調香師 山人ラボ sunyataperfume

independent perfumery Śūnyatā (スニャータ) 実験・研究の調香室主宰 調香師 分子から生命へ、生命から感覚、そして意識へ。

調香師 山人ラボ sunyataperfume

independent perfumery Śūnyatā (スニャータ) 実験・研究の調香室主宰 調香師 分子から生命へ、生命から感覚、そして意識へ。

マガジン

最近の記事

100年前の ある挿話_7_世に放たれたNo.5  (完結回)

1_彼女の希求100年前の ある挿話_1_彼女の希求|調香師 山人ラボ sunyataperfume (note.com) 2_化学者のジャスミン100年前の ある挿話_2_化学者のJasmine|調香師 山人ラボ sunyataperfume (note.com) 3_特別な香り100年前の ある挿話_3_特別な香り|調香師 山人ラボ sunyataperfume (note.com) 4_オークション100年前の ある挿話_4_オークション|調香師 山人ラボ sun

    • 100年前の ある挿話_6_創られた挿話

      1_彼女の希求100年前の ある挿話_1_彼女の希求|調香師 山人ラボ sunyataperfume (note.com) 2_化学者のジャスミン100年前の ある挿話_2_化学者のJasmine|調香師 山人ラボ sunyataperfume (note.com) 3_特別な香り100年前の ある挿話_3_特別な香り|調香師 山人ラボ sunyataperfume (note.com) 4_オークション100年前の ある挿話_4_オークション|調香師 山人ラボ sun

      • 100年前の ある挿話_5_中世の調香

        なぜ、香りに心動かされるのか 100年前の彼女の挑戦と冒険 100年後の今でも、私たちはその香りに魅了される 1_彼女の希求100年前の ある挿話_1_彼女の希求|調香師 山人ラボ sunyataperfume (note.com) 2_化学者のジャスミン100年前の ある挿話_2_化学者のJasmine|調香師 山人ラボ sunyataperfume (note.com) 3_特別な香り100年前の ある挿話_3_特別な香り|調香師 山人ラボ sunyataperfu

        • 100年前の ある挿話_4_オークション

          100年を経たCHANEL No5 新たな考察 なぜ、香りに心動かされるのか 100年前の彼女の挑戦と冒険 100年後の今でも、私たちはその香りに魅了される 1_彼女の希求100年前の ある挿話_1_彼女の希求|調香師 山人ラボ sunyataperfume (note.com) 2_化学者のジャスミン100年前の ある挿話_2_化学者のJasmine|調香師 山人ラボ sunyataperfume (note.com) 3_特別な香り100年前の ある挿話_3_特

        マガジン

        • 私のための香水 
          39本

        記事

          100年前の ある挿話_3_特別な香り

          100年を経たCHANEL No5  新たな考察 なぜ、香りに心動かされるのか 100年前の彼女の挑戦と冒険 100年後の今でも、私たちはその香りに魅了される 1_彼女の希求100年前の ある挿話_1_彼女の希求|調香師 山人ラボ sunyataperfume (note.com) 2_化学者のジャスミン100年前の ある挿話_2_化学者のJasmine|調香師 山人ラボ sunyataperfume (note.com) 3_特別な香りエルネストのラボで出会った,グ

          100年前の ある挿話_3_特別な香り

          100年前の ある挿話_2_化学者のJasmine

          なぜ、香りが精神に作用しうるのか。 謎解きのための、100年前の彼女の冒険。 100年後の今も、私たちはその香りに魅了されている。 1_彼女の希求100年前の ある挿話_1_彼女の希求|調香師 山人ラボ sunyataperfume (note.com) 2_化学者のジャスミン 第一次世界大戦の恐怖が過ぎ去った、パリ。 新しいものと古いものは、乱雑に混じり合っていた。 混沌の中、歓喜も、悲壮も、汚いものも、奇麗なものの、何もかもが人々の興奮に繋がった。 ドアを開けると

          100年前の ある挿話_2_化学者のJasmine

          100年前の ある挿話_1_彼女の希求

          序ある香水は、何故、身体の芯を震わせ、心に響きわるのか. そうではない、香りとの違いは、何なのか. 当ラボのミッションは、精神に響く”香り”の存在を理解することで、そのために様々な角度から香りを捉える試みを続けている。 香りを理解するためには、物質としての香水のみならず、それを捉える人の仕組み、さらには香りの文化としての一面をも知る必要がある(Fig.1)。 目で見ることができない、現在主力の通信手段で広くシェアすることもできない、共通認識や客観評価が難しい、という香りの

