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疼痛に関連する苦しみ。111論文のレビューからの定義


📖 文献情報 と 抄録和訳

痛みにおける苦しみの定義:自然言語処理を用いた痛みに関連する苦しみに関する系統的レビュー

📕Noe-Steinmüller, Niklas, et al. "Defining suffering in pain: a systematic review on pain-related suffering using natural language processing." Pain 165.7 (2024): 1434-1449. https://doi.org/10.1097/j.pain.0000000000003195
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[背景・目的] 痛みに関連した苦しみを理解し、測定し、緩和することは、臨床ケアと痛みの研究の双方にとって重要な課題である。しかし、痛みに関連する苦しみの概念に何が含まれるのかについてのコンセンサスは得られておらず、実証研究においても正確に運用されていないことが多い。ここでは、(1)既存文献における痛み関連の苦しみの概念化を系統的にレビューし、(2)定義と概念的枠組みを構築し、(3)機械学習を用いて結果を相互検証する。

[方法] 我々は、Web of Science、PubMed、PsychINFO、PhilPapersから、痛みに関連する苦しみの経験に関する概念的な貢献を含む査読付き論文を系統的に検索し、111の論文を同定した。大規模言語モデルとトピックモデリングに基づいた人工知能ベースのアプローチによる質的分析の相互検証に基づいて、研究情報を抽出し統合するための新しい手順を開発した。

[結果] 現在の理論的見解を代表する文献から定義を導き出し、痛みに関連する苦痛とは、個人の自己としての完全性や人としてのアイデンティティに対する脅威の認識に対する、ひどく否定的で複雑かつ動的な経験であると説明した。また、痛みに関連した苦痛の概念的枠組みを提示し、社会的、身体的、個人的、精神的、実存的、文化的、認知的、感情的という8つの次元を区別した。

この図は、痛みに関連する苦しみ(pain-related suffering)の概念的フレームワークを示している。図では、苦しみが8つの次元に分けられており、それぞれの次元はさらに細かい要素に分けられている。各次元とその要素は、痛み関連の苦しみに関する文献の概念化を基にしており、図中の線の太さは、それぞれの要素が文献でどれだけ多く取り上げられているかを示している。

[結論] われわれのデータは、痛みに関連した苦しみは、痛みそのものと密接に関連しながらも、それとは異なる多次元的な現象であることを示している。本分析は、さらなる理論的・実証的発展のためのロードマップを提供するものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

痛みというのは、直接的に一本の道で、苦しみにつながっている。
頭の中においては、そういうイメージを持っていた。
だが、そのつながりは、どうやらたくさんの分枝を持っている。

今回抄読した文献では、111もの論文をレビューすることで、疼痛に関連する苦しみに8つの次元があることを明らかにした。
さらに、その8次元の下位項目も示してくれている。
このような分枝の詳細な定義が明らかになることで、疼痛による苦しみを妥当に定義でき、結果的に適切な苦しみへの対応につながりやすいと思う。

例えば、『死への恐怖』(文化的次元)による疼痛に関連する苦しみを持っている人がいたとする。
その人に対して、『身体症状』(身体的次元) に対する介入のみをしていても、緩和される可能性は低いだろう。
逆もまた然り。
とにかく、疼痛に関連する苦しみの種類という鍵穴を明らかにすることで、自然と扉を開く鍵が見えてくる。
その思考過程の礎となる定義が、この論文においてなされたというわけだ。
僕たちとしては、この定義をどのように臨床に用いるか、応用するか、が問われる。

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