理学療法士 v.s 臨床予測モデルの予後予測
📖 文献情報 と 抄録和訳
脳卒中後の自立歩行に関する理学療法士の予測の正確性
[背景・目的] 脳卒中リハビリテーションの研究および臨床現場における予測ツールの利用は増加しているが、これらの予測ツールが臨床家の予測を上回るかどうかは明らかになっていない。目的:本研究は、理学療法士による自立歩行の予測と、Time to Walking Independently after STroke(脳卒中後の自立歩行までの時間:TWIST)予測ツールを比較することを目的とした。
[方法] 新たに下肢の筋力低下が現れ、自立歩行が不可能な成人(機能的歩行カテゴリー[FAC] < 4)が対象となった。脳卒中発症後1週目に、担当の理学療法士に、患者が4、6、9、12、16、または26週目までに自立歩行を達成できるか、あるいは引き続き介助が必要な状態にとどまるかを予測してもらった。予測はTWIST予測ツールも使用して行ったが、共有はしなかった。独立歩行達成までの時間を従属変数とし、理学療法士とTWIST予測を独立変数とする二項ロジスティック回帰分析を行った。
[結果] 91人の参加者が対象となった(年齢中央値71歳、女性36人[40%])。ほとんどの参加者は(67人[74%])、脳卒中発症1週間後には非歩行(FAC=0)であった。37人の理学療法士が採用された。理学療法士は、39人の参加者が自立歩行を達成するまでの時間を正確に予測した(43%)。予測精度は、理学療法士の自信や脳卒中に関する経験年数とは関係なかった。脳卒中後4、6、9週目に自立歩行を達成した参加者の予測では、TWISTの予測精度が理学療法士の予測を上回った(理学療法士76~77%、TWIST86~88%の精度)。脳卒中後16、26週目では、理学療法士とTWISTの予測精度は同程度だった。
[結論] 脳卒中後16、26週目では、理学療法士とTWISTの予測精度は同程度でした。結論TWIST予測ツールは、患者が脳卒中発作後4、6、9週目までに自立歩行を達成できるかどうかを予測する精度は理学療法士よりも高いが、16週目または26週目についてはそうではない。TWISTは早期リハビリテーションと退院計画の立案に役立つ可能性がある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
未来は絶対的に未知である。
だが、予測しようとしたときには、そこに予測精度と呼ばれるものが生まれ、それは予測ツールによって大きく異なる。
完全な予測はない。だが、より良い予測ツールはあり得ると思っている。
その中で、今回抄読した研究によれば、理学療法士による漠然とした「よくなる、よくならない」の予後予測は、長期的には有用であっても、短期的にはあまり当てにならないかもしれない。
今回は、かの有名なTWISTツールによる脳卒中後の歩行自立の予後予測と理学療法士による予後予測の精度を比較した。
その結果として、短期的にはTWISTツールが優れ、長期的にほぼ同等という結果だった。
やはり予後予測は、客観的な予後予測ツールによって、ある程度は機械的に、統制的になされた方が精度は高くなるのかもしれない。
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