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脳卒中者における位相角と歩行自立の関連


📖 文献情報 と 抄録和訳

回復期リハビリテーション病棟における脳卒中および外傷性脳損傷後の片麻痺患者の歩行能力と身体各部位の位相角特性の関係

📕Tsujinaka, Ryo, et al. "Relationship between characteristics of segmental phase angles and walking ability in patients with hemiplegia after stroke and traumatic brain injury in a convalescent rehabilitation ward." International Journal of Rehabilitation Research 48.1 (2025): 48-54. https://doi.org/10.1097/MRR.0000000000000651
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✅ 前提知識:Phase Angle, PhAとは?
- 近年,生体電気インピーダンス分析法(以下BIA)は,日常の診療や栄養評価,スポーツなどのさまざまな分野に用いられている
- InBodyなどの機器を用いて、比較的簡便に計測が可能
- このBIAを利用して算出されるPhase angle(以下PhA)は細胞膜の抵抗を表した角度であり,細胞や細胞膜の栄養状態と関係が深く,体細胞量に反映する
- 健常者やアスリートなどの構造的完成度の高い細胞膜をもった正常細胞では,PhAは高く計測され,老化やがんなどの細胞膜の構造的損傷や細胞密度の低下した障害細胞では,PhAは低く計測される.
- PhAは細胞の健常度や全体的な栄養状態を反映することから,各種疾患の予後予測因子や栄養指標として注目されている.
- また,PhAは人体に微弱電流を流し細胞膜の抵抗値を直接測定して算出する実測値であるため,身長や体重だけでなく体液過剰の影響を直接受けない利点がある.そのため,通常の体成分分析には則さない重症度の高い患者や重症心身障害者などの正確な栄養評価が困難な患者にPhAは有用と思われる

📕 吉田索, et al. 外科と代謝・栄養 53.4 (2019): 169-175. >>> doi. https://doi.org/10.11638/jssmn.53.4_169

[背景・目的] 本研究では、回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中および外傷性脳損傷患者を対象に、入院時の体幹、患肢、健肢の位相角(PhA)の特性と、退院時の歩行能力との関係を明らかにした。

[方法] 回復期リハビリテーション病棟に入院した片麻痺の脳卒中および外傷性脳損傷患者を、自立歩行群と非自立歩行群に分けた。体幹、患肢、非患肢のPhAは生体電気インピーダンス法を用いて評価し、自立歩行群と非自立歩行群の間で比較した。各群における体幹、患肢、非患肢のPhAの差異を分析するためにフリードマン検定を実施した。歩行能力と分節的PhAの関連性を調べるために重回帰分析を実施した。

[結果] 47名の患者(自立歩行群:n=12、他動歩行群:n=35)が登録された。他動歩行群では、体幹、患肢、非患肢のPhAが有意に低かった。分節PhAは、自立歩行群では体幹が患肢および非患肢よりも高く、他動歩行群では患肢が体幹および非患肢よりも低かった。入院時の体幹のPhAのみが、退院時の歩行能力と有意に関連していた(β = 0.367; P = 0.002)

[結論] 入院時の体幹のPhAは、脳卒中および外傷性脳損傷のリハビリテーションを受けている患者の退院時の歩行能力と関連している可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

最近、『位相角(Phase Angle)』という用語が研究論文の中に増えてきている。
SNSなどで目にしたことがある方も多いのではないだろうか。
調べてみると、この位相角は比較的簡便に計測できる、とても有用そうなバイオマーカである。
疾患、年齢、既往歴、受傷前活動量、リハ意欲・・・、これらは間接的に身体的回復力と関連を示すものであって、その距離は結構遠い感じがする。
だが、細胞の状態を評価するPhase Angleは、かなり直接に近い身体的回復力の評価になるのではないかと感じた。
1km離れたところから望遠鏡で見るより、間近で見たほうが分かりやすく、間違いも少ないのは当然だ。

予後予測の精度を上げるためには、まず予測因子自体の質が色んな側面から高いことが前提だ。
この『位相角(Phase Angle)』は、有用な予測因子候補の1つになるだろう。
InBody、75万円・・・。
日に日に欲求が高まっている。

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