ジョー・クリスマスの捕縛 ~フォークナー『八月の光』 15~
『八月の光』の章立ては21章なので、あと7つ。長いよね。長編て本当に長いよね。これで『戦争と平和』とかやりだしたらどうなるんだろう。『チボー家の人々』とかやりだしたらどうなるんだろう。いや、やらないよ。子どもたちもトルストイ『戦争と平和』はさすがに自分で読んでくれ。いや、もう、読まなくてもいいのかな。
2022年、フォークナーに何かニュースがあったりしないかな、と探してみたものの、モンブランの作家シリーズの万年筆「ウィリアム・フォークナー」モデルがあることくらいしか出てこない。万年筆、欲しいけど、特に使わないしなあ。12万なら、まあ、普通のPCと同じくらいの値段か。
ダメですね、連投しようとすると、前説部分のネタが切れてくる。やはり、一日二連投くらいがちょうどいいのかもしれない。ただ、もうさすがに終わらせたい。子どもたちに自分の生きた記録を見せたいと思って始めた一連の投稿だけれども、さすがに、そうであっても見てくれる人もいるようだから、もっと興味を引くような作家や作品を取り上げたい。中断して、別の作家を取り上げればいいではないかと言われそうだが、長編を生きるというのは別の時間を生きるということだとするなら、すぐに他の長編に取り掛かるのは、節操の問題でよくできない。
いずれにしても後7つなので頑張ろう。
『八月の光』の各章を読んでいて、頭の中で鳴るエンディングテーマは、Tina BrooksのGood old soulだ。複雑な作りのようで『八月の光』はテレビドラマのようなチャプターの切り分け方をしている。なので、途中のダレを止めるために、エンディングテーマを意識しながら読んでいる。
是非『八月の光』の各章を読み終わりそうになるたびに、このGood old soulを流してみてほしい。
あらすじ
金曜日、モッツタウンでジョー・クリスマスは捕まる。
そして話はハインズ夫妻という老夫婦へと移る。
ハインズ夫妻は30年前にモッツタウンに来た。そして、25年前からまともな仕事には一つもついていなかったという。夫ユーファス・ハインズはメンフィスで仕事をしているようにもみえたが、性狷介で、人を寄せ付けなかったので、詳しいことを住民は知らなかった。
ユーファス・ハインズは、「黒人」教会で信仰復興集会を開いているようにみえた。そのためか「黒人」たちが、食べ物をもって、ハインズ夫妻のところへいき、それによって生活をしているようにもみえた。
夫ユーファスは「アンクル・ドック」と呼ばれ、少し「神の手が触れたか、彼の方で神に手を触れてしまった」のかもしれないといわれていた。彼は「黒人」教会に行っては、説教壇に登り白人優越主義を説いていた、ということも人には当然のことと思われていた。
その「アンクル・ドック」は、ジョー・クリスマスという男が捕まったという噂に触れた時、興奮した。クリスマスを見に行き、そこで、杖を振り上げてクリスマスを殴った。男たちに静止されるまで、暴れた。そして、ハインズの妻もその話を聞き、驚いていた。男たちは噂した。ハインズ夫妻は、ジョーを知っているのではないか、と。
そう、ハインズ夫妻こそ、ジョー・クリスマスの祖父母だったのである。
街では、人々がジョー・クリスマスが捕まったときのことを噂している。クリスマスは、堂々と床屋に入っていった。そして、堂々と街を歩いていた。ハリディという名の男が、お前クリスマスじゃねえか、と聞いたら、堂々と、そうだよ、と答えたという。
「アンクル・ドック」は、ジョー・クリスマスを殺すのも生かすのも自分の権利だとわめいた。周りの人は、クリスマスと一緒にぶち込んだ方がいいんじゃないかとさえ思い始めるほどの激し方だった。妻の方は、クリスマスに面会を申し込んでいた。しかし、会えなかった。
モッツタウンの大衆は激高していた。ジョー・クリスマスを私刑にかける気満々だった。しかし、保安官は説得する。ハリディは、1000ドルもらえると思って、一も二もなく賛成した。しかし、大衆は収まらない。保安官は、1000ドルをハリディが受け取ることによって、モッツタウンにそれがはいってくるようなものだという説得をして、クリスマスをジェファソンの保安官に引き渡した。
そしてハインズ夫妻は、ジョー・クリスマスが連れていかれたジェファソンへ向かうために車を用意しようと交渉を開始した。しかし、折り合わず、急いでいたために汽車で向かうことにした。汽車の中で「アンクル・ドック」は奇怪にわめいていた。
感想
『八月の光』においてネタバレという概念があるかどうかはわからない。クリスマスがなぜ、そうした犯罪行為を行ってしまったのか、ということが興味の焦点であれば、たぶんにこのハインズ夫妻の登場はネタバレになるのかもしれない。
今まで、ちょこちょこと、ジョー・クリスマスが孤児院に入れられた際に、祖父母が関与していたことを記してきた。その祖父母こそ、このハインズ夫妻である。夫であるユーファス・ハインズ、通称「アンクル・ドック」は要するに「どこかおかしい」人。狂信的な熱に侵されているといえる。
そんな「アンクル・ドック」は何をしたのか。このこともちょこちょこと記してはきたが、この後、この真相が明かされる。
ちなみに、諏訪部浩一訳でも、黒原敏行訳でも紹介されているReading Faulknerのシリーズの‟Light in August Glossary and Commentry"は面白い。注釈書みたいな形式で、説明も長いやつもあれば四行くらいのものもあって、ちょっとわからないときに引いてみると、いろいろ書いてある。これはkindleだと2900円くらいで安かった(安い・・・か?)ので、手元に置きながら読むにはいいかもしれない(いい・・・か?)。まあ、年取った人が、おもちゃをいじくるように、読むのに適している感じかな!
「アンクル・ドック」ってなんだよ、みたいなことがあれば、この本を引くと、南部で「じいさん」みたいに敬意をもってよぶときの称号で、ドックは「Doctor」の略語で、街がハインズ夫に抱いていた説教師のイメージのあだ名だったようなことが、書いてある。だから中上健次も「トモノオジ」とか書いていたわけだね。
言葉の世界というのは大人の玩具ですな。
それが感想かよ。
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