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教育で大切なのは「なんとなくできる気にさせること」である


発達障害のある子どもは、自己肯定感を高めにくい

自己肯定感とは、「自分はできる、やれる」「自分が自分であって大丈夫」だという前向きな感情です。

この前向きな感情が、子どもらしく、生き生きとした眼差しをみせ、目標に向かって自らが主体的に歩んでいけるような姿につながるのです。

しかし、ADHDやASDのような発達障害の特性がある子は、その特性上、学校生活や社会生活で失敗経験を積みやすいです。

成功体験が得られず、注意や叱責を繰り返されることも。そうでなくても、少しのことで「もう、自分はダメなんだ…」という自己嫌悪に陥り、自己肯定感を低めることもあります。

そうなれば、成功体験をいくら積んでも「この成功は、たまたまなんだ。だって、僕はダメだから…」という悪循環に陥り、自己肯定感を高めることが難しくなります。

だからこそ、自分自身に自己肯定感を高めるために大切なこととして、「なんとなくできる気にさせる」ことが大切です。

じゃあ、どうする?

先輩の水泳指導で学んだ事

通常学級の水泳指導で学んだことです。先輩の先生が

「水泳指導で大切なのは、何となくできる気にさせることが大切である」

とおっしゃっていました。そのことが強烈に心に残っており、今でも水泳指導する際は意識しています。

確かに、水泳とは得意不得意が明らかな種目です。

苦手意識が強くなると、身体が硬直してダルマ浮きやふし浮きなどができなかったり、顔に水をつけられなかったり、極端な場合プールサイドから手を離せなかったり、プールにすら入れなかったりする場合もあります。

得意だと感じれば、水泳指導が楽しみで仕方がなくなり、思い切り水泳指導を楽しむことになるのです。

「君たちはできるよ~」
「大丈夫だよ~」
「お、さっきより長く潜れた!」
「5m長く泳げたよ!」
「もう少しで25mだよ!」

前向きな声かけや激励で、子どもの意識は何となく「できてる!」という前向きな感情へと変化していきます。まさに、教師の腕の見せ所ですね。

「なんとなくできる気にさせる」ってどんな指導にも共通するのではないか?

ところで、この「なんとなくできる気にさせる」ってどんな指導にも共通するのではないか?と考えるようになったのです。

跳び箱にしても、鉄棒にしても、サッカーにしても、リコーダーにしても、鍵盤ハーモニカにしても、計算にしても、漢字にしても、読解力テストにしても…

さらには、生活指導における挨拶や返事、授業態度や掃除、当番活動や委員会活動においても、なんとなく、特に理由はないけれども「自分はできるんだ!」という自己意識が、適切な姿で臨む態度を育むのです。

私たち教師もそうです。教師として、子どもの前に立つ以上、自信がなければそれが態度に出ます。時には厳しい指導も必要です。「自分は、教師としてやっていけるんだろうか?」という不安や後ろ向きな感情を常に持っていると、中途半端な指導に終始してしまい、適切な教育を行うことができなくなる恐れがあります。

初頭効果による子どもへの影響の大きさ

子どもは敏感です。特に、発達障害のある子は第1印象で評価をする初頭効果が大きいのです。

「この先生は好きだ」
「この先生の言うことは聞かなければならない」

と思わせなければなりません。根拠のない自信を持ち、堂々とした姿で教師を演じることも必要です。

人間だから不安や後ろ向きな感情をゼロにはできません。しかし、それを表に出しては決していけないのです。あくまでプロである教師であることを自覚し、演じ切る。その意識と覚悟があれば、たとえ若手の先生でも十分1年間学級をまとめ上げることができます。

私は、通級指導教室担当です。そして、特別支援教育に携わるものです。週に1回、1時間の通級指導を通して「ぼくはできる!」「やれる!」「教室に戻っても、頑張れそうだ!」という前向きな感情を持たせたいものです。そして、定期的に教室での姿を見に行き、こう伝えます。

「あなたはできてるよ~」
「がんばっているよ~」
「すごいね~」
「いつでも見守っているよ~」

プラスのメッセージを常に伝え続けるのです。それが

「なんとなくできる気にさせること」

につながると考えます。

不適応行動を起こさせないために

遠回りですが着実な道のりなのではないかと思うのです。
劣等感、嫌悪感、自尊感情の低さは全て不適応行動につながります。
不適応行動は、教師、クラスメイト、保護者…だれも幸せになりません。特に、やっている自分自身の心を傷つけながらも、不適応行動を通してでしか自分自身を表現できなくなってしまっているのです。

我々大人が子どもへできることで最も重要なことの1つが自己肯定感を高めることです。そのための1つの手立てが「なんとなくできる気にさせること」なのです。ぜひ、教員の方、保護者の方、地域の方、子どもと関わる職種の方…全ての皆さんの心に留めておいて子どもと関わってほしいと思います。

今日の記事は以上になります。
最後までお読みくださりありがとうございました。

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