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“筋温の上昇”が骨格筋収縮にもたらす影響


📖 文献情報 と 抄録和訳

受動的に上昇する筋温が収縮機能に及ぼす潜在的な役割

📕Rodrigues, Patrick, et al. "Potential role of passively increased muscle temperature on contractile function." European Journal of Applied Physiology (2022): 1-10. https://doi.org/10.1007/s00421-022-04991-7
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[レビュー概要] 筋力、パワー、収縮機能の低下は、高齢者、臨床集団、運動不足の人、負傷したアスリートで観察されることがある。受動的加温(温浴、サウナ、加温衣など)は、骨格筋の治療など健康目的に使用されてきた。受動的加温による筋温の急性上昇は、随意的な力発現速度と電気的誘発収縮特性(すなわち、ピークトイッチトルクまでの時間、ハーフリレーション時間、電気機械的遅延)を増加させることができる。受動的加温後の筋温上昇に伴う力発生速度と誘発収縮評価の向上は、筋収縮の増強における周辺機構の潜在的役割を明らかにした。

📕図の引用論文
Heinonen et al. (2011) J Appl Physiol 111:818–824. >>> doi.

このレビューは、骨格筋細胞に対する急性の受動的加温刺激が収縮機能を向上させる潜在的な役割を要約し、議論し、強調することを目的としたものである。

■筋温上昇→筋収縮特性変化のメカニズム①:カルシウム代謝(放出/再取得)の増加

・筋温の受動的上昇によって引き起こされるCa2+動態の増加(放出/再取り込み)の概念図。
・矢印は、筋小胞体からリアノジン受容体(RyR)および一過性受容体電位バニロイド1(Trpv1)チャネルを経て筋小胞体へのCa2+の流れの増加を示す。
・しかし、筋小胞体のCa2+放出がRyRとTrpv1によって引き起こされるのか、Trpv1単独で引き起こされるのかは不明である。
・筋小胞体のCa2+はアクチンとミオシンヘッドの間の部位のブロックを解除し、クロスブリッジ形成を増加させる。
・その後、筋小胞体Ca2+ ATPase (SERCA)チャネルがCa2+を筋小胞体に戻す。

■筋温上昇→筋収縮特性変化のメカニズム②:筋線維の変形

・温度中性および受動的加温状態における収縮中の筋線維形状の変化を仮に模式的に表したもの。
・赤丸は筋線維の断面積、青点は筋内液貯留を示す。
・サーモニュートラル状態では、収縮中、筋線維は厚み方向に圧縮される傾向があり、半径方向(すなわち幅方向)に拡大する筋の形状を変化させる
・受動的加温セッションの後、筋温と筋液が上昇すると、細胞内の筋液が非圧縮性であるため、筋細胞の圧力が上昇し、収縮時の筋線維の変形が減少し、バネのような性質が生じる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ウォーミングアップして、身体が温まると動きやすくなる。
冬は、身体が動きにくくなる。
さて、なんで?

こんなシンプルでありふれた疑問にも、しっかり答えることはなかなかに難しい。
今回の抄読文献は、この疑問に対して幾つかの答えを与えてくれた。
個人的にとくに面白かったのは後者のメカニズムだ。
筋線維の変形により内圧が変化することで、筋のバネとしての働きが増大するという。

こういう仕組みを知るということは、何に役立つのかは置いておいて、まず面白い。
勉強することの帰結の1つを、こういう面白さに置きたい。

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