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転倒要因となる高次脳機能障害


📖 文献情報 と 抄録和訳

リスクを伴う行動と実行機能、最近の脳卒中後の転倒要因の主要な要素

📕Yelnik, Alain P., et al. "Risk-taking behaviour and executive functions, a major component of the risk of fall factors after recent stroke." Journal of rehabilitation medicine 56 (2024): jrm40153. https://doi.org/10.2340/jrm.v56.40153
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[背景・目的] 本研究では、最近の脳卒中後の転倒リスクに影響を与える患者の行動における、さまざまな認知障害の重みを調査した。

[方法] 研究デザイン:調査および単一施設後方視的研究。対象:専門家74名、患者108名。方法:転倒リスクに対するさまざまな認知障害の重みに関する専門家の考えを尋ねる調査と、これらの認知障害が転倒者と非転倒者を区別できるかどうかを判断するための脳卒中後の患者を対象とした後方視的研究。単変量および多変量ロジスティック回帰分析を実施した。

[結果] パート1では、主な認知障害として、失認症、錯乱、注意障害、動作性急、半側空間無視が特定された。第2部では、25人の患者(23%)が転倒した。リハビリテーション期間と疾患重症度を調整した多変量解析の結果、転倒リスクと有意な関連が認められた認知障害は、失認症(オッズ比16)、動作性急(13.3)、注意障害(8.3)、固執(4.9)であった。半側空間無視は独立して関連していなかった。失語症は関連していなかった。

■ 転倒要因となる高次脳機能障害とその理由

1. 失認症(Anosognosia)
・調整後オッズ比は16(95% CI: 2.4, 106.7)であり、p値は0.004。
・失認症がある患者は、自身の障害に気づかないため、リスクのある行動を取ることが多く、転倒リスクが大幅に上昇する。
2. 動作性急(Precipitation)
・調整後オッズ比は13.3(95% CI: 3.1, 56.2)であり、p値は0.0004。
・動作性急、つまり急いで行動しようとする傾向が強い患者は、バランスを崩しやすく、転倒の危険性が高い。
3. 注意障害(Inattention)
・調整後オッズ比は8.3(95% CI: 1.6, 43.0)であり、p値は0.01。
・注意が散漫になることで、環境の変化や障害物に気づきにくくなり、転倒しやすくなる。
4. 固執(Perseveration)
・調整後オッズ比は4.9(95% CI: 1.4, 18.0)であり、p値は0.01。
・同じ行動や思考に固執する傾向があるため、状況に応じた適切な反応ができず、転倒リスクが上がる。

[結論] 神経心理学的評価を行う前に容易に特定できるいくつかの認知障害は、転倒リスクの観点から患者の行動に強い影響を与える。これらの障害は、身体的および一般的な要因に付加的な要因としてではなく、むしろ他の要因に影響を与える要因として考慮すべきである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「ああ、この患者さん、転びそうだよね。転倒リスクが高いよね。」

というのは、医療者には直感として感ぜられる。
今回の抄読研究は、脳卒中後の高次脳機能障害において、その感覚をエビデンスとして示してくれた。
失認、動作性急、注意障害、固執・・・、どれも転倒リスクを高める要因だと思う。

個人的に、特に重要だと感じられるのはやはり『失認症』(オッズ比も最も高かった)である。
この失認の意味合いには病識の欠如も含まれており、これが特に問題である。
「転ぶかもしれない」と思える患者さんは、転びにくい。
逆に、「全然大丈夫」と不安定な中でも猛進していく患者さんは、実に転倒リスクが高い。
失認症+動作性急は、転倒リスクを高める強いタッグのように思われる。

何にせよ、今回の研究によって、具体的に転倒リスクを高める高次脳機能障害が明らかになった。
これらの要因に注意しないわけにはいかないだろう。

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