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急性サルコペニア。入院中に発症するサルコペニア


📖 文献情報 と 抄録和訳

急性サルコペニア:入院中の発症率と筋パラメータの変化に関するシステマティックレビューとメタアナリシス

📕Aldrich, Luke, et al. "Acute Sarcopenia: Systematic Review and Meta‐Analysis on Its Incidence and Muscle Parameter Shifts During Hospitalisation." Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle (2024). https://doi.org/10.1002/jcsm.13662
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✅ 前提知識:急性サルコペニアとは?
・定義:急性サルコペニア(acute sarcopenia) は、疾患や怪我などの医学的出来事に続いて発症する、筋肉健康の急激な悪化を指す。この状態は、6か月未満の短期間で進行するものであり、急性期の病気や負傷に続いて発生する。
・今回のメタアナリシスでは 入院中に発生した急性サルコペニア に限定して調査が行われた。
・具体的には、入院患者を対象に、入院中の急性疾患や外傷に続いて発生する筋力、筋量、筋肉の質や機能の変化を評価した。

[背景・目的] 急性サルコペニアとは、通常、急性疾患または外傷に続発するサルコペニアで、6か月未満持続するものを指す。 慢性サルコペニアに進行すると、患者の回復や生活の質に影響を及ぼす可能性がある。 しかし、特に入院中の急性サルコペニアの発症や評価については、まだ十分に解明されていない。 本システマティックレビューでは、急性サルコペニアの発症率を解明し、入院中の筋パラメータの変化を調査することを目的とした。

[方法] 88件の論文がナラティブ・シンセシスに含まれ、そのうち33件は、入院が握力(HGS)、大腿直筋の断面積(RFCSA)、およびさまざまなø筋機能検査に及ぼす影響に関するメタ分析用のデータを提供した。すべてのメタ分析について、入院期間(LoS)と年齢についてメタ回帰分析を実施し、HGSについては性別も考慮した。

[結果] 急性のサルコペニア発症は、入院中の4件の研究で評価され、発症率は18%であった。発症率は集中治療室の患者で最も高く(59%)、内科および外科の患者では低かった(15%~20%)

筋力低下の発症時期は4日から44日であった。HGSは入院中安定していた(SMD=0.05、95%CI=−0.18:0.28、p=0.67)が、膝伸展筋力も同様であった。LoSはHGSのパフォーマンスに影響を与えたが(θ=0.04、95% CI=0.001:0.09、p=0.045)、年齢(p=0.903)および性別(p=0.434)は影響を与えなかった。RFCSAは3~21日で16.5%減少した(SMD = -0.67、95% CI = -0.92: -0.43、p < 0. 001); ロスまたはスキャン間の時間は、減少を有意に予測した(θ=−0.04、95% CI=−0.077:−0.011、p=0.012)。筋力の指標も減少した。 6分間歩行(p=0.22)、TUG(p=0.46)、歩行速度テスト(p=0.98)では変化は見られなかった。タイムドアップアンドゴーのパフォーマンスの唯一の有意な予測因子は年齢のみであった(θ=−0.11、95% CI=−0.018:−0.005、p=0.009)。

[結論] 臨床現場における急性サルコペニアの評価と理解は限られている。発生率は臨床条件によって異なり、筋パラメータはそれぞれ異なる影響を受ける。HGSおよび筋機能検査は、入院中の急性変化を特定するには感度が十分でない可能性がある。現在、入院後の回復、生活の質、健康全般に影響を及ぼす筋力の低下が過小診断されている可能性がある。急性サルコペニアの既存の診断基準の妥当性を判断するには、さらなる評価が必要である。入院患者の筋力評価では、筋肉量と質の指標を主な決定要因とする必要があるかもしれない。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

リハビリテーション病院に勤務する医療者として、最も避けたいことは何か。
それは、「入院中に患者さんが悪化してしまう」ということだ。
入院時点と比較して、1週間後、2週間後、筋萎縮が進んでしまう、パフォーマンスが低下してしまう、ということが起こってしまうことは、ことさらに自分自身の力不足を感じさせる。

今回の抄読研究は、入院後に発症する急性サルコペニアの有病率を調査した。
その結果、全般として『18%』と、5人に1人くらいは急性サルコペニアを発症することが明らかとなった。
特に、集中治療室への入院患者において著しくリスクが高い(58%)
理学療法士として、この急性サルコペニアの発症率を少しでも下げられるように、勉強し、行動していきたい。

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