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急性~慢性ストレスが中枢神経~腸内細菌に及ぼす影響


📖 文献情報 と 抄録和訳

急性および慢性ストレスが消化管の生理・機能に及ぼす影響:微生物叢-腸-脳軸の観点から

📕Leigh, Sarah‐Jane, et al. "The impact of acute and chronic stress on gastrointestinal physiology and function: a microbiota–gut–brain axis perspective." The Journal of Physiology 601.20 (2023): 4491-4538. https://doi.org/10.1113/JP281951
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[レビュー概要] ストレスの生理的影響は消化管に現れることが多い。外傷性ストレスや慢性ストレスは、消化管全体に広がる不適応な変化と関連しているが、急性ストレスの影響については比較的知られていない。さらに、このようなストレスによる腸管の変化は、消化管障害や感染症に対する感受性を高め、腸脳軸のコミュニケーションを損なうことによって、ストレス反応の神経的・行動的帰結の重要な特徴に影響を及ぼす可能性がある。ストレス後の腸管神経系回路、内臓感度、腸管バリア機能、透過性、および腸内細菌叢の変化の背後にある機序を理解することは、神経消化器学と精神医学の双方において病態生理学的な意味を持つ重要な研究目的である。さらに、腸内細菌叢はストレスの影響に敏感な生理学の重要な側面として浮上してきた。

本総説では、腸管バリア機能、腸-脳コミュニケーションに関与する免疫、体液性、神経細胞要素など、消化管のさまざまな側面に焦点を当てる。さらに、消化管障害におけるストレスの役割に関する証拠についても考察する。現在の文献に存在するギャップが強調され、総合的な生理学的観点からの今後の研究の可能性が示唆された。消化管におけるさまざまな種類のストレス因子に対する宿主と微生物の統合的な反応の空間的・時間的ダイナミクスをより完全に理解することで、急速に発展している宿主-マイクロバイオーム相互作用の分野における診断と治療の可能性を十分に活用することが可能になるであろう。

■ 急性・長期・慢性ストレスが微生物叢-腸-脳軸の柱に及ぼす影響
<急性>
・ストレス要因に伴う視床下部-下垂体-副腎および交感神経-副腎髄質軸の活性化は、微生物叢-腸-脳軸に沿った生理学的変化のカスケードを時間依存的に引き起こす。
・急性ストレスは、ストレスホルモン(すなわちグルココルチコイドとカテコールアミン)の放出と腸神経系の活性化を引き起こし、腸の収縮力を低下させる。
・これらの急性変化は、自然免疫の活性化、適応免疫系の抑制、循環ヒスタミンの増加、粘膜および粘膜下層におけるセロトニン代謝の変化と関連している。
・急性ストレスが消化管生理や腸内細菌叢にどのような影響を及ぼすかについては、比較的ほとんど知られていない。
<長期>
・1時間以上1日未満の長時間のストレッサー暴露もストレス反応を障害し、グルココルチコイドおよびカテコールアミンの発現にさまざまな影響を及ぼす。
・この種のストレスは内臓知覚過敏を誘発し、恐怖の消失に障害をもたらす。
・長期のストレスが腸管神経系と全身性免疫系に及ぼす影響についてはほとんど知られていないが、消化管粘膜と腸内細菌叢は慢性ストレスと同様の影響を受ける。
<慢性>
・慢性ストレスは迷走神経シグナルと腸管機能を障害し、腸管運動を変化させる。
・内臓過敏症が誘発される。
・細胞性免疫と液性免疫の両方が抑制され、腸管バリアは粘液層の厚さの減少、副細胞透過性の亢進、循環免疫細胞の浸潤、肥満細胞の脱顆粒の亢進を示す。
・腸内細菌叢は安定性が低下し、組成と機能が変化している。
・具体的には、病原性細菌または状況的に有害な細菌の相対的な存在量が増加する一方で、有益な細菌は相対的に減少する。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前、人間に加わるストレスと人体反応についてのNarrative Reviewを抄読した。

ポイントは、以下の通りだった。
・ストレス強度別の人体反応のNarrative
🔹軽度:短時間の神経化学的変化
🔹中等度:神経活動/シナプス可塑性に比較的長い時間変化
🔹強い:海馬の形態変化/神経新生/神経毒性に影響
🔹海馬の機能:軽度ストレスは賦活,強いストレスは低減

今回の抄読文献は、さらに範囲を拡大する(中枢神経〜消化管、腸内細菌)とともに、時系列に沿ってその反応を美しい図で示してくれた。
これを見ると、1日以上ストレスに晒される慢性的な状態に陥ると、中枢神経系〜腸内細菌にかけて、すべての器官において不具合をきたすことようだ。
これを日常生活で考えると、何らかの外的な急性ストレスが生じたときに、すぐに対処してストレスではなくしてしまえる耐性の有無が重要になってきそうな気がする。
人生において、外的なストレスをなくすことは恐らく不可能だし、それが健全だとも思わない。
大事なのは、それにどう向き合い、どう対処し、自らの生長につなげていくのか。
その成功も失敗も、喜びも悲しみも、1つ生長に収束させていく、そんな能力。
強く生きたい、改めて思った。

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