高齢者の感情の起伏。その脳内メカニズムとは?
📖 文献情報 と 抄録和訳
高齢者においてネガティブな社会・情動的事象にさらされると、安静時脳内ネットワークが持続的に変化する
[背景・目的] 高齢者では、基本的な情動機能はよく保たれているように見える。しかし、社会的に否定的な事象に対する反応とその回復については、まだ十分に明らかにされていない。
[方法-結果] 我々は「タスク-レスト」パラダイムを考案し、2つの独立した実験から182名の参加者に、社会的情動ビデオを見せながら機能的磁気共鳴画像法を実施した。自己申告形式で、ビデオに対する気持ちを聞くと、ビデオに対する共感とネガティブな気持ちがほとんど連関しない。すなわち、ネガティブな感情に鈍感といえる結果。
■ 実験1(N = 55)では、若年者と高齢者でタスクを検証し、ネガティブな社会的シーンの後(中ではなく)の安静時に優位となる脳活動および結合度への年齢依存的な効果を明らかにした。
結果の特徴①:高齢者は高感情賦活ビデオに対して、感情に関わる領域の反応は若者と比べて低く、逆に社会性に関わる領域の活動が高い。
結果の特徴②:さらに重要なのは、このネットワークの結合反応がビデオを見終わった後も高齢者で長く続くことで、これにより感情の時間的起伏が抑えられていた。
■ 実験2では、これらの結果を大規模な高齢者コホート(N = 127)で再現し、さらに、感情による後方のデフォルトモードネットワーク-扁桃体結合の変化が、不安、反芻、ネガティブ思考と関連していることを示した。
[結論] これらの知見は、高齢者における共感関連機能の神経ダイナミクスを明らかにし、社会的ストレスの回復不良との関係を理解するのに役立つものです。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
以前の抄読において、高齢者はネガティブな感情に鈍感であることを知った。
今回の研究では、その脳内メカニズムの一端が示された。
その結果、脳活動箇所と強度の違いも少しはみられたが、大きく違うところとして「感情賦活の加速度」があった。
つまり、若者では急激に感情が賦活され、急激に戻る、急峻な軌跡を辿る。
一方で、高齢者では賦活された感情が、緩やかに戻っていく、なだらなか坂道となる。
それによって、感情への知覚が変わってくるのではないか、ということだ。
AASJの考察では「まさに、emotional inertia として知られる、感情変化への抵抗性が高齢者に存在することがわかる。この結果は、ネガティブ感情を強く抱かないという自己申告結果と一致している。」と述べられており、emotional inertiaという言葉は覚えておきたい。
これまでの人生経験によって獲得されてきた「ブレーキ」なのだろうか。
何にせよ、日々関わっている高齢者の感情対処の仕組みだ。
よく覚えておきたい。
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