リズム運動の主座。小脳歯状核が制御
📖 文献情報 と 抄録和訳
霊長類の小脳深部核における運動同期を制御する神経シグナル
Okada, Ken-ichi, Ryuji Takeya, and Masaki Tanaka. "Neural signals regulating motor synchronization in the primate deep cerebellar nuclei." Nature communications 13.1 (2022): 1-12. https://doi.org/10.1038/s41467-022-30246-2
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar, 日本語プレリリース
🔑 Key points
- 音楽に合わせたダンスや手拍子など,リズムに合わせた運動に小脳が関与するしくみを解明。
- 同期運動中,小脳に刺激タイミングや時間誤差の情報をもつ細胞があることを発見。
- 小脳の予測制御のしくみを解明することで,小脳疾患の病態理解と診断などへの応用が期待。
[背景・目的] 外界のリズムに同期した運動は、私たちの日常生活のいたるところに存在する。しかし、小脳が関与しているにもかかわらず、そのメカニズムは不明なままである。
[方法-結果] 我々は、周期的に交替する視覚刺激に対して同期したサッカードを行うサルにおいて、小脳歯状核のニューロン活動が、次のサッカードのタイミングと現在の時間的誤差に相関することを見いだした。その結果、小脳歯状核のニューロン活動は、次のサッケードのタイミングと現在の時間誤差に相関していることがわかりました。各試行で反応性サッカードから予測性サッカードに移行する間、これらのニューロンの活動は目標オンセットと一致し、特定の運動指令ではなく、リズム構造の内部モデルを表していた。電気刺激による行動変化は、異なるニューロン群を様々な強さで活性化することで説明できることから、外側小脳には、内部リズムの獲得、予測的運動制御、同期運動時のエラー検出のための複数の機能モジュールが存在することが示唆された。
✅ 図. (a)同期課題とパフォーマンス。(b)小脳核の運動実行ニューロン。小さな黒い点は神経スパイ ク,大きな点は眼球運動のタイミングを示す。データは左右の標的がでたタイミングで揃え,試行ごと に上から順に並べてある。この例では左向きの眼球運動の前に活動がみられる。右のパネルは試行内で の順番に標的と運動のタイミングで揃えた発火率の変化。(c)タイミング予測ニューロン。左右いずれ の運動の際にも活動し,標的のタイミングで活動が最大となっている。
[結論] 独自に考案した行動課題を用いて小脳による予測制御のメカニズムを明らかにした本研究成果は,小脳疾患でみられる病態を理解して機能評価する方法の開発に役立つだけでなく,ニューロモジュレーションを用いた介入法の開発や,様々な情報処理に用いることができる脳型回路による予測アルゴリズムの開発などに貢献することが期待される。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
以前、パーキンソン病に対する音楽療法の効果に関するメタアナリシスを抄読した。
その仕組みとして、「音楽は、感情-大脳基底核-前頭前野の歯車を円滑に回すための潤滑油かもしれない。」と考察したが、もう1つあったようだ。
それが、小脳による外部刺激キューの利用である。
外部刺激キューとは、パーキンソン病により大脳基底核が駆動されにくくなっている患者に対して、皮質-小脳ループを駆動するという、いわば代替回路の使用である(たとえば床に線を引き視覚情報を利用する、メトロノームでリズムをつくる聴覚情報の利用など)。
今回抄読論文から、リズム運動の主座が小脳であることが明らかとなり、音楽がパーキンソン病に威力を発揮する経路の1つとして、皮質-小脳ループが駆動されることもあると推察する。
さらに、皮質-小脳ループを駆動する機能の1つに、「バランス機能」があろう。
リズム運動が、小脳の活動を賦活する作用を持つのであれば、それを利用しない手はない。
・リズム(音楽) × 重心移動練習
・リズム(音楽) × バランス練習
これによって、当該練習時の小脳系ループの活動度を高め、介入効果をアップできるかもしれない。
これは、筋力トレーニング時に、電気刺激を並行して効果アップを狙うことに似ている。
実用的なリズム音源や、音楽にアンテナを張ってみよう。
自分のリズムを大切にしろよ。...
いつもいってるけどさ、
いちばん大切なのはリズムなんだ。
リズム 森絵都
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