思い立っても早まるな
僕には以前より訪れてみたいと思っていた温泉施設があったのだが、車で片道2時間弱と結構距離があったために、ずっと行き渋っていた。
そうして、そのうち忘れてしまっていた。
しかしそんな折、先日の快晴の朝にどこかドライブしたいと考えていたら、ふとその温泉施設を思い出した。
「思い立ったが吉日」ともいうし、いっちょ行くかと意を決して車を走らせた。
途中寄り道をしながら3時間弱。山麓の温泉施設に着いた。
館内は綺麗で広く、入浴料もリーズナブルでテンションが上がった。
肝心のお湯はというと、これがサイコー。白濁としていて肌がスベスベになる。
露天風呂の種類も豊富で童心が騒いだ結果、気づけば2時間近く楽しんでしまった。
そうして、流石にそろそろ帰ろうと風呂から上がったら、履いてきたクロックスがない。
何度見てもない。
同じ色の汚ねえクロックスもどきならあった。
(自分のは新品同様にキレイだった)
そこですぐにパクられたと悟った。
仕方なく裸足で受付まで行ってその旨を伝えた。
受付の男は「履き間違えられたかもしれませんねえ」と呑気に言い、戻ってきたときのためにと連絡先を書くよう促した。
言われるままに書きながら、見つかっても遠方で取りに来れないと伝えると、「着払いでいいなら郵送できます」と言われた。
「いや何で着払い?間違えて履いてったやつに払わせろよ」と内心思ったが、まあ施設側は悪くないし、トラブルの間には極力入りたくないのもわかるからグッと堪えて「わかりました」と渋々了承した。
それから、もうしわけ程度に、ペラペラの便所スリッパみたいなん渡されたので、仕方なくそれを履いて帰ることにした。
歩くとパカパカうるせえスリッパだが、まあないよりはマシだと思って我慢した。
しかし運転していると、裏がツルツルしているせいで、ペダルがやけに滑って不快感がすごい。
それでも最初は我慢していたが、そのうち段々イライラしてきて、
「よく考えれば下駄箱に鍵つけてない施設側も悪いやんけ。下駄箱のとこに『履き間違え注意』っていうプレートあったから割とよくある出来事ってことだろ。対応策考えろや!プレート貼っただけでやった気になってんじゃねーぞクソが!ていうか、受付の男の飄々した態度から察するにあいつパクられ対応しすぎて麻痺してるだろ」
「ほいで何で着払いやねん!ふざけんな!」
と車内で一人喚き散らしてスリッパを脱ぎ、裸足で運転して帰った。
次の日、泉質が合ってなかったのか身体中に湿疹ができた。
今でも痒い。
と、感情任せに書いたが、結局何が言いたいかといえば、皆さん、「思い立っても凶日」ということもあり得るので気を付けられたし。である。
しかし、盗人許さねえ。
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