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NBA選手のアキレス腱断裂。記憶より記録に残る傷害ビデオ分析

📖 文献情報 と 抄録和訳

全米バスケットボール協会選手におけるアキレス腱断裂のメカニズム

📕Petway, Adam J., et al. "Mechanisms of Achilles Tendon Rupture in National Basketball Association Players." Journal of Applied Biomechanics (2022): 1-6. https://doi.org/10.1123/jab.2022-0088
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[背景・目的] National Basketball Association(NBA)内で発生したアキレス腱(Achilles tendon, AT)損傷について、オンラインデータベースの系統的検索を行った。

[方法] 競技中に発生した傷害のビデオを入手し、Dartfishで分析するためにダウンロードした。

✅ ビデオ解析の方法詳細
・各ビデオは、ハイパフォーマンススポーツとバスケットボールのバイオメカニクスを専門とする3人の審査員(Petway、Epsley、Anloague)により審査された。
・各ビデオはインデックスフレーム(すなわち、損傷事象の前のフレーム)を特定するために100分の1秒単位で静止画を取得した。インデックスフレームは、下肢の関節角度を測定するために使用された。
・測定は、受傷時に後肢(受傷肢)の足首を最終背屈させた瞬間に行った。
・それぞれの状況について、AT断裂に至る一連の動作について、明確な時間点を分析した。
・選手の動作は、負傷した脚の足首、膝、股関節の可動域、負傷していない脚の股関節と膝、股関節と体幹の角度によって分類された。
・また,解析のために,受傷脚の足関節背屈角度と非受傷脚の膝関節屈曲角度,股関節に対する体幹角度の3つの関節角度を取得した.

[結果] 30年間(1991~2021年)の間にAT断裂を起こしたNBA選手(n=27)が特定された。AT破裂が見つかった27人のNBA選手(平均年齢:29.3[3.3]歳;平均NBA在籍期間:8.5[3.8]年)のうち、15人の試合中のビデオを入手して解析した。12/13例で非接触型破裂が発生したと推定された。13人中8人が受傷時にボールを保持していた。13人全員の受傷肢の足関節は、受傷時に背屈した状態(47.9°[6.5°])であった。13名の選手全員が受傷時に、受傷肢の重心より後方に一歩踏み出した後に前方に移動するフォルスステップメカニズムを行っていた。

[結論] AT破裂を起こしたNBAバスケットボール選手は、受傷時に足首を背屈させた状態でフォルスステップを開始するなど、一連の事象を明確に示しているようであった。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

私は記録に残る選手になるより、記憶に残る選手になりたい
中畑清

しばしば語られる名言。
確かに、記憶に残る選手というのは、いつまでも語られ、人々の中で生き続けるだろう。
だが、『傷害メカニズムを分析する』となると、記憶を頼りにするわけにはいかない。
記憶という曖昧なものではなく、明確な記録こそが求められる。

そうなったとき、プロスポーツというのは傷害メカニズムの分析にうってつけだ。
なぜなら、常に『テレビ放送』されているから。
そのビデオの解析が、技術上精緻に可能になったとしたら・・・。
それが、最近可能になってきたのだ。
その研究の1つが、今回のビデオ分析研究だ。

驚いたのは、角度算出まで可能という点。
角度算出まで可能ならば、かなりの分析が可能になる。
そして、今回『フォルスステップ』というアキレス腱断裂を引き起こしやすいステップが明らかにされた。
このように明確な受傷起点が示されると、それを防ぐための対策を講じやすい。
どうやら、傷害メカニズムの解明においては、『記憶よりも記録に残る選手』が重宝されそうだ。

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