Elderspeak。やってません?
📖 文献情報 と 抄録和訳
病院での認知症ケアにおけるケア拒否への修正可能な要因としてのエルダースピークコミュニケーションと痛みの重症度
[背景・目的] ケアの拒否(RoC)は、認知症の人(persons living with dementia, PLWD)が介護者の努力に抵抗したり、反対したりすることで起こる。病院での認知症ケアの改善が求められており、その必要性に応えるための一つの方法は、RoCにつながる要因、特に修正可能な要因を特定することである。エルダースピークコミュニケーションは、ナーシングホームにおけるPLWDのRoCの先行要因として確立されている。本研究の目的は、これらの結果を急性期医療環境に拡大し、看護職員によるエルダースピークコミュニケーションが入院中のPLWDのRoCに及ぼす影響を明らかにすることであった。
[方法] 看護職員とPLWDのケアに関する会話を音声記録し、逐語的に書き起こし、elderspeakの意味的特徴、語用論的特徴、韻律的特徴についてコード化した。RoCの行動は、Resistiveness to Care Scaleを用いてリアルタイムにスコア化された。ベイズ型反復測定ハードルモデルを用いて、elderspeakとRoCの存在および重症度の関連性を評価した。
[結果] 16名のPLWDと53名の看護職員との間で行われた88件のケアに関する会話を音声記録し、RoCを評価した。ほぼ全員(96.6%)が何らかの形でエルダースピークを含んでいた。また、半数近く(48.9%)の看護職員がRoCを実践していた。
エルダースピークが10%減少すると、RoCのオッズが77%減少し(OR = 0.23, 95% CI = 0.03, 0.68)、RoCの重症度が16%減少した(0.84, CI = 0.73, 0.96)。痛みの重症度が1単位減少すると、RoCのオッズが73%減少し(OR = 0.27, CI = 0.12, 0.45)、RoCの重症度が28%減少した(0.72, CI = 0.64, 0.80 )。
[結論] 看護職員によるelderspeakとPLWDによるRoCは急性期医療に広く存在する。痛みとelderspeakは、入院中のPLWDにおけるRoCの2つの修正可能な要因である。入院中のPLWDに対するコミュニケーションの実践と疼痛管理に対応した個人を中心とした介入が必要である。
[臨床意義] 認知症入院患者における介護拒否は、介護スタッフからのelderspeakコミュニケーションを減らし、痛みの程度を軽減することで修正可能である可能性がある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
この論文を読んで驚いたことは、
・ほぼ全職員(96.6%)がエルダースピークをやってしまっている
・エルダースピークが10%減少すると77%の介護拒否リスクが改善される
棚に上げるわけではないが、このSuperHuman、エルダースピークには気をつけている。
「ああ、結構『みんな』やっちゃってるよね」という、隣国の文化を見るような心持ちで読み始めた。
だが、内容を見て、焦った。
「うぉー!!!、やっちゃってるじゃーん!!!」
理学療法士は、とくに『表現の省略』に気をつけた方がいいかもしれない。
「ちょっと膝を失礼しますね」は、なぜ失礼するのか?
検査するのか、ストレッチするのか、筋トレするのか、何をするんだ?
と、患者さんは不安に感じ、それが介護拒否につながる。
さらに、『所為的な態度』には注意が必要だ。
認知症高齢者に、介護拒否が出たとき、どう思う?
誤解を恐れず、多分みんな直感的に頭をかすめる考えが、これだと思う。
「まったく、しょうがない人だな。これは対応無理ですね」
極論、相手が悪い、と思ってしまっていないか。
だが、今回の研究によって恐ろしいデータが出てしまった。
・ほぼ全員がエルダースピークをしている
・エルダースピークは疼痛より介護拒否リスクへの害悪が強い
・エルダースピークが10%減ると77%介護拒否リスクが低減
このデータをまとめると、「介護拒否の大部分がエルダースピークに起因されている可能性」「エルダースピークが撲滅されると、介護拒否が撲滅される」。
所為的→自責的へ。
相手のせいにして、それが正しかったとしても、何も変わってはいない。
だったら、自分の責任の中で関連する部分に極限まで光を当てて、何かを変えられる部分に集中する。
月並みだが、その方が建設的だろう。
理想を妄想するより、現実に建設したい。
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