入院中は歩いているかより、『離床しているか』が大事かも知れない。
📖 文献情報 と 抄録和訳
入院中の体幹・下肢骨折者の身体活動量におけるSLEEP着眼の必要性
📕kaizu, et al. Sleep Should Be Focused on When Analyzing Physical Activity in Hospitalized Older Adults after Trunk and Lower Extremity Fractures—A Pilot Study. Healthcare 2022, 10(8), 1429. https://doi.org/10.3390/healthcare10081429
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✅ 前提知識:代謝当量;メッツ(METs: Metabolic equivalents)とは?
- 身体活動の強さについての指標
- 座って安静にしている状態が1METs、普通歩行が3METsに相当
- その他メッツの解釈については下図、サイト参照
🌍 参考サイト >>> site.
[背景・目的] 入院中の高齢者にとってベッド上での安静が重要であることは知られているが、身体活動(PA)を解釈する現在の方法では、睡眠(Sleep, SL)と座位の代謝当量(METs)0~1.5を含む広義の座りがちな行動(Sedentary behavior, SB)の使用を推奨している。
✅ 座位行動研究ネットワーク(Sedentary behavior research network, SBRN)のコンセンサスプロジェクト
- 身体活動に関連する用語と活動強度別活動量を定義した研究
- 座位行動 (Sedentary behavior, SB):1.5METs以下の覚醒行動。座位、リクライニング座位、臥位を含む。
- 低強度活動(Light intensity physical activity, LIPA):1.6~2.9METsの身体活動。ゆっくりした歩行、ヨガ、立位活動。
- 中〜高強度活動(Moderate to Vigorous-intensity physical activity, MVPA):>3.0 METsの身体活動。通常速度以上の歩行、ゴルフ、筋トレなど。
- 【★】3人の回答者が「≦1.5メッツ」ではなく「1~1.5メッツ」の間隔を使用すべきであると提案していた
📕 Tremblay, Mark S., et al. International journal of behavioral nutrition and physical activity14.1 (2017): 1-17. >>> doi.
この推奨は、日中に臥床することの少ない地域在住高齢者には適当なものと思われる。しかしながら、入院中高齢者においてはベッド上に臥床していることが多く、臥位を含むSBではなく、臥位と座位を分けてMETsを解釈が望ましいのではないかと思われた。
[方法] 我々は、体幹と下肢の骨折をした25名の高齢者を対象に横断研究を行い、PAの特徴を調査した。PAの強度をSL(0-0.9METs)、SB(1-1.5METs)、低強度PA(LIPA: 1.6-2.9 METs)、中・強度のPA(MVPA: >3.0 METs)に解釈した。各強度レベルの関係を明らかにするために、以下2つの相関係数を算出した。
(1) 各身体活動強度ごとの関係
(2) 各身体活動強度と身体機能(berg balance scale, BBS;Timed up and Go test, TUG)の関係
[結果] PA時間(分/日)は、SB(53.5%)、SL(23.2%)、LIPA(22.8%)、MVPA(0.5%)で占められていることが明らかになった。
✅ 図. 睡眠、座位行動、総合的な身体活動(低強度の身体活動+中程度の強度の身体活動)に費やされた時間の割合(外側のリング)。各強度の身体活動に費やされた時間の割合(内側のリング、色が濃いほど持続時間が長い)。
(1) 各身体活動強度ごとの関係
SLとSB(r=-0.837)、SLとLIPA(r=-0.705)には負の相関が、SBとLIPA(r=0.346)、LIPAとMVPA(r=0.429)には正の相関が観察された。
(2) 各身体活動強度と身体機能の関係
また、身体機能との関係では、SLとSBは異なる傾向を示すことがわかった。
[結論] これらの結果は、SLとSBが日中のPAにとってトレードオフの関係にあることを示している。したがって、高齢の入院患者のSLとSBについては、別々に解釈することが推奨される。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
自著である。
身体活動量に馴染みのない方には、ちょっとわかりにくい研究だろうか。
主張の根幹は、以下のものだ。
「地域在住高齢者にとっては、寝ていることと座っていることは分けて考えなくてもいいかも知れないけど、入院中高齢者は違う。離床しているか(起きているか)どうかが、まず大事になる可能性が高い」
今回抄読した研究の歴史は、個人的には長い。
始動してからすぐ、コロナ禍が病院を包んだ。
すると、各種移動制限(病棟内、病室内、院内)の定義がコロコロ変わるようになった。
最初の頃、状況が安定している中で計測できた数少ない被験者。
その人たちが示唆してくれた、今回のパイロットスタディのデータ。
本研究では、疼痛、疼痛に対する破局的思考、アパシー、それらの変数を多変量にかけて、身体活動量を促進する要因、障壁となる要因を明らかにする予定。多くの被験者数を必要とする解析だ。
いつ完了できるのか、本当に分からない。
だが、悲観するつもりはない。
コロナ禍がきて、開拓された水路があるのも事実。
・入院中の病院内での遠隔リハが検討されはじめた
・ウェアラブルデバイスの導入の話題が増えた
・ハンズオフの患者教育をどうやるかに光が当たりはじめた
既定の水路が閉じたから、終わりではない。
水勢を強めろ。もっと湧け。
水路をこじあけろ。いま、ここで。
それが既定の水路か、新たな水路か、それはどちらでもいい。
いまの精一杯の水流がこじ開けた道が、次の道だ。
進化圧を湧き破った水路が、次のトレンドになる。
それだけだ。
自分の望む現実ではなく、
全く想定外の現実から生長できるはずの自分たちを信頼しよう!
生命はなんらかの道を、探し出す
ジュラシックパーク マルコム
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