脳出血者の予後予測。部位別-出血量のカットオフ値
📖 文献情報 と 抄録和訳
脳内出血における出血量と臨床転帰の地域別基準値
[背景・目的] 大脳内出血(intracerebral hemorrhage, ICH)に関する主要な臨床試験では、機能的転帰の改善における治療効果を実証することがほとんどできなかった。これは、ICHの転帰がその位置によって異なり、戦略的に小さなICHが衰弱を引き起こし、治療効果を混乱させる可能性があることが一因であると考えられる。我々は、ICHの転帰を予測する上で、異なるICHの位置における理想的な血腫容積のカットオフ値を決定することを目的とした。
[方法] 2011年1月から2018年12月までの期間に香港大学の前向き脳卒中登録に登録された連続する脳内出血患者をレトロスペクティブに分析した。 修正Rankinスケールスコアが発症前2点以上の患者、または神経外科的介入を受けた患者は除外した。特定の脳内出血の位置における6か月後の神経学的転帰(良好[修正Rankinスケールスコア0~2]、不良[修正Rankinスケールスコア4~6]、死亡)を予測するICH容積のカットオフ値、感度、特異度は、受信者動作特性曲線を用いて決定した。また、各位置特有の容積カットオフ値について、これらのカットオフ値がそれぞれの転帰と独立して関連しているかどうかを決定するために、個別の多変量ロジスティック回帰モデルも実施した。
[結果] 533件の脳内出血のうち、部位別の出血量のカットオフ値は以下の通り。
■ 大脳皮質(Lobar)
・良好な転帰を予測するカットオフ値は40.5 mL未満。
・不良な転帰のリスクが高まるのは48.0 mLを超える場合。
・死亡率が顕著に上がるのは89.5 mLを超えた場合。
■ 被殻/外包(Putamen/EC)
・良好な転帰のカットオフ値は32.5 mL以下。
・41.0 mLを超えると不良な転帰のリスクが増加。
・42.0 mLを超えると死亡率が増加。
■ 内包/淡蒼球(IC/GP)
・良好な転帰を示すのは5.5 mL未満の出血。
・不良な転帰は6.0 mLを超えた場合にリスクが増加。
・死亡率は21.0 mLを超えると顕著に上がる。
■ 視床(Thalamus)
・良好な転帰のカットオフ値は6.5 mL以下。
・9.5 mLを超えると不良な転帰が増加。
・10.5 mLを超えた場合に死亡リスクが増加するが、統計的有意性は他より低い。
■ 小脳(Cerebellum)
・良好な転帰は17 mL未満の出血で予測される。
・22.0 mLを超えると不良な転帰および死亡率が上がる。
■ 脳幹(Brainstem)
・良好な転帰のカットオフは3.0 mL未満。
・7.5 mLを超えると不良な転帰が予測される。
・10.5 mLを超えると死亡リスクが非常に高くなり、この部位の患者はほぼ全員が死亡する。
部位別のカットオフ値に関するすべての受信者動作特性モデルは、小脳の良好な転帰の予測を除いて、判別値が良好であった(曲線下面積>0.8)。
[結論] ICHの転帰は、部位特異的な血腫の大きさによって異なっていた。ICH試験の患者選択においては、部位特異的な容積カットオフ値を考慮すべきである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
そう思う脳画像はある。
だが、その感覚は、しごく直感的なものであって、客観的な数値に基づいたものではない。
今回の抄読研究は、その直感的なものを、具体的で客観的で冷たい判断に変えてくれるかもしれない。
各脳部位の脳出血の脳卒中予後に対するカットオフ値を美しいビジュアルとともに示してくれた。
今回示されたカットオフ値を参照値としつつ、脳画像を見て、ある程度の見通しを立てていきたいと思う。
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