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丸まったハンカチに感じるDNA

また、ポケットにハンカチが入ったままだ。

夕方、洗濯物を取り込むとき。
かなりの高確率で、二男のズボンのポケットから、丸まったハンカチが出てくる。洗濯に出すとき、ポケットからハンカチを出さずにそのままズボンを脱いでしまうのが、二男の癖だ。何度言っても直らない。いや、直そうとしていないかもしれない。パリッと気持ちよく乾いたズボンのポケットから、しっとり丸まったハンカチを取り出さないといけない私の気持ちを考えてほしい。

この件に関しては、もう一つ言いたい。
洗濯物を干す担当の夫についてだ。
夫は、ズボンのハンカチに気づいても取り出さない。夫としては、ハンカチをポケットから出さない二男が悪いのであって、気づいても取り出さずにズボンを干すことは、何も悪くないと主張したいのだ。だから、わざわざ手をかける必要がないというのが夫の考え。しかし、気づいたならそこで取り出しておいてほしいのが、私の思いだ。

家事を分担している手前、あまりこまごまと文句を言いたくはない。しかし、毎度しっとりハンカチと対面するとなると、やっぱりクレームの一つや二つや三つ言いたくなる。

洗濯物を取り込んで畳むのは、私の役目。湿ったハンカチのせいで、ズボンのポケットが乾き切らず、部屋の中で再度干す手間がうっとうしい。特にこの時期は日照時間が短く、厚手の洗濯物は乾かないことだってある。少しでもおひさまのパワーで効率よく洗濯物を乾かしたい。なのに、ポケットに突っ込まれたハンカチのせいで乾かないズボン。思わずため息をついてしまう。

「今日も、ポケットにハンカチが入ったままだったよ」

二男と夫に伝えると、2人の責任のなすりつけ合いが始まる。

「ポケットからハンカチ出しておいてって、何度言ったらわかるの?」
「そりゃそうだけど、ぼく忘れちゃうんだもん」
「忘れるようなことじゃないでしょ、簡単なんだから」
「簡単なら、お父さんが出しておいてくれればいいじゃん」

本当にしょうもない言い争い。

「正直、どっちもどっちじゃない?」

長男が冷静にジャッジしてくれた。
しかし、2人は面白くない。
ぶつぶつ文句を言いながら退散する。

そこで私は、口をゆがめたままの夫に近づき、まだ伝わっていなかったことを言った。

「あのさ、今日ポケットにハンカチ入ってたの、あなたもだよ」

そう。
二男と同じく、夫もポケットにハンカチを入れたまま洗濯に出す癖がある。そのうえ、本人は自覚していない。しかし私から言わせると、2人ともいっしょ。変なところがよく似ていて、親子だなと感じる。

「え、入ったままだった?気づかなかったよ」

夫は、バツが悪そうに笑ってごまかした。
その瞬間を、目ざとい二男が見逃すはずはない。

「お父さんだってハンカチ入れたままじゃん!人のこと言えないよ!」

二男が反撃に出る。
夫は言葉に詰まった。

そこで長男が一言。

「ほら言ったじゃん。どっちもどっちだって」

それでも二男は食い下がった。

「お父さんが出来ないこと、ぼくが出来るわけないもん!なのに、ぼくのことばっかり注意するの、やめてほしいんだけど」

「普段はできているよ。今日はたまたまだよ」

夫はここぞとばかりに言い返す。
ん?たまたま?

夫だって、ポケットからハンカチ率が高いよ?

私の疑問をよそに、また夫と二男のしょうもない言い争いが始まろうとしていた。さすがに何度も同じことを聞くのは、私や長男だって嫌だ。

「2人とも一緒。どちらも、ちゃんと直してね」

私がたまらず言ったひとことが鶴の一声となり、やっと2人は黙った。もう言い返す元気もないらしい。

こんなやり取りが、1週間に2度は繰り返される我が家。今日も夫と二男のズボンのポケットに、しっとり丸まったハンカチがあった。

これはもう、DNAの仕業なのだ。

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