脳出血の画像診断。重症度と血腫量の強い相関
📖 文献情報 と 抄録和訳
米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)の脳卒中スケールと初期脳内出血量との良好な相関性
Farooq, Salman, et al. "National Institutes of Health Stroke Scale Correlates Well with Initial Intracerebral Hemorrhage Volume." Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases 31.4 (2022): 106348.
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar
✅ 前提知識:National Institutes of Health Stroke Scale (NIHSS)とは?
- NIHSSは脳卒中神経学的重症度の評価スケールとして世界的にもっとも広く利用されている評価法の一つ。
- 意識水準・意識障害(見当識と記憶)・注視・視野・顔面神経麻痺・両上下肢運動・運動失調・感覚・発語・消去現象と注意障害など11項目のチェック項目がある。
- リストの順に施行し合計点にて評価。0点が正常で点数の高いほど重度。
🌍 参考サイト >>> site.
[背景・目的] 米国メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)は,現在,虚血性脳卒中の病院品質,リスク調整死亡率指標を公表しているが,脳内出血(ICH)については公表していない。CMSの行政請求データに含まれるNIHSSは、ICHのリスク調整に用いる指標の候補であり、ICHスコアと同様の精度で臨床転帰を予測することが示されている。初期のNIHSSと初期のICHボリュームとの相関は、ICHリスク調整にNIHSSを使用することをさらに支持するものである。
[方法] 大規模多施設共同試験(FAST-MAG)に登録された372名のICH患者を対象に、早期NIHSSと早期ICH量の関係を相関および線形傾向分析により評価した。
[結果] 全体として、NIHSSとICHの体積には強い相関があり、r = 0.77(p < 0.001)、ICHが10cc増加するごとにNIHSSは4.5点増加した。相関係数はすべてのサブグループで同等であったが、ICH単位体積の増加に伴うNIHSS増加の大きさは、右半球ICHよりも左半球ICH、IVHがない場合よりもある場合、最後の病気がわかってから2時間目よりも1時間目に撮影した場合、女性よりも男性、高齢者よりも若い患者でより大きくなった。
[結論] 初期のNIHSS神経障害重症度値は、初期のICH血腫量と強い相関がある。虚血性脳卒中と同様に、病変容積の増大は右半球よりも左半球で大きなNIHSS変化をもたらし、これは左半球機能に対するNIHSS感度が高いことを反映している。これらの所見は,脳内出血のリスク調整死亡率測定にNIHSSを用いることの支持を与えるものである.
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
脳出血患者について、医師と以下のようなディスカッションをしたことを覚えている。
Super Human:この患者さん、後遺症が重く残りそうですね。「血腫量(血腫の大きさ)」も大きいですし・・・。
Dr. :Super Humanくん、あまり血腫量でものを語らない方がいいよ。ほんの小さな大きさでもすごく大きな麻痺が残ることもある。
確かに、そうだと思った。
この時以降、血腫量でものを語ることは、僕の中で躊躇されるようになった。
だが、今回の論文の結果はどうだろう。
r = 0.77は、強い相関といえる。
どうやら、神経学的重症度と血腫量は関係していそうだ。
針よりハサミが、ハサミより包丁が殺傷能力として高いことは明らかだろう。
震源地だって、もちろん大事だ。
海がなければ津波は起こりようがない。
だけど、マグニチュードだって、大事じゃない訳がない。
1つだけ今回の論文に疑念を差し挟むとすれば、なぜ多変量解析を行わなかった?
層別化はしているが、やはり多変量解析によって独立した関連性を明らかにしてほしかった。
n = 372なら、多変量解析にかけることは全く問題ないはずなのだが・・・。
交絡により、有意な結果が出なかったのだろうか、そこだけは気になる。
ところで、日本人ではどうなのだろう?
“理学療法学” において出血量が歩行自立の予測因子であることが明らかになっている(📕澤島, 2018 >>> doi.)。
今後は、血腫量についても、積極的に議論に取り入れたいと思う。
372人の事実、という強い後ろ盾ができたから。
原理というものを優先して実在を軽視すれば知恵も曇る
原理に合わぬからといって実在を攻撃することはいけない
山脇東洋
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