
同じ依頼をしようと思っても、プライマリー看護師がAの場合には依頼し、Bの場合には依頼しない、ということが起こる。
無礼だろうが、表面上は、問題が起こっていないように見えるかもしれない。
だけれども、水面下では、たくさんの機会が失われている。
そして、その失われた機会は、「患者ケアの質」の低下(例えば離床時間の延長への行動がなされない)という形で、実は表面化しているのだ。
だが、その対照(例えば離床時間の延長への具体策が施された場合)が失われていて見えないから、何も起こっていないように見えるだけだ。
すなわち、最良のケアを提供するには、水面下において機会を失わないことが大切で、機会を失わないためには、医療チーム内における無礼を、なるたけ少なくしていく必要がある。
僕も、この論文を見て、他職種に対して、同僚に対して、後輩に対して、そして家族に対して、ずいぶんと無礼な態度をとっていることに気づき、これからの自分の周囲への態度に悩み、迷った。
大事なことは、この迷いの火を消さぬよう、大事に大事に、持ち続けることだと思っている。
傲慢、礼節をかき消すもの。
悩み迷い続ける謙遜な態度、礼節を守もの。
迷って。
きっと迷いの中に倫理がある。
ヨンタレ「チ。」
○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓
‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び