Fear-avoidance model × 運動療法の関わり
📖 文献情報 と 抄録和訳
慢性疼痛に対する運動療法:運動は大脳辺縁系機能をどのように変化させるか?
■ Fear-avoidance model × 運動療法の関わり
<通常のFear-avoidance model>
・痛みの慢性化に働く「恐怖回避モデル」はよく知られている(📕Lethem et al., 1983 >>> doi.)。
・人間は怪我をして痛みを感じると、それに立ち向かって回復しようとしたり、治療を求めたりするが、否定的な感情や怖い情報によって破局的思考に陥ると、強い恐怖が生じ、痛みを引き起こすかもしれない運動を避けるようになる。
・その結果、抑うつによる激痛と身体機能障害という悪循環が起こり、痛みは治らないまま慢性化していく。
・ある動作で痛みが生じると、固まって二度と動こうとしなくなる。
<運動療法の関わり>
・動いても痛くないという経験をすると、恐怖の条件付けは消滅し、目の前の問題に向き合い、回復することができる。
・運動は、恐怖の条件付けを抑制し(📕Minnami et al., 2023 >>> doi.)、おそらくは恐怖の消滅を促進することによって、このプロセスの一翼を担っている。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
以前、「慢性痛が不安を引き起こす脳内メカニズム」に関する文献抄読をした。
さらに、慢性疼痛はそのような心理的な問題を介して、身体活動を阻害し、生活の質(HRQoL)を低下させる。
だからこそ、この慢性疼痛→心理的問題→不活動/廃用/能力障害の流れを断ち切ることが望まれる。
そして、今回の文献を読んで感じたことは、その鍵の1つになるのが『運動』であるということ。
その仕組みとして、本文にはいろいろ解説されているのだが、大きくは2つ重要なポイントがあるように感じた。
まず、運動が引き起こす『運動誘発性痛覚低下』である。
これは、心理的な問題とは関係なく、運動が直接的に疼痛を軽減させる効果だ。
これは、Fear-avoidance modelにおける「痛みの体験」にダイレクトに影響を与える効果。
そして、もう1つは運動の疼痛恐怖や破局的思考(心理的な問題)に対する効果だ。
この効果を出す際に重要なことは、どうやら『痛みを感じない中での運動経験』だ。
「動いても、疼痛がない!」という経験が、疼痛恐怖や破局的思考を改善させうる。
慢性疼痛者への運動療法に際しては、疼痛のない中での運動経験を意識していきたい。
Fear-avoidance modelにおける悪循環を断ち切る運動療法には、方法上のコツがありそうだ。
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