血圧は『変動』に注意しなさい。
📖 文献情報 と 抄録和訳
血圧の変動:加齢の潜在的なマーカー
📕Bencivenga, Leonardo, et al. "Blood pressure variability: a potential marker of aging." Ageing Research Reviews (2022): 101677. https://doi.org/10.1016/j.arr.2022.101677
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar
🔑 Key points
- 加齢に伴い神経循環系調節機構に変化が生じ、生理的変動パターンが損なわれる。
- 血圧変動(BPV: Blood pressure variability)は、晩年における臓器障害やいくつかの健康上の転帰を独立して予測することが示されている。
- BPVの増加は、心血管系の老化と共通の病態生理学的修飾を持ち、老化のいくつかの特徴に関係する。
- BPVが老化の新しいマーカーとなり得るかどうかを評価するために、さらなる研究が必要である。
[レビュー概要]
本論文の目的は、BPVと老化プロセスの病態生理との相互作用を分析し、老化の新しいマーカーとしての血圧変動(BPV)の潜在的役割に関する議論を喚起することである。
加齢は、神経-心血管系調節機構の変化により特徴付けられ、生理的変動パターンが損なわれることになる。BPVの増加は、臓器障害と関連し、いくつかの健康アウトカム(心血管イベント、神経認知障害、代謝障害、サルコペニアや虚弱などの典型的な老年症候群)に独立した予測値を示すことが、繰り返し示されてきた。したがって、BPVは後期高齢者に典型的な恒常性維持機構の変化の表象である可能性がある。
加齢とBPVの変化は同じ分子機構を持ち、特に高齢者では不顕性炎症の臨床状態が広く確認されており、内皮機能の変化や活性酸素の産生の増加を通じてBP調節異常にも関連している。動脈硬化と自律神経障害はBPVの障害と関連しており、高齢者における重要な特徴となっている。さらに、ジェロサイエンスの分野で蓄積された証拠は、心血管系の老化とBPVの変化で説明されたいくつかの分子変化は、老化の9つの特徴の大部分と関連していることを報告しています。実際、BPVはゲノムの不安定性、エピジェネティックな変化、ミトコンドリアの酸化的損傷と関連している可能性があり、これらは老化プロセスのマイルストーンを示している。
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📗 ミニレビュー:血圧変動について
■ 定義
- 外部環境ストレス、内因性心臓血管調節メカニズム、体液性影響、およびレオロジー要因の間の複雑な相互作用の結果として、平均値を中心に時間とともに変動する(📕Parati et al., 2013 >>> doi.)
- BPVは、短期(数分および数時間以内)、中期(日および週)、および長期(月および年)の変動を特徴とし、自由行動下血圧測定(AMBP)、自宅測定、または繰り返しの臨床訪問を通じて評価できる。(📕Lattanzi et al, 2018 >>> doi.)
■ 測定方法
- BPVを評価するために、変動性のいくつかの指標が提案されている。標準偏差(SD)と変動係数(CV)は、計算が簡単で、おそらく他の方法よりも実用的であるため、最も一般的に使用されます。(📕Rouch et al., 2020 >>> doi.)
- 現在まで、BPVを測定するためのゴールドスタンダードのアプローチと正常範囲は確立されていないため、その臨床的解釈を困難にしている
■ 疾患リスク/健康関連
- BPVの増加と脳卒中、冠状動脈イベント、心不全、心血管およびすべての原因による死亡のリスクの増加との関連を示してい(📕Laurent and Boutouyrie, 2018 >>> doi. )
- BPVが認知障害や認知症にも関連していることが報告されている(📕Alpérovitch et al., 2014 >>> doi.)
- そのほかにも腎機能、サルコペニア、老化などとの関連が報告されている
好きな小説の書き出しがある。
(北国は損だ)と思う。
損である。
冬も日差しの明るい西国ならばこういう無駄な働きや費えは要らないであろう。北国では町中こうまで働いても、たかが雪をよけるだけのことであり、それによって一文の得にもならない。
が、この城下の人々は、深海の魚がことさらに水圧を感じないように、その自然の圧力の中で賑々しく生きている。この冬支度のばかばかしいばかりのはしゃぎかたはどうであろう。
司馬遼太郎 峠(上)P8〜
絶対値が高くとも、低くとも、そこには『馴化』がある。
つまり、それが当たり前の状態になってしまう、ということ。
人間にとって、より大きな影響を与えるのは、次の瞬間の『変動』だ。
ジェットコースターが怖いのは、絶対的な高さによるものというより、瞬間的な上昇や下降といった『変動』によるところが大きい。
血圧にも、絶対値としての高い、低いのほかに「変動」が大きい、小さいという価値が別個にある。
この文献では、その血圧変動についてをレビューしている。
とくに老化プロセスとの関連という切り口で論じており、今後、ウェアラブルセンサーなどとの連携が期待される部分だろう。
回復期病棟でのリハビリに、どのように応用できるのか、考察を進めたい!
下り坂に向かう兆しは最盛期に現れ、
新しいものの胎動は衰退の極に生じる。
洪自誠『菜根譚』
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