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好きこそ「心」の上手なれ:好きな活動への参加がうつと不安を減らす
📖 文献情報 と 抄録和訳
認知症患者および非認知症患者における好きな活動への参加と認知、メンタルヘルス、機能への影響
Regier, Natalie G., et al. "Engagement in favorite activity and implications for cognition, mental health, and function in persons living with and without dementia." Journal of Applied Gerontology (2021): 0733464821999199.
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar, HHS
✅ 前提知識:どうやって好きな活動を特定したか?
- 参加者、または必要であればその代理人に、活動への関与や好みについていくつかの質問をした(詳細は不明?)。
- 参加者が「好き」な活動を特定し、記録した。
- 好きな活動への関与は、次の質問で評価された。「前回のインタビュー時(1年前)から、あなたは(好きな活動)をしましたか?参加者(または代理人)は「はい」または「いいえ」と回答した。
[背景・目的] 高齢者にとって個人的に意味のある活動への関与が与える影響については、ほとんど知られていない。そこで、本研究では、認知障害のある高齢者とない高齢者を対象に、自分の好きな活動への関与が認知、感情、機能、健康関連のアウトカムに与える影響について検討した。
[方法] データは、National Health and Aging Trends Study(NHATS)の第2波に参加した認知症患者(PLWD)1,397人と認知的に健康な人(CHP)4,719人から入手した。社会人口統計学的特徴を認知状態別に検討した。
[結果] 多変量分散分析の結果、PLWDでは、好きな活動への参加は、より大きな機能的自立とうつ病の減少に関連することが示された。CHPでは、好きな活動への参加は、機能的自立度の向上、うつ病と不安の減少、記憶力測定の成績向上と関連していた。
[結論] この結果は、個人的に意義のある活動への参加は、認知症患者と非認知症患者にとって、重要かつ明確な利益をもたらす可能性があることを示唆している。
📕 参考論文:運動嗜好を評価するバッテリー
脳卒中運動嗜好調査票:地域リハの場で使用することが可能
● Blennerhassett, et al. Physiotherapy theory and practice (2019): 1-8. >>> doi.
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
鍵穴に対して、鍵がある。
当たり前の話だ。
どうして僕たちは、物(鍵)に対しては当たり前と思えることが、人間に対して適応しにくいのだろう。
とくに、人間の心に対して。
その当事者の心の鍵穴に対して、鍵がある。
当たり前の話だ。
それなのに、人の心に対しては、画一的になっていないか?
今回の研究は、活動や参加への介入において、当事者の心の鍵穴に適合した活動を処方することの重要性を示唆した。
そして、心は心に止まらない。
そこが原点で、そこを中心にして現実が描かれる。
たとえば、
認知機能の低下(📕Zhu, 2022 >>> doi. )を引き起こしたり、
身体活動量の低下(📕Marques, 2020 >>> doi.)を引き起こしたりする。
心の問題は、そこを震源地として、全体に影響が波及していく可能性がある。
だから、心を加味しない活動だけへの着手は、下手な人形劇だ。
自分から動く『内発性』をもってもらうには、心というエンジンがいる。
一流の人形劇作家の台本はいつも真っ白で、「心のありようを捉えることを一番大切にしている」と、そういっていた。
ただ動きを作る仕事、と思われたその仕事においてさえ、もっとも重んじられるのが「心」なのだ。
医療はなおさらで、とくに患者と関わる時間の多いリハビリは、なおさらだと思う。
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