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短編│不完全燃焼

私は昔から不幸だったかもしれない。

藪の中の「女」のように捉え方を自虐的にすることで生を感じていた女は急に我に返ったようにそう思った。

いやそうとしか捉えられなかった。

ミラーの法則とかいうさっきまで読んでいた心理学の本を渾身の力でふんぞり蹴り始めた。

蹴りながら優しさが回ってこないのは地球が回っていないからなのか?
私が回ってないからなのかと独特の論理を展開し脳内では空回りをしていた。

その言葉は彼女の宙な心を見据えては漠然とした孤独を与えるだけだった。

このふざけた女の人生を表すとするならば「熱」と見せかけて「数」だった。

その味気のない空間を埋めるようにスパイスな言葉を、または自分にしか分からないものを求め知識の旅に出ては上澄みだけを学んで帰ってくる。

数子か熱子……どちらにせよこの旅から開放された女が今日も帰ってきたのだ。
そこに帰れば悪い癖のようにまた「今日も食傷だな」と言い、

誰にも理解されないような過去をフラッシュバックしては「言霊を飛ばしたい」と毒を吐きまくっていた。
しかし片手には人気のコーラをご所望であった。

そのコーラを飲みながらむせ返る世界を見ては滑稽な言葉と複雑な言葉で誰にもバレないようにひっそりこの辛さと戦っていた。

辛さ辛さとは言うが読者も察したであろうがこの女は自ら炎に飛び込んでは怒っているだけなのだ。

まるで生きること全ての感情を「怒り」にふるいにかけるているように見える。

そう、人間には考えられないほどの熱効率の良さなのだ。

この女が贖罪のように常に十字が並ぶネットへと駆り立てられるのは必然ではあったのだ。

冒頭に戻るがまず知識の旅もなにもかもネットである。ましてや今帰ってきたとこはTwitterである。

この女は自身の世界を少々誇大妄想しすぎなとこがある。

それを証明するように口癖は、炭素味を感じ過ぎる故に蹴り飛ばしたくなるという暴言がある。

その言葉の意味は、自分(水素)の美学に乗っ取った考え以外はすべて炭素原子かのように見える。

つまり爆発するぞという意思表示である。

それを見せつけるかのようにネット界での彼女のコードネームは  
                                     「爆発魔」
これもまたアカウント名だったりするのだが。

しかしここ最近の爆発魔は悶々たる心持ちを抱えている様子だった。

私の考えや人生に理解を示す人とコミュニケーションを取ってみたい、そう思い始めたのだ。

少し乙女チックに聞こえるがただの愚痴を共感して欲しいだけである。

爆発魔は0のことを100まで複雑にできる操作系の素質はある。

だが表側は変化系のように別人格に変身をすることが出来るのである。つまり特質系的な立ち位置だった。
(爆発魔辞典p000 HUNTER × HUNTERの件)

それを活かしネット上では能力を使いまくった。

普通の人間になりきることで一定数のいいねを稼ぎその最後の言葉に隠し味のように本心を打ち明けたりした。

そうすると大概の人が共感してくれたり哀れいてくれた。

「わかる、辛いよね」

その言葉が彼女の痛みを少し和らげてくれたように感じた。

次いでになるが悪い癖として、細部に気づけない者を心底馬鹿にもしていた。

そうした些細な共感などがダークマターのように微細に存在感を放っていた人生にとんでもない自己顕示欲が衝突してきたのである。

その共感を求めひたすら辛い過去を連打しまくった結果、残ったのは辛い過去と厚みのない言葉ばかりだった

それからというもの少ない共感を集める虚しさからヒヒイロカネのように熱伝導性をもつ、永遠に錆びない人間を探すようになった。

ヒヒイロカネと言っても自身の鋭利さと同じ波長を持つが、自分には振りかざさない。

まさに奇跡の折りたたみ式の人間を珍しく辛抱よく待っていたのである。

ネット熟練者になってやっと幻のヒヒイロカネのような人間を見つけた時がある。

彼女は心から親友だとはじめて思った。それくらい錆びなかったのである。

しかし、インターネットが抱える情報量と彼女の狭い価値観では適応ができなかった。

所詮、軽薄な関係だと馬鹿にして縁を浅くしたのは私だった。

ましてやこの短編も実話を物語にして失ったものから得ようとしている。

これ以上の浅はかな人間性をどう残そうか。

境遇を信じれても最後まで彼らの言葉を信じてあげることも出来なかった。

「何を求めているの?」

そう聞かれた時とき返答さえ出来なかった。

私は、言葉を信じ切れるほどの痛みが欲しかったのだろうか。

この様なくだらない心情を描写してなお出来事は描写できないただの酔いつぶれ文章にそもそも正解さえ眠ってないのかもしれない。

唯一分かるのは得られないものを必死に得ようとしたということだ。

信じれるものは常に自分だけだった。
孤独なのは既に自分の世界には誰にもいなくて。
だからこそ1人で何もかも遂行しなくては成り立たないと考えるようになった。

存在がある限り確実にいる私だけが信じるに足るものだと思ってきた。

ネットに触れると浅い人間と広い世界がこの思いを壊してくれようとしていた。

描写出来ない人間達を、馬鹿にしつつもその儚い光に希望を求めたのだ。


私は、水素の核融合のように莫大なエネルギーを得て人から敬られる恒星になりたかっただけの夢敗れの人間ならぬ炭素であった。

この刹那、

煮えたぎる熱い思いさえも形に残らず不完全燃焼のまま

心の中は単純で浅はかな断末魔ばかりが響いていた。

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