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世界の脳卒中をめぐる事実(2025年)
📖 文献情報 と 抄録和訳
世界脳卒中機構:2025年世界脳卒中ファクトシート
📕Feigin, Valery L., et al. "World Stroke Organization: Global Stroke Fact Sheet 2025." International Journal of Stroke (2025): 17474930241308142. https://doi.org/10.1177/17474930241308142
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[背景・目的] 非感染性疾患(NCD)の中でも、脳卒中は依然として世界で2番目に多い死因であり、障害調整生命年(DALY)で表される死因および障害原因の合計では3番目に多い原因となっている。目的:本研究は、1990年から2021年までの脳卒中とその危険因子による世界、地域、各国の負担を推定することを目的とした。
[方法] 本論文で提示された結果は、主に『The Lancet Neurology』2024:23:973-1003に掲載された脳卒中負担に関する「Global Burden of Disease 2021 Study」から導き出された。
[結果]
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1. 脳卒中の世界的負担
- 死亡原因として2番目:脳卒中は、非感染性疾患(NCDs)の中で2番目に多い死亡原因である。
- 死亡と障害の合計で3番目:障害調整生命年(DALYs)で測ると、脳卒中は世界で3番目に大きな負担をもたらす。
- 年間発生件数:1200万件の新規脳卒中が発生。
- 年間死亡数:700万件の死亡。
- 脳卒中の後遺症を持つ患者数:9400万人が影響を受けながら生存。
2. 経済的コスト
- 2017年の脳卒中のコスト:8,900億米ドル。
- 2050年の予測コスト:1.6兆米ドルに達する可能性がある。
- 予防の経済効果:1米ドルを予防に投資すると、10米ドルのリターン(ROI)が見込まれる。
3. 地域ごとの脳卒中負担
地域別の障害調整生命年(DALYs, 100万年単位)
- アメリカ:11.4
- ヨーロッパ:18.7
- アフリカ:17.3
- アジア:112.8(最も負担が大きい)
4. 年齢と脳卒中
- 4人に1人が生涯で脳卒中を経験する。
- 53%の脳卒中は70歳未満の人に発生。
- 89%の脳卒中負担は低・中所得国(LMICs)に集中。
5. 予防可能なリスク要因
脳卒中の80%以上は修正可能なリスク要因によるものであり、以下の10項目が主要因となっている:
1. 高血圧(57%):脳卒中最大のリスク因子。
2. 大気汚染(17%):特に屋外の汚染が影響。
3. 喫煙(14%):主要な行動リスク。
4. 高LDLコレステロール(13%)。
5. 家庭内空気汚染(11%):特に発展途上国で問題。
6. 高塩分摂取(11%):食事によるリスク。
7. 高血糖(10%):糖尿病との関連。
8. 腎機能障害(9%)。
9. 果物・野菜不足(6%)。
10. アルコール摂取(5%)。
[結論] この世界脳卒中機構(WSO)の「2025年世界脳卒中ファクトシート」は、社内外のすべての利害関係者とのコミュニケーションに役立つ最新情報を提供している。すべての統計は、WSO執行委員会および「Global Burden of Disease」研究グループのリーダーにより、使用が承認されている。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
「脳卒中には気をつけた方がいいですよ。」
そう言われても、あまりピンとこない。
特に、若年者にとっては「まあ、おいおいね」という感じだろうと思う。
だが、今回のインフォグラフィックを目にしてもまだ、そのような感覚を持つだろうか。
今回の抄読論文は、Lancet誌の報告に基づき、脳卒中の世界的負担をはじめとした事実を、実にわかりやすい図とともに伝えてくれた。
僕にとって、特に目を引かれたのは、『年齢と脳卒中』の部分だった。
「4人に1人が生涯で脳卒中を経験する」→え、思ったより多いですね。
「53%の脳卒中は70歳未満の人に発生」→えっ、若年〜中年者でも結構発生する可能性があるのですね。
そして、予防可能なリスク因子の部分を見ると、まあ自分に当てはまるものもあるわけだ。
危機感を焚きつけられる図であり、論文であった。
脳卒中予防の啓発ポスターとして、有用なものではないだろうか。
視覚の驚愕は、網膜を驚かせるだけでなく、思想をさえ変化させるものらしい。
司馬遼太郎 峠(上)
⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨
📕世界の脳卒中をめぐる事実
— 理学療法士_海津陽一 Ph.D. (@copellist) March 1, 2025
・主にThe Lancet Neurology(2024)の結果をReview & Infographic化
🔹脳卒中の世界的負担, 経済的コスト, 地域ごとの負担
年齢と脳卒中, 予防可能なリスク要因
“4人に1人が生涯で脳卒中を経験する” はインパクト大きいですね
脳卒中予防の啓発ポスターに使えそうです😲 pic.twitter.com/tWHiWP44YE
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