総腓骨神経の運動学。膝屈曲に伴いどう移動する?
📖 文献情報 と 抄録和訳
膝関節屈曲角度が膝関節後外側角の総腓骨神経の解剖学的コースに及ぼす影響と臨床的意義
[背景・目的] 総腓骨神経(common peroneal nerve, CPN)の解剖学的経過に関する詳細な知識は、膝後外側角(PLC)の外科的治療にとって極めて重要である。目的:異なる屈曲角度におけるCPNと膝関節包の関係を調べること。
[方法] 研究デザイン:記述的実験室研究。方法健康なボランティア10名を募り、膝関節の屈曲角度0°、30°、60°、90°、120°でMRI検査を行った。3つのレベル(関節線、脛骨切断部、腓骨先端部)のMRIスキャンを評価し、(1)CPNからPLCまでの距離、(2)CPNから脛骨前後軸、脛骨内外軸までの距離を決定した。一人の参加者のMRIスキャンから作成した膝関節の3次元モデルを用いて、PLC再建のための腓骨トンネルの作成をシミュレートし、CPN、腓骨トンネル、ガイドピンの関係を調査した。
[結果] CPNは膝関節屈曲角度の増加とともに後内側、下内側に移動した。
屈曲角度の増加に伴い、CPNから前後軸およびPLCまでの距離は有意に増加し、内側-外側軸までの距離は3つの測定レベルすべてにおいて有意に減少した。CPNから膝関節前後軸、内側-外側軸までの距離は、膝関節屈曲角度が異なる測定レベルにおいて有意差が認められた。CPNから脛骨高原の後外側境界までの平均距離には、腓骨先端レベルで屈曲0°と30°の間に有意差はなかった(P = 0.953)。異なる測定レベルにおいて、CPNから脛骨高原のPLCまでの距離には統計的に有意な差があった。3次元モデルは、ガイドピンと骨トンネルに対するCPNの位置が膝関節屈曲時に変化することを示した。
[結論] 膝関節屈曲角度の変化は、膝関節後外側のCPNのコースに対応する変化をもたらした。CPNは膝関節屈曲角度の増加とともに後方+下方+内側に移動した。臨床的意義PLC再建時に膝関節の屈曲角度を大きくすることで、CPNの直接的損傷を効果的に回避できる。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
解剖学の勉強に共通することは何だと思う?
その1つの答えは、『静止画であること』。
いつだって、教科書は静止している、その関節角度が何度であろうとも。
だから、目の前の患者さんを見るときに参照する解剖地図は、目の前の関節が動いても、動かない。
特に、直接的な動力機関(骨格筋)ではない靭帯や神経などの軟部組織についての運動学については、ほとんど知らないと言ってもいい程ではないか?
少なくとも、今回の抄読研究のテーマとなった総腓骨神経の運動学について、僕はほとんど知らなかった。
結果として、膝屈曲角度に伴い後方、下方、内側に移動した。
このような移動は、理学療法士にとっては、軟部組織モビライゼーションや、NMESの電極貼付時の知識として重要となるだろう。
関節の運動は、骨格筋の収縮-弛緩のみならず、骨格筋の位置関係の移動、更には周辺軟部組織の位置関係の移動が起こっている。
言われてみれば当たり前のことだけれど、解剖学を静止画として習ってきた僕たちは、そのイメージを持つ能力に乏しいのではないか。
人体の1つの歯車が動いたとき、その全体も伴って動かざるを得ない。
そのイメージを大切にしたい。
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