NBA選手のアキレス腱断裂。記憶より記録に残る傷害ビデオ分析
📖 文献情報 と 抄録和訳
全米バスケットボール協会選手におけるアキレス腱断裂のメカニズム
[背景・目的] National Basketball Association(NBA)内で発生したアキレス腱(Achilles tendon, AT)損傷について、オンラインデータベースの系統的検索を行った。
[方法] 競技中に発生した傷害のビデオを入手し、Dartfishで分析するためにダウンロードした。
[結果] 30年間(1991~2021年)の間にAT断裂を起こしたNBA選手(n=27)が特定された。AT破裂が見つかった27人のNBA選手(平均年齢:29.3[3.3]歳;平均NBA在籍期間:8.5[3.8]年)のうち、15人の試合中のビデオを入手して解析した。12/13例で非接触型破裂が発生したと推定された。13人中8人が受傷時にボールを保持していた。13人全員の受傷肢の足関節は、受傷時に背屈した状態(47.9°[6.5°])であった。13名の選手全員が受傷時に、受傷肢の重心より後方に一歩踏み出した後に前方に移動するフォルスステップメカニズムを行っていた。
[結論] AT破裂を起こしたNBAバスケットボール選手は、受傷時に足首を背屈させた状態でフォルスステップを開始するなど、一連の事象を明確に示しているようであった。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
しばしば語られる名言。
確かに、記憶に残る選手というのは、いつまでも語られ、人々の中で生き続けるだろう。
だが、『傷害メカニズムを分析する』となると、記憶を頼りにするわけにはいかない。
記憶という曖昧なものではなく、明確な記録こそが求められる。
そうなったとき、プロスポーツというのは傷害メカニズムの分析にうってつけだ。
なぜなら、常に『テレビ放送』されているから。
そのビデオの解析が、技術上精緻に可能になったとしたら・・・。
それが、最近可能になってきたのだ。
その研究の1つが、今回のビデオ分析研究だ。
驚いたのは、角度算出まで可能という点。
角度算出まで可能ならば、かなりの分析が可能になる。
そして、今回『フォルスステップ』というアキレス腱断裂を引き起こしやすいステップが明らかにされた。
このように明確な受傷起点が示されると、それを防ぐための対策を講じやすい。
どうやら、傷害メカニズムの解明においては、『記憶よりも記録に残る選手』が重宝されそうだ。
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