疫学研究の落とし穴。糖尿病者の有病数と未診断割合
📖 文献情報 と 抄録和訳
米国成人における未診断の糖尿病。有病率と傾向
📕Fang, Michael, et al. "Undiagnosed Diabetes in US Adults: Prevalence and Trends." Diabetes care 45.9 (2022): 1994-2002. https://doi.org/10.2337/dc22-0242
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> not applicable
[背景・目的] 臨床の場では，糖尿病診断のために確認検査を行うことが推奨されている。しかし，未診断の糖尿病の全国推計値は，単一の上昇した検査値に基づいており，過大評価となる可能性がある。我々の目的は，臨床の現場と一致した定義を用いて未診断の糖尿病の傾向を更新することである。
[方法] 研究デザインおよび方法National Health and Nutrition Examination Survey（1988～2020年）の成人（20歳以上）30,492人を対象とした。
✅ 診断済みの糖尿病と未診断の糖尿病の定義
■ 診断済みの糖尿病
・診断付き糖尿病は、妊娠中以外に医師が糖尿病と診断されたもの
■ 未診断の糖尿病
1）確定診断なし糖尿病(Confirmed undiagnosed diabetes)：HbA1cの上昇（≧6.5％）およびFPG値の上昇（≧126mg/dL）
2）持続診断なし糖尿病(Persistent undiagnosed diabetes)：HbA1cおよびFPG検査における個人内変動で調整したHbA1cまたはFPG値の上昇
[結果] 1988年から1994年までの期間から2017年から2020年3月までの期間において，診断済み糖尿病の有病率は増加したが（4.6％から11.7％），持続性未診断糖尿病（2.23％から2.53％）および確定未診断糖尿病（1.10％から1.23％）の有病率は変わらなかった。
✅ 図. 米国成人における診断済みおよび未診断の糖尿病の動向，NHANES 1988-2020年．A：診断された糖尿病と診断されていない糖尿病。
さらに、全糖尿病者に対する未診断糖尿病患者の割合は、32.8％から17.8％（持続的未診断糖尿病）、19.3％から9.5％（確定的未診断糖尿病）に減少していることがわかった。
✅ 図. 米国成人における診断済みおよび未診断の糖尿病の動向，NHANES 1988-2020年．B：未診断の糖尿病の割合。
未診断の糖尿病は、高齢者や肥満者、人種的・民族的マイノリティ、医療を受けられない人に多くみられました。糖尿病患者のうち、アジア系アメリカ人と医療アクセスのない人は未診断の割合が最も高く、その割合は23％から61％であった。
[結論] 1988年から2020年3月までに、未診断の糖尿病患者の割合は大幅に減少し、糖尿病のスクリーニングと発見が大きく改善したことが示唆された。未診断の糖尿病は現在，米国の成人の1～2％が罹患しているが，全症例の最大90％が診断されている。
🌱 So What?：何が面白いと感じたか？
よく、こんな記事を目にする。
「〇〇疾患の患者数が近年、増大傾向！」
「××の社会問題が急増し、問題に！」
これを目にしたとき、「これ、もしかしたら、ずっと前から同じように存在していたものが、最近よく見つけられるようになっただけじゃないの？」と思ってしまう。
全疫学研究的にその傾向はあると思うが、とくに社会問題（家庭内暴力やいじめなど）系はそれが顕著なのではと、ぼんやり感じていた。
今回の研究は糖尿病の有病率、未診断について光を当てた研究で、個人的にわだかまりを感じていた部分に当たった光だったので、輝いて見えた。
この研究によれば、有病率はかなり上がっていて、未診断糖尿病者の割合はかなり下がっている。
これを言い換えれば、確かに「絶対数の増大は、未診断糖尿病者がしっかり診断された結果で、即糖尿病者の増大を指し示すものではないかもしれない」という側面もあるようだ。
早期診断、早期治療。
糖尿病は、進行とともに恐ろしさを増してゆく。
その糖尿病において、未診断が減って早期診断、早期治療がなされることは尊い。
この部分は、近年の医療や、医療者の尽力の勝利といえるかも知れない。
未診断有病率か…。
改めて、疫学研究の解釈にはよくよく気をつけたい。
これは何というバイアスというのだろう、名前があるのだろうか。選択バイアスになるのだろうか・・・。
勉強したい（知っている方がいましたらコメントで教えてください🙇）。
⬇︎ 『選択バイアス』に関する関連 note✨
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