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プレコンディショニング。運動誘発性筋損傷を予防


📖 文献情報 と 抄録和訳

運動誘発性筋損傷に対するプレコンディショニングの効果: 系統的レビューとメタ分析

📕Boyd, Lachlan, et al. "The Effects of Pre-conditioning on Exercise-Induced Muscle Damage: A Systematic Review and Meta-analysis." Sports Medicine (2023): 1-21. https://doi.org/10.1007/s40279-023-01839-8
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🔑 Key points
🔹運動誘発性筋損傷(exercise-induced muscle damage, EIMD)は、激しい運動後に、トレーニングを受けていない人の機能的能力を低下させる。
🔹激しい身体活動を行う数日~数週間前にプレコンディショニング活動を行うことで、EIMDの重症度が低下し、回復時間が短縮する。
🔹プレコンディショニング活動は、筋肉に損傷を与える運動の2~4日前に、量と強度を増やして実施するのが最も効果的であるようだ。
🔹プレコンディショニング活動の量と強度が大きいとEIMDを引き起こす可能性があるが、EIMDのレベルはEIMD運動への初回曝露時よりも顕著に低いことから、プレコンディショニング活動は、慣れない激しい運動への初回曝露後のEIMDのレベルを低下させるのに効果的である可能性が示された。

[背景・目的] いくつかの研究では、損傷を伴う身体活動後の運動誘発性筋損傷(exercise-induced muscle damage, EIMD)の徴候や症状を緩和するための戦略として、等尺性、遠心性、下り坂歩行のプレコンディショニングが利用されている。
⚫︎目的:この系統的レビューおよびメタアナリシスでは、2回目の激しい身体活動後の筋損傷の指標および身体パフォーマンス測定に対するプレコンディショニング戦略の効果を検討した。

[方法] データソースPubMed、CINAHLおよびScopus。適格基準PICO(集団、介入/曝露、比較、結果)基準を満たす研究が本レビューに含まれた: (1)身体的パフォーマンスに影響を及ぼす禁忌のない一般集団または「訓練を受けていない」参加者、(2)筋損傷性収縮の予防および重症度を検討するパラレルデザインの研究、(3)ベースラインと介入後の測定値を用いて結果測定を比較、(4)結果測定には間接的筋損傷のマーカーおよび筋収縮力測定値を含む。参加者過去6ヵ月以上に筋力トレーニング経験のない者。介入損傷を伴う身体活動の最低24時間前に、遠心性または等尺性収縮からなるプレコンディショニングエクササイズを1回実施し、損傷を伴う身体活動の前にプレコンディショニングを実施しない対照介入と比較した。研究評価Kmet評価システム。統合方法標準化平均差(SMD、すなわち効果の大きさ)、統計的有意性の検定統計量(すなわちZ値)、およびI2を検査することによる研究間の異質性を調べるために、フォレストプロットを用いて定量的分析を行った。

[結果] 抄録および全文スクリーニングの結果、23の論文が本論文に含まれた。

■メタ分析❶:クレアチンキナーゼ値
・24時間後(SMD = - 1.64; Z = 8.39; p = 0.00001)、48時間後(SMD = - 2. 65;Z=7.78;p=0.00001)、72時間後(SMD=-2.39;Z=5.71;p=0.00001)、96時間後(SMD=-3.52;Z=7.39;p=0.00001)のクレアチンキナーゼ値が対照群より低かった。

■メタ分析❷:遅発性筋痛
・遅発性筋痛は、24時間後(SMD=-1.89;Z=6.17;p=0.00001)、48時間後(SMD=-2.50;Z=7.99;p=0.00001)、72時間後(SMD=-2.73;Z=7.86;p=0.00001)、96時間後(SMD=-3.30;Z=8.47;p=0.00001)においても、プレコンディショニング群で低かった。

■メタ分析❸:最大随意収縮力
・最大随意収縮力は、24時間後(SMD=1.46;Z=5.49;p=0.00001)、48時間後(SMD=1.59;Z=6.04;p=0.00001)、72時間後(SMD=2.02;Z=6.09;p=0.00001)、96時間後(SMD=2.16;Z=5.69;p=0.00001)において、プレコンディショニング群の方がコントロール群よりも早く維持され、正常に戻った。

■メタ分析❹:可動域
・可動域は、24時間後(SMD=1.48;Z=4.30;p=0.00001)、48時間後(SMD=2.20;Z=5.64;p=0.00001)、72時間後(SMD=2.66;Z=5.42;p=0.00001)、96時間後(SMD=2.5;Z=5.46;p=0.00001)において、コントロール群と比較してプレコンディショニング群の方が良好に維持された。

定性的分析によると、プレコンディショニング活動は、筋損傷プロトコルの直前、または筋損傷プロトコルの1~3週間前と比較して、筋損傷プロトコルの2~4日前に実施するとより効果的であった。さらに、等尺性収縮よりも遠心性収縮を用い、量が多く、強度が高く、筋収縮がより長く行われたプレコンディショニング活動は、EIMDからの保護効果が高かった。限界:いくつかのアウトカム指標は研究間で高い異質性を示した。また、プレコンディショニングと2回目の有害な身体活動の間の継続時間の違いを考慮できないことも限界であった。

[結論] プレコンディショニングは、クレアチンキナーゼ放出、遅発性筋肉痛、最大随意収縮力の低下、可動域減少の重症度を有意に減少させた。プレコンディショニングは、重度のEIMDを予防し、筋力発生能力の回復を促進する可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

かねてより、パフォーマンス前のウォーミングアップは障害予防、パフォーマンス向上に重要であることを学んできた。

ウォーミングアップは、たとえば筋温の上昇をもたらし、それが骨格筋収縮力をあげる確かな仕組みを持っていた。

さて、話は臨床現場における筋力トレーニングに移る。
高齢患者さんとのリハビリテーション。
まず、挨拶して→関節可動域練習→筋力トレーニングへ・・・。
ちょっと待って!!!

いきなり筋トレ、やってなかった?
で、筋トレはなるべくなら強度を強いものを、と意識しているわけで。
それは、筋肉痛など諸問題を引き起こしやすい方法だ。

これからは、まずプレコンディショニングをしよう。
筋トレ前に本当の軽負荷で10回程度関節を動かし、そこから筋トレへ入る。
それだけで、弊害を最小にした上で、効果を最大化できる。
筋力トレーニングが、1つグレードアップした!!!

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