音楽演奏というリハビリ。回復に豊かな環境を提供する
📖 文献情報 と 抄録和訳
音楽上肢療法は豊かな環境を提供し、脳卒中後の抑うつを軽減する。無作為化比較試験の試み
[背景・目的] 本研究の目的は、Music Upper Limb Therapy-Integrated (MULT-I) を改良し、脳卒中リハビリテーションのための充実した環境を構築し、その生物学的および行動学的効果を家庭用運動プログラム (home exercise program, HEP) と比較することであった。
[方法] 脳卒中後の片麻痺を有する成人30名を対象とした無作為化混合法試験である。生物学的効果として血清中の脳由来神経栄養因子とオキシトシン濃度を測定し、行動学的効果として上肢機能、障害、QOL、感情的幸福を評価した。参加者の経験は、半構造化面接を用いて調査した。
[結果] MULT-I参加者は、HEP参加者と比較して、介入前から介入後までうつ病の減少を示した。脳由来神経栄養因子レベルは、MULT-I参加者では有意に増加したが、HEP参加者では減少し、脳卒中後のうつ病患者を除外しても群間で有意差がみられた。MULT-I参加者は、介入前から介入後にかけて、さらにQOLと自己認識による体力、移動性、活動性、参加性、回復性を向上させた。HEP参加者は上肢の機能を改善した。定性的には、MULT-Iは心理社会的サポートと楽しみを提供し、HEPはリハビリの自己管理をサポートした。
[結論] 音楽を取り入れた環境は実現可能であり、脳卒中後のうつ病を軽減し、脳由来神経栄養因子レベルの増加により回復のための神経環境を強化する可能性がある。HEPによるリハビリの自己管理は、上肢機能をさらに改善する可能性がある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
走る、飛ぶ、叫ぶ。
子供がしたくなることは、脳の奥の、奥深く。
本能に根差した、原始的なプログラムである可能性が高い。
そのプログラムは、人間が生きていく上で必要な機能を、とても自然な形で学ばせる。
たとえばそれは、魚が泳いだり、鳥が飛んだり、ライオンが狩りをしたりするように。
そのひとつに、音楽や、音楽に合わせたダンスがある。
どうして子どもは、あんなに楽しそうに歌うのだろう。
恥ずかしげもなく、踊ることができるのだろう。
そして不思議なことには、それが何に役立つのだろう。
走ること、飛ぶことは敵から逃げる、狩りをするときに有用。
叫ぶことは、仲間を呼んだり、威嚇したりするのに有用。
じゃあ、歌うことや、踊ることは?
分からない。
集団としての、社会的生物としての人間、に役立つ機能なのだろうとは思うのだけれど。
それは、これから勉強していきたい。
とにかく、人間の運動プログラムの中でも原始的なラインナップに「音楽に合わせた運動」がある。
かたや、随意的な上肢の単関節運動などは、かなり表層・枝葉の方、意識的な運動になるだろう。
せっかくなら、幹から大きく揺らしたいじゃないか。
そのためには、運動課題は、もっと震源地の近くに位置する必要がある。
その鍵の1つが、『音楽』だ。
⬇︎ 関連 note✨
■ 音楽を聴くこと演奏することの違い(TED talk)
楽器の演奏は脳にとって「全身運動」に匹敵
脳の脳の全領域が演奏に取り組む(視覚・聴覚・運動領域)
聴くと演奏するの 最も顕著な違い→演奏には右脳と左脳両方で コントロールされる緻密な運動能力が 求められる
また演奏は左脳が深く関わる 言語的 数学的な正確さと 右脳がより得意とする 創作的活動を結びつけもする
これらの理由から 音楽を演奏することで 右脳と左脳の橋渡しをする脳梁の結びつきが強まり活性化しより早く多様なルートで脳の中の情報伝達が促される
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