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『クジャクのダンス、誰が見た?』の広瀬すずの瞳を見てほしい。

TBSドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』に、すっかり心奪われている。

きっかけは偶然だった。テレビを付けたら、ちょうど第1話が放送されていたので、何となく見始めた。

元々ミステリードラマは苦手だった。張り巡らされた伏線を追うのに疲れてしまい、リタイアすることも多かった。しかし、このドラマは出会いが偶然とはいえ、思わず見入ってしまう。真実が分かっても、新たな謎が出てくる。例えば、「手紙を偽造した」と警察に自白した人が、後から主人公に「手紙を偽造したと警察に嘘をついた」と伝える場面。ひっくり返されてしまって、どちらが真実なのか分からなくなってしまった。こんな伏線がいくつも張り巡らされていて、目が離せない。

すっかり展開に心を奪われ、毎週チェックしないと気が済まなくなってしまった。ミステリーでありながら主人公たちのやりとりにホッとできる場面もあり、緩急が付けられている。

何せ、癖の強い登場人物ばかり。主人公の心麦こむぎ(広瀬すず)と弁護士の松風(松山ケンイチ)ぐらいしか信用できないとさえ思えるほどだ。心麦と松風、松風の幼馴染で同僚の波佐見以外の登場人物には、何か裏がありそうな気がしてならない。現時点で心麦が心を許している旧知の登場人物たちも、腹の中では何を考えているか分からないと感じる。心麦のためと言いながら、何か別の目的があって動いているようにしか思えないのだ。もしかしたら、本当に善意で動いているかもしれない。しかし、今の時点では何もわからないので、疑り深く観察してしまう。それに、心麦が家族のように慕っていて、唯一信じられそうだったラーメン屋の染田ですら、事件に一枚かんでいることを匂わせながら死んでしまった。おそらく殺されたと私は推察しているが、真実はいかに。

次々と不幸が降りかかっても、健気に真実を追う心麦。ストーリーを追ううちに、素直で純粋な心麦には幸せになってほしいと、勝手に親心のようなものを抱いてしまった。心麦の幸せの行方と事件の真相を知りたくて、毎週のように視聴している。

実は恥ずかしながら、これまで広瀬すずの出演作品をほとんど見たことがなかった。話題になった映画『流浪の月』も、Netflixのドラマ『阿修羅のごとく』も、サブスクで見ようと思えば見れる環境なのに、結局見ていない。私にとって「広瀬すず出演」というワードは、興味を引く条件ではなかった。人気のある女優との認識はあったが、不思議と縁を感じなかった。だから、当初はハマったドラマに、たまたま広瀬すずが出ているという認識だった。

しかし、回を追うにつれて、広瀬すずから目が離せなくなってしまったのだ。

まず、演技の達者な俳優陣に囲まれても、存在感が際立っている。私が彼女に注目しているからかもしれないが、回を追うごとに存在感が増している。心麦の成長と共に、彼女の演技も進化しているように感じられるのだ。おそらく、彼女の本来の実力でそう思わされているのだろう。俳優の中には演技力を見せたくて力み過ぎる人もいるが、彼女の場合は「演技してます」という感じではなく、自然に心麦として存在しているかのように思える。「すごい」の一言では片付けられない。それほど、俳優としての広瀬すずの力が凝縮されているのが、『クジャクのダンス、誰が見た?』の心麦だ。さすが、広瀬すず。

素晴らしさをあげたらキリがないので、1点だけ書く。

広瀬すずの最大の魅力といえば、瞳である。印象的な大きな瞳は、彼女を美しく見せているポイントだと思う。しかし、美しいだけではない。瞳で役の感情を物語ることが出来ると私は思っている。大げさかもしれない。あくまで私個人の感想である。

例えば、口調で強がっているとする。しかし、瞳を見ると揺れていて動揺が伝わってくる。彼女の瞳の動きに気を取られ過ぎて、気が付くと吸い込まれそうになってしまう。

これまで瞳の演技に注目したことがなかったが、彼女を見ていると自然と意識してしまう。役柄にもよるだろうが、瞳で物を言える俳優は少ないのではないか。私は俳優ではないので、決して演技に詳しいわけではない。しかし、そんな私ですら、広瀬すずの瞳の演技に圧倒された。彼女の瞳を見ると、心麦が今どんな感情かがよくわかる。知らなかった事実に直面する場面でも、動揺しながらも踏ん張ろうとする心麦の様子が見て取れるのだ。

広瀬すずの瞳には、引力があるように感じる。目が与える強い印象を、よく「目力」なんて言うが、彼女には「目力」を超えた「瞳の引力」なんてものがあるのではないだろうか。

私はこれからも、『クジャクのダンス、誰が見た』を最終回まで追いかけるつもりだ。広瀬すず演じる心麦と一緒に、真実を知りたい。

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