          100年前の ある挿話_1_彼女の希求

          Short story_ある夏の蒼茫

          香りの持つイメージを、小さな物語に表す試み この物語から、あなたはどんな香りがしましたか? UNWINDER  ESSENTIAL OIL_ JANESCE ************************ 庭のレモンの木の前に立ち、目を凝らす。 葉脈だけを残した梢の先。 その先で、緑色の葉を縁から延々と齧り続けるのは、アゲハ蝶の幼虫だ。 ひとつに気が付くと、緑の葉の茂みの、そこにも、ここにも、たくさんいる。 昨日までは、数えられない程、もっとたくさんいた。 けれど今朝

          Short story_ある夏の蒼茫

          東京残香_神南

          ***失われていく街の香りを、物語の印象として記す試み**** 東京残香 渋谷区神南 _梔子_ **************************** 人のつぶつぶが集団になって、固まったり、ばらけたり、すごいスピードで流れていく。この大通りは太い血管ね。 信号が変わったスクランブル交差点を越えて、ビルの陰に入る。 だんだん細く狭く、曲がりくねった坂では、ぶつからないようにすれ違うために皆ゆっくりになる。ここは、まるで毛細血管ね。 車の流れに翻弄されて、通りで立ち往生

          Column_住宅の匂い 

          夏休みに訪ねる遠くの祖父母の古い木造の家 微かな線香の香り 早朝、炊きたてのご飯を仏間へと運び、備える. 朝日が射す食卓に並んだ青い花の描かれた茶碗をみて、時間がタイムバックした. 小さな畑で手折ったトマトの青臭さ、土を洗い落とした人参や大根の匂いとともに、40年ほども前のあの日のあの匂いが蘇る. 住宅街を縫うように通り抜け、友人の小さなアパートの階段を上る. 玄関を開けると、変わらない空気. 冷蔵庫のものを何もかも出して鍋に放り込んだカレー. 友人の暮らしの温かい匂いに包

          Short story_ガーデニア

          香りの持つイメージを、小さな物語に表す試み この物語から、あなたはどんな香りがしましたか? ******************************* 空気は水分で満ち、指先から滴が落ちそうだ。 いつの間にかアスファルトに射す日光を遮るまでに茂った欅やクヌギの梢の葉。 一面グレーのこの街の地上に、絵の具を散らしたようなビビッドな色。 躑躅の植栽から満開の花の甘い香り。排気ガスにも強いというので、都内の幹線道路脇には多く植えられている。 信号待ちをする交差点の一画で、通

          東京残香_青山一丁目

          ***失われていく街の香りを、物語の印象として記す試み**** 東京残香 青山一丁目 ラルチザンパフューム L’ARTISAN PARFUMER TIMBUKTU EDT composed by Bertrand Duchaufour 2004 ******************************* あれ、通り過ぎてしまった? 道を間違ったのかも? 思わず歩いて来た道を振り返る。 だってここは、見たことがない、知らない場所だもの。 初めて見る煌びやかな建物の

          東京残香_青山一丁目

          Short story_あの秋

          資生堂 ばら園 ******* 香りから想起される物語   香りを想起させる物語 あなたはこのストーリーからどんな**香りを感じますか ******* 秋になっても咲き続けている。 うちの庭の柵に延々と広がり蔦を延ばしているティ―ローズにフレンチフリル。たった一つの株から伸びる棘のある蔦。 虫や棘に気を付けて、そっと花に顔を近づける。 湿っていて深くて、ずっと嗅いでいるうちに気が遠のいて別世界に連れて行かれそうになる。 そんな魔力を持つ薔薇の芳香とは似ても似つ

          Short story_甘い涙 苦い雨

          Un bios vanilleアンボアバニール_ SEAGE LUTENS composed by Cristopher Sheldrake ****** 香りを想起させる物語。物語を想起させる香り。 貴方はこの物語にどんな香りを感じますか? 香りの印象をshort storyで表現する試み ******* 「え、なにこれ。子供のお菓子みたい。エナ、こんなロリータな香水の趣味があったの?」 サナがそう言って私の手に返したのは、手のひらに収まる薄さの香水瓶。 昨

          Short story_甘い涙 苦い雨

          Short story_月光

          Original Perfume "重陽"_composed by Tokyo Sanjin, September 2021. 香りから想起されるイメージ。香りを想起する物語。あなたはこのストーリーからどのような香りを感じますか? ******************** クヌギやコナラ、楓、トチの茂る森 夏を終えた葉が 差し込む光の中にひとひら、またひとひら舞い落ちる 鳥の声と水のせせらぎを聞く 以前、8月の早朝にここに立った時とは全く香りに包まれている。 カラメ

          東京残香_渋谷

          LUCIANO SOPRANI SOLO (ルチアーノソプラルチアーノソプラーニSolo) 東京残香****************************** 掻き消され失われていく、土地の香りを短編物語に残す試み。 ********************************** ビル陰を割って、アスファルトに細く伸びる朝陽。 光と影のモザイクの上を誰もが早足に踏み越えていく。 朝10時を回ったばかりの渋谷。 これから始まる一日を見上げ、コンクリートに囲まれ