とはいえ、過剰摂取にはご注意を!ビタミンD過多は転倒リスクを増加させる
▼ 文献情報 と 抄録和訳
転倒の種類に対するビタミンD補給の効果
Wanigatunga AA, Sternberg AL, Blackford AL, Cai Y, Mitchell CM, Roth DL, Miller ER 3rd, Szanton SL, Juraschek SP, Michos ED, Schrack JA, Appel LJ; STURDY Collaborative Research Group. The effects of vitamin D supplementation on types of falls. J Am Geriatr Soc. 2021 Oct;69(10):2851-2864.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
✅ キーポイント
- ほとんどのビタミンDサプリメント試験では、高用量のビタミンDサプリメントは転倒を予防しないことが報告されている。
- 今回の結果は、高用量のビタミンDが特定の転倒タイプのリスクに異なる影響を与える可能性を示唆している。
- 1000~4000IU/日のビタミンD投与は、200IU/日の対照群と比較して、骨折を伴う転倒のリスクを増加させるが、その割合は増加しないことが観察された。
- この論文は、ビタミンDを1000 IU/日以上投与すると、骨折を伴う初回の転倒のリスクが高まるのではないかという懸念を提起している。
[背景・目的] ビタミンDの補給が、特定の転倒のサブタイプや後遺症(骨折など)を予防するかどうかを評価すること。
[方法] デザインSTURDY(Study to Understand Fall Reduction and Vitamin D in You)の二次解析(応答適応型無作為化臨床試験)。地域に根ざした2つの研究施設。参加者は70歳以上で転倒リスクが高く、ベースラインの血清25-ヒドロキシビタミンDレベルが10~29ng/mlの被験者68人。介入方法は、ビタミンD3を200IU/日(コントロール)、1000IU/日、2000IU/日、4000IU/日のいずれかで投与。アウトカムは、転倒の繰り返しと、結果的に転倒したもの、負傷したもの、救急搬送されたもの、骨折したもの、屋内または屋外で発生したものであった。
✅ 抄読の際の用語の定義:転倒の定義
・Consequential falls:転倒が原因で負傷したり、医療を必要としたりすること
・Injurious fall:身体の一部に何らかの傷害が生じた場合
・Fall with emergency care:緊急治療を伴う転倒(緊急治療センター、救急部、または病院で治療を受けることになった転倒)
・Fall with fracture:骨折を伴う転落(鼻の骨折を含む体の一部の骨折
・Indoor fall:屋内での転倒
・Outdoor fall:屋外での転倒
[結果] 多重比較調整後、転倒による骨折のリスクは、対照群に比べて高用量(1000 IU/日以上)のプール群で高かった(ハザード比[HR]=2.66、95%信頼区間[CI]:1.18-6.00)。多重比較調整後には統計的に有意ではなかったが、屋外で初めて転倒するまでの時間は、4つの用量グループ間で異なるようであった(全体的な差の未調整p=0.013、調整p=0. 222)、対照群に対して1000IU/日群で39%(HR=0.61、95%CI:0.38-0.97、未調整p=0.036、調整p=0.222)、2000IU/日群で40%(HR=0.60、95%CI:0.38-0.97、p=0.037、調整p=0.222)、それぞれ初回の屋外転落のリスクが低かった。
✅ ビタミンDの通常(200 IU/day)と過剰投与(Pooled higher doses)による転倒数の推移
無作為化された全688名の全追跡期間における転倒の累積を転倒の種類別に示した。各対の線は,無作為化後の数か月間に発生した,指定された種類の転倒の累積を治療群別に示している。プールされた高用量には、1000、2000、または4000IU/日に無作為化された参加者が含まれる。
[結論] ビタミンDの補給量が1000 IU/日以上であれば、転倒部位や骨折リスクに応じて転倒リスクに差が生じる可能性があり、その中でもビタミンDの補給量が1000~4000 IU/日であれば、骨折を伴う初回転倒のリスクが高まる可能性があるという最も確実な知見が得られた。タイプ1エラーの可能性を考慮して、再現実験を行うことが望まれる。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
過ぎたるはなお及ばざるがごとし
孔子
フードファディズム(Food faddism)という言葉がある。
これは、「健康や病気に対する栄養の影響を過大に信じること」、あるいは「その支持者が熱狂的に取り入れた食行動の異常なパターン」と定義される。
✅ Related research
高橋久仁子. 群馬大学教育学部紀要 43 (2008): 175-183. >>> pdf
僕たちは、何かがいいと聞くと、子どもが書いた世界地図みたいに、偏った世界観を作ってしまう。
納豆がいいとテレビで放送されれば、スーパーから納豆がなくなり、バナナがいいとされれば、バナナがなくなる。
乳製品やビタミンDがいい(昨日のあり参照)と聞けば、サプリメントによる過剰摂取に走ってしまうかもしれない。
だが、本研究で示されたように、過剰は害悪を生む。
1つの鍵は、自然食を用いる、という部分にあるのかもと思った。
偏りそうになったら、中庸、中庸・・・。
★ 昨日のあり ↓↓↓
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