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屋外の住宅改修、あなどらないでね。

📖 文献情報 と 抄録和訳

住宅改修と障害の転帰。イングランド在住の高齢者を対象とした縦断的研究

📕Chandola, Tarani, and Patrick Rouxel. "Home modifications and disability outcomes: A longitudinal study of older adults living in England." The Lancet Regional Health-Europe (2022): 100397. https://doi.org/10.1016/j.lanepe.2022.100397

🔗 DOI, Google Scholar, 日経メディカル

🔑 Key points
- 香港大学のTarani Chandola氏らは、イングランド在住の高齢者を対象として、運動障害のある人とない人の住居の住宅改修が、転倒や疼痛、健康状態などに及ぼす影響を検討し、屋外の住宅改修の方が屋内の住宅改修より高齢者の自立にもたらす利益は大きいと報告した。

[背景・目的] 背景高齢者の障害に対する住宅改修の保護効果に関する証拠は限られている。我々は、イングランドに住む高齢者において、住宅の外部および内部の改修がさまざまな障害転帰のリスクを低減させるかどうかを調査した。

[方法] 調査方法我々は、2002/03年に募集されたEnglish Longitudinal Study of Ageingの60歳以上の高齢者を分析した。この縦断的サンプルは、6波にわたる10,459人の32,126回の繰り返し観測からなり、平均追跡期間は11~13年であった。参加者は、自宅の外壁(広がった出入り口、スロープ、自動ドア、駐車場、リフト)および内部(手すり、浴室/キッチンの改造、椅子リフト)の住宅改修の有無を尋ねられた。移動障害は、歩く、登る、立ち上がる、手を伸ばす、持ち上げるなど10の動作における困難さを報告することで測定された。障害の主要な危険因子をコントロールした二元固定効果モデルを用いて、5つの障害結果(過去2年間の転倒、痛み、自己評価の低い健康状態、社会的活動の欠如、今後2年以内の自宅移転)について分析した。

[結果] 移動障害の程度が高いほど、転倒、痛み、自己評価による健康状態の悪化の確率が高くなったが、この効果は屋外の住宅改修によって有意に緩和された。重度の移動障害を持つ高齢者において、屋外の住宅改修は、転倒の確率を3%(1%~6%)、痛みを6%(4%~8%)、健康不良を4%(2%~5%)減少させることが示された。さらに,移動に障害のない人でも,屋外の住宅改修によって,社会的活動をしない確率が6%(5%~7%),家を引っ越す確率が4%(2%~5%)減少した.屋内の住宅改修は、障害アウトカムに対して同様の効果を示したが、一貫性はなかった。

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✅ 図. 転倒、体調不良、痛み、社会的活動の欠如、転居の予測確率を、移動障害と屋外の住宅改修状況別に示した(経時的に示したグラフではないので注意)

[結論] 屋外の住宅改修は、さまざまな障害の結果に対して保護するという強い証拠があった。高齢者集団における障害の軽減に関する研究では、健康的な加齢を促進するための重要な介入として、住宅改修の役割を検討する必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

家屋改修というと、まず屋内に目を向けてしまう気がする。
まず、最も基盤となるのが屋内生活だと捉えるからだ。
その結果、屋外の改修に対しては、臨み方も対応の仕方も手薄になりやすいのではないか。
「あとは、訪問リハをやりながら活動範囲を広げていきましょう」のように。
後続走者に、過度な期待をして。

今回の抄読研究により、屋外の住宅改修が5つの障害(過去2年間の転倒、痛み、自己評価の低い健康状態、社会的活動の欠如、今後2年以内の自宅移転)を保護する効力が大きいことが明らかとなったわけだが、この結果はもう少し因数分解できる気がする。

まず、住宅改修に至るまでの背景を整理する。
登場人物。
大きく、①医療者(医師、ソーシャルワーカー、セラピスト、ケアマネなど)、②患者・家族の大きく2区分に分かれる。
そして、住宅改修に至る経路として、②が希望する場合(患者先行型)と①が希望する場合(医療者選考型)がある。
患者先行型の屋外の住宅改修だった場合には、もともとその患者が屋外の活動機会を持っていた可能性が高く、医療者の対応が影響を及ぼした側面は少ないだろう。
一方、医療者専攻型の場合には、今までなかった屋外の活動機会を医療者が提案する形になっており、影響を及ぼした側面が大きいと言える。

次に、住宅改修後の影響について整理する。
ここには、患者先行型と環境先行型がありそうだ。
患者先行型とは、もともと屋外の活動への意志はあったが、環境上の障壁があって阻害されていた、それが解放されたという形式(AP-Barrierの除去;例はnote参照)

一方、環境先行型とは、つくられた環境が屋外活動への意志をつくり出すという形式(AP-Triggerの創造;例はnote参照)。たとえば、犬を飼ったことによって犬の散歩に行かなきゃならないので屋外活動をする、というような感じで。

上記で示した更なる下位項目がありそうで、今後の研究課題となろう。
いま言えることは「屋外の住宅改修を侮ってはいけない」、ということ。
その改修は、患者の未来の活動を創造する、人生を変える一手になっているかもしれない。

私たちが建物をつくる。その後は建物が私たちをつくる
チャーチル

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