股関節における関節包, 関節軟骨の付着
📖 文献情報 と 抄録和訳
大腿骨頭頚部前方接合部における関節包の付着: 大腿骨寛骨臼インピンジメントに関する仮説
[背景・目的] 大腿骨寛骨臼インピンジメント(Femoroacetabular impingement, FAI)は、大腿骨近位部と寛骨臼の病的な接触を特徴とし、変形性股関節症の一般的な前駆症状である。カムの形態は、FAIの原因となる骨隆起であり、大腿骨頭と頚部の接合部の前上方に形成されることが多い。大腿骨頭頸部接合部は関節軟骨と関節包に覆われた境界領域であるという解剖学的コンセンサスがあるにもかかわらず、関節包が前上方関節軟骨と連続しているかどうかは依然として不明である。本研究では、カムの形態形成を解剖学的に考察するために、大腿骨頭頸部前方接合部の関節包付着部の組織学的特徴、特に関節包と関節軟骨との連続性の有無に着目して検討することを目的とした。
[方法] 本研究では、7股関節(男性3名、女性4名、死亡時平均年齢68.7歳)から採取した合計21個の前上方領域(12時、1時30分、3時の位置について各7股関節)を組織学的に解析し、Massonのトリクローム染色による組織切片を用いて関節包の厚さを定量的に評価するとともに、関節包の付着状態を定性的に評価した。
[結果] 本研究の結果、関節包は凹部から大腿骨頭頸部接合部に向かって近位に折れ曲がり、線維性と滑膜性の領域が混在していることが示された。注目すべきは、関節包が関節軟骨の表層に続いているだけでなく、線維軟骨を介して関節軟骨に付着していたことである。この連続領域は比較的繊維質で、縦方向に密な結合組織が走っていた。
陥凹部における関節包の厚さ(平均、1.7±0.9mm)および関節軟骨遠位端における関節包の厚さ(0.35±0.16mm)は、関節軟骨の最表層厚さの対照値(0.019±0.003mm)よりも有意に大きかった(DunnettのT3、いずれもp値<0.001)。
[結論] 関節包と関節軟骨の間の線維性連続性とその厚さに基づき、本研究は、カム形態の頻発部位において、何らかの機械的応力が関節包から関節軟骨に伝達される可能性を解剖学的に示唆している。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
今回の研究から、これまで連続しないと考えられていた「関節包が関節軟骨と連続する」ことが明らかとなった。
これによって、臨床思考過程にどのような影響を与えるだろう。
知識は、それそのものでは学問にはならない。
行動につながってはじめて、学問といえるのだ。
臨床思考過程との関連においては、論文中において以下のような考察がなされていた。
これを読んで感じたのは、これまでの理解では主に摩擦やインピンジメントストレスがFAIを引き起こすトリガーとして認識されていたが、関節包と関節軟骨が連続していることから、関節包の伸張ストレスもFAIを引き起こすトリガーになりうる可能性がある、ということ。
しっかりとした解剖学に基づいて、地に足がついた臨床思考過程をとっていきたい。
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