心より環境を変えよ。座位を激減, Standing Deskの威力
📖 文献情報 と 抄録和訳
オフィスワーカーの座位時間短縮と健康増進のための介入の有効性:3群クラスター無作為化比較試験
📕Edwardson C L, Biddle S J H, Clemes S A, Davies M J, Dunstan D W, Eborall H et al. Effectiveness of an intervention for reducing sitting time and improving health in office workers: three arm cluster randomised controlled trial BMJ 2022; 378 :e069288 https://doi.org/10.1136/bmj-2021-069288
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[背景・目的] 高さ調節可能な机を使用した場合と使用しない場合の、毎日の座位時間に対する介入の有効性を評価し、2つの介入の相対的有効性と、身体行動および身体、生化学、心理、仕事関連の健康・パフォーマンスの成果に対する両介入の有効性を検討すること。
[方法] クラスター3群ランダム化比較試験で、3ヶ月と12ヶ月のフォローアップを実施。設定:イギリスのレスター、リバプール、グレーターマンチェスターの地方政府議会。参加者:レスターの2つの地方自治体、グレーター・マンチェスターの3つの地方自治体、リバプールの1つの地方自治体の、オフィス、部署、またはチームに所属するデスクワークの従業員756人を含む78クラスタが参加。介入:クラスターは、SMART Work and Life(SWAL)介入、SWAL介入と高さ調節可能なデスク(SWALプラスデスク)、対照(通常の実践)の3条件のいずれかに無作為に振り分けられた。
✅ SWAL介入とは?
- SWAL介入は、社会的認知理論、組織開発理論、習慣理論、自己規制理論、再発防止理論に基づいたものである。
- この介入には多面的な戦略(組織、環境、個人、グループ)が含まれ、行動変容の車輪の原理と関連するCOM-B(能力、機会、動機、行動)アプローチを利用している。
主要アウトカム指標:主要アウトカム指標は、12ヶ月のフォローアップにおける、加速度計で評価した毎日の座位時間であった。副次的アウトカムは、加速度計で評価した座位、長座位、立位、足踏み時間、有効日、勤務時間、勤務日、非勤務日において算出した身体活動、自己報告によるライフスタイル行動、筋骨格問題、心代謝系健康マーカー、仕事に関連した健康とパフォーマンス、疲労、心理尺度であった。
[結果] 参加者の平均年齢は44.7歳、72.4%(n=547)は女性、74.9%(n=566)は白人であった。12ヶ月時点での毎日の座位時間は、対照群と比較して介入群で有意に低かった(SWAL -22.2 分/日、95%信頼区間 -38.8~-5.7 分/日、P=0.003; SWAL plus desk -63.7 分/日、 -80.1~-47.4 分/日、P<0.001)。SWAL+デスク介入はSWALよりも座位時間の変化に有効であることがわかった(-41.7 min/day、-56.3 to -27.0 min/day、P<0.001)。両介入群とも、3ヶ月および12ヶ月の追跡調査における座位および長座位時間、SWAL+机群では立位時間において、勤務時間中および勤務日の好ましい差異が観察された。両介入群とも、ストレス、ウェルビーイング、活力の小さな改善と関連し、SWAL+デスク群では、下肢の痛み、職場での座り方・立ち方に関する社会規範、サポートの改善と関連していた。
[結論] SWALとSWALプラスデスクは共に座位時間の短縮と関連していたが、高さ調節可能なデスクを追加した方が3倍効果的であることが分かった。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
人間の関わることには、『変化の順番』があると思っている。
✅ 変化の順番
- Phase0. 望む環境を選択する:例. スポーツジムに行く
- Phase1. 機能需要が変化する:例. 筋トレをして筋に対して機械的負荷が加わる
- Phase2. 可逆的な変化が生じる:例. その筋の神経ドライブが強化され筋力が向上する
- Phase3. 不可逆的な変化が生じる:例. その筋が構造的に肥大し筋力が向上する
そのことはじめに、『環境』がある。
『心』自体を変えようと思っても、なかなか難しい。
威力が大きいのは、目的から逆算して、「そうしたくなる気持ちを起こさせる環境をつくる」こと。
かの孟子の母は、賢明な人だった。孟子が望ましい行動をするのに、孟子自体の心を直接的に変えようとするのではなく、その環境を変えたのだ。
✅ 孟母三遷の教え
- 孟子は幼いときに父親を失い、母親一人の手で育てられた。
- 最初墓の近くに住んでいたが、息子が葬式の真似ばかりするので教育上好ましくないと母親は思い、市場の近くに引っ越した。息子は今度は商人の真似ばかりして遊んでいる。やはりここも好ましくないと思った母親は、今度は学校の近くに引っ越した。すると息子は祭礼の道具を並べて、儀式の真似をして遊ぶようになった。
- 母親はこここそ息子の教育にふさわしい場所だといって、初めて安心して住まいを構え住みついたという。
🌍 参考サイト >>> site.
そして、今回抄読した論文も、その真理を浮き彫りにした。
心への介入(SWAL介入)より、環境への介入(Standing Desk)の方が3倍威力が大きかったのだ。
この考え方は、身体活動量以外にも活用できる。
たとえば、スティーブ・ジョブズは職員のコミュニケーションを増やしてイノベーションを生むために、トイレをたった1つにして、エントランスのど真ん中に置いた。
目的が明確にあるなら、
心を変えようとする前に、
最良の環境をつくろう
人の心は多分、水のようなもので、直接掴もうとしても逃げてしまうが、深く掘られた水路には従順に従う。その水路が自然的なものか、人工的なものかは関係ないらしい。
真に、人が変わることをしたい。
水は方円の器に随う
老子
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