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可動域全体における肩関節のモーメントアーム


📖 文献情報 と 抄録和訳

解剖学的肩の三次元連続筋モーメントアームマップ

📕Axford, David T., et al. "Three-dimensional continuous muscle moment arm maps for the anatomical shoulder." Journal of Biomechanics (2025): 112561. https://doi.org/10.1016/j.jbiomech.2025.112561
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[背景・目的] 筋肉のモーメントアームは、その機械的利得を表し、関節の動作と回転安定性における役割を示す。本研究の目的は、生体外シミュレータを使用して、連続的な可動域における8つの主要な肩の筋肉のモーメントアームをマッピングすること。

[方法] 三角筋(前部、中部、後部)、肩甲下筋(下部および上部)、棘上筋、棘下筋、小円筋の三次元モーメントアームは、腱の移動法を用いて8人の被験者(57±6歳)で測定された。

✅ 可動域全体における計測とは?
・肩関節の運動は、以下の3つの回転軸(自由度)に沿って実施されている
・外転、内転
・水平屈曲、水平伸展
・内旋、外旋
研究では、これら3つの軸すべての組み合わせで肩を動かし、筋のモーメントアームを測定している。

[結果]
■ 可動域全体における肩関節のモーメントアーム:外転-内転

・外転:三角筋前部, 三角筋中部, 棘上筋
・内転:三角筋後部, 小円筋
・棘上筋は外転に対して大きなモーメントアーム+

■ 可動域全体における肩関節のモーメントアーム:水平屈曲-水平伸展

水平屈曲:三角筋前部, 肩甲下筋上部
水平伸展:三角筋後部, 棘下筋, 小円筋
棘上筋は前方挙上面では水平伸展, 後方挙上面では水平屈曲という「双相機能(biphasic function)」を示す

■ 可動域全体における肩関節のモーメントアーム:内旋-外旋

内旋:肩甲下筋下部, 肩甲下筋上部, 三角筋前部
外旋:三角筋後部, 棘下筋, 小円筋
棘上筋は前方挙上面では内旋, 後方挙上面では外旋という「双相機能(biphasic function)」を示す

[結論] 各筋肉は多面的な機能を持っており、下部の棘下筋を除くすべての筋肉において、腕の向きによってその機能は大きく変化する。本研究で作成された筋肉モーメントアームマップは、肩の主要な8つの筋肉の三次元機能に関する現在の理解を深めるものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

これまでも肩関節のモーメントアームは報告されているのに、なぜ今更?
今回の抄録研究を見て最初に思ったことは、これだった。
この研究の新奇性は何か・・・。
それは、『可動域全体におけるモーメントアーム』を測定していること。
今回示した図で言えば、黒のアスタリスクが示すものだ。

モーメントアームの理解が難しいのが、関節角度によって変化することだ。
例えば、今回の研究で示されたように、棘上筋は前方挙上面では水平伸展方向のモーメントアームを持ち、後方挙上面では水平屈曲方向のモーメントアームを持つ。
この部分の理解が、イメージもしにくいし、データとしても追いにくかった。
それを、今回の研究においては明らかにしている。
そして、そのような関節角度により運動方向成分が変わることを「双相機能(biphasic function)」という言葉が示すことを学んだ。
双相機能、かっこいい名前である、ドヤりながら使っていきたい。笑

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