身体的リテラシー。身体活動量に貢献する身体能力以外の要素とは?
📖 文献情報 と 抄録和訳
高齢者のための身体的リテラシーの枠組み:統合的レビュー
[背景・目的] 身体的リテラシーは、成人の機能的健康状態を改善するための重要な要素である。しかし、高齢者のリハビリテーションのニーズをサポートするために、身体的リテラシーをどのように組み立てることができるかは、ほとんど知られていない。
[方法] 成人の身体的リテラシーを構成するためにどのような要素が用いられるかを理解するために、統合的レビューを実施した。2000年から2021年にかけて電子データベースを検索し、以下を含む適格基準を満たした。1) 45歳以上の成人、2) 身体的リテラシーまたは身体的リテラシーの構成要素に言及し、移動性、身体機能、リハビリテーション、健康増進、健康予防、公衆衛生、身体活動のいずれかを評価する結果に言及する、などの条件を満たす電子データベースを2000年から2021年にかけて検索した。
[結果] 合計22の論文が包括基準を満たした。成人の身体的リテラシーを定義すると、13の新しい構成要素を含め24項目が定義され、新たな項目の中では目的に応じた活動(purposeful activities)、加齢に伴う変化に関する知識(knowledge of age-related changes)、社会的相互作用(social interaction)が上位3つの構成要素となった。身体的リテラシーの介入は、自己効力感、身体機能、運動行動の改善を示した。
[結論] 現在の文献から得られた知見は、目的を持った社会的で多様な活動への参加、加齢に伴う変化に関する知識の獲得、移動能力の変動に自己適応できることが、身体的リテラシーの高い成人になるための基礎であることを示している。
[臨床意義] 身体的リテラシーは、成人および高齢者のための有望な健康戦略として台頭してきている。加齢に伴うモビリティの課題に対処するために、リハビリテーションのアプローチを含む身体的リテラシーの構成の再認識が必要である。身体的リテラシーのある成人になるための基礎は、自分の運動能力をモニターし、目的のある運動をしながら機能の変化を特定し改善するための知識を持つことである。成人および高齢者のための身体的リテラシー・プログラムは、すべての人に公平に重要な健康上の成果にプラスの影響を与える可能性がある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
最近、「退院後の歩行能力は、身体活動量の必要条件であって十分条件ではない」という結論の論文を抄読した。
この論文が主張する所は、押し並べていえば、歩行能力が向上したからといって、必ずしも身体活動量が向上するわけではないということだ。
では、歩行能力(身体的能力)の他に、どのような要素が必要になるのだろうか?
それを示している用語が『身体的リテラシー』という言葉であり、具体的にどのような項目があるかを調査したのが、本研究だ。
報告論文数のランキングを見てみると、上位7つ(神7)に身体的能力に関する項目が入っていないことに驚いた。
歩行能力に該当する項目は、13位に甘んじている。
それほど、「歩行能力単独」の身体活動量という結果的なものへの貢献度は高くないかもしれない、ということだ。
だからこそ、理学療法士として、「歩行能力単独」「身体的能力単独」しか分かりません、では生活は変えにくいかもしれない。
身体活動量に対する知識を教育し(Cognitive)、やる気を引き出し(Affective)、実際の行動を提案する(Behavioural)。
そこまでできてようやく、身体活動量は促される。
そういうイメージを持つことが大事だ。
身体的能力は、あくまでパズルの1ピースであるということ。
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