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全身振動装置(Whole-Body Vibration)。本当に骨密度を高めるか?

📖 文献情報 と 抄録和訳

閉経後女性の骨密度に対する全身振動の効果:無作為化対照試験の系統的レビューとメタ解析

📕de Oliveira, Regina Dantas Jales, et al. "Effectiveness of whole-body vibration on bone mineral density in postmenopausal women: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials." Osteoporosis International (2022): 1-24. https://doi.org/10.1007/s00198-022-06556-y
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✅ 前提知識:全身振動装置 WBV, whole-body vibrationとは?
・近年,骨粗鬆症の予防や治療の手段として,全身振動刺激を用いた運動療法が注目されている。
・全身振動刺激の特徴は,ニュートンの運動第2法則のF(力)=m(質量) xa (加速度)を利用し,振動により加速度を増加させた状態をつくりだすことで,刺激を受けている者に対して大きな負荷を加えることができることである。
・骨は機械的負荷に適応し, 幾何学的形状および微細構造が変化する。その結果として骨密度が増加し,骨の強度が増加することはよく知られている。
・全身振動刺激は骨細胞によって感知される機械的振動を誘発するため, 骨密度の改善につながると考えられており,特に骨粗鬆症の危険性が高い閉経後女性の骨の健康を改善するための非薬理学的治療として関心が高まっている。

📕佐用寛文, 鈴木淳, and 柳久子. 理学療法学 46.6 (2019): 389-398. >>> doi.

[背景・目的] 本研究では、閉経後女性における全身振動(whole-body vibration, WBV)の骨密度(bone mineral density, BMD)に対する有意な効果を観察し、高頻度、低マグニチュード、高累積投与での高品質なエビデンスを確認した。目的は、過去のシステマティックレビューをメタアナリシスで更新し、閉経後女性のBMDに対するWBVの効果を観察することであった。

[方法] メタ分析では、腰椎、大腿骨頸部、股関節全体、転子、転子間、ウォード部の骨密度(aBMD)、または橈骨、脛骨の体積海綿骨密度(vBMDt)について、WBVと対照群、またはWBVと従来の運動の加重平均差を使用した。方法論の質はPEDroスケールで、エビデンスの質はGRADEシステムで評価した。

[結果] 合計で23件の研究がシステマティックレビューに、20件の研究がメタアナリシスに含まれた。13の研究は、高い方法論的品質を示した。WBVは対照群と比較して、一次解析でaBMDに有意な効果を示した(腰椎と転子部)、感度(腰椎)、側方交互振動(腰椎と転子)、同期振動(腰椎)、低周波と高マグニチュード(腰椎と転子)。高周波・低振幅(腰椎)、高周波・高振幅(腰椎、転子、ウォード部)、高累積・低振幅(腰椎)、低累積・高振幅(腰椎、転子)、膝半屈曲の姿勢(転子)であった。これらの結果のうち、低用量で高頻度、低用量で高累積のものだけが質の高いエビデンスを示していた。

[結論] 現時点では、エビデンスの質が高いことを考慮すると、閉経後女性の腰椎aBMDを改善するために、高周波数(≒30Hz)、低マグニチュード(≒0.3g)、高累積線量(≒7000分)を用いたWBVを推奨することが可能であると言えるだろう。他のパラメータも有望ではあるが、特に高振幅(≧1g)の振動では、場合によっては被験者の安全性を考慮し、よりよく調査する必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

最近、同僚とこんな話をした。

「SuperHumanさん、私今年に入って体重が〇〇kg増えちゃったんですよ。痩せたいんだけど、どうしたら良いと思います?」
「運動することですね❗️」
「そうそう。最近、金に物を言わせてシックスパッドを買って、インスタ見ながらやっているんですよ〜。効果出なかったら業者に文句を言おうと思ってるんですよ♪」
「それじゃ、効果出にくいと思いますよ。やっぱり、Activeな運動を伴わないと」
「・・・。」

以前の抄読の中で、報告されるすべての介入は『生命力パラメータ』を明らかにすべきだ、と主張した。

✅ 生命力パラメータとは?
・全効果量に対する内発的効果の割合(%)。
・この数値が高いほど、当事者の内発的な努力によって得られた効果と解釈できる。
■ 内発的効果とは?
・自分自身の自発的な行動や努力によって得られた効果のこと。
・負荷に打ち勝って筋力を得ることに代表される。
■ 外発的効果とは?
・外的な操作によって得られた効果のこと。
・投薬や外科手術による効果に代表される。

筋の発達を狙う場合には、やはり外発的なものだけでなく、内発的な刺激を伴うべきであることは、直感的にも、文献的にも、そうなのだろうと思う。
詰まるところ、自分で頑張るしか無いのだ、ある程度は。

だが、『骨』となると、少し事情が違うようだ。
骨は、もともと能動性を持たない。
自分の神経指令で緩んだり、縮んだりしない。
ただ、外発的な力学刺激に対して衝撃を受けるか、受けないか。
それが折れの力か圧縮力か。
『自分で引き起こした力学的負荷なのか、外環境が引き起こした力学的負荷なのか』が重要なのかどうか、自分の中で定かではなかった。
そして、本研究によって、「外発的な刺激でも効果がある」ことが明らかになった。
同僚に、『骨を強くするならWBVという機械がお勧めですよ』と紹介してみようと思う。

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