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最近、子どもの好きなアイスが売ってないから、私のとっておきがなくなっていく。

我が家はみんな、無類のアイス好き。
特に、チョコレートの入ったものが子どもたちに大人気だ。

家族それぞれ、好きなアイスが違っている。みんなのお気に入りのアイスを欠かさないように、冷凍庫に補充するのが私の役目だ。家族全員が、それぞれのお気に入りのアイスを把握しているので、わざわざ名前を書かなくてもアイスの名前で所有権が明確になっている。

もちろん、勝手に食べるなんて許されない。
相応のお仕置きが待っている。
おかずの量やお酒が削られるのだ。
厳しいと思われるかもしれないが、それほど我が家においてアイス確保は重要事項。他人のアイスに手を付けるのは厳禁なのだ。アイスに気を遣うのが我が家のルール。学習しない人が約1名いるけど。

「お母さん。最近ぼくのアイスがないね」

ある日、長男が冷凍庫に頭を突っ込むように探しながら言った。ぼくのアイスとは、正しく言うと「ぼくの一番好きなアイス」のこと。

「最近、スーパーで売ってないみたいなの。売場で見かけなくて。探してるんだけどね」

この言葉に嘘はない。
長男の好きなアイスは、ある日忽然といつものスーパーから、姿を消してしまった。いつもの売り場のケース内に、長男の好きなアイスのスペースだけ空いていたから、最初は在庫切れだと思っていた。そのうち入荷されれば買えると信じていた。しかし、一向に店頭に並ぶ気配がない。あのアイスが並んでいたスペースは、年明けとともに他のアイスで埋め尽くされてしまった。

お店の事情で商品入れ替えをして、取り扱いがなくなってしまったのか。そうだとしたら、アイスの入荷を心待ちにしている長男が不憫だ。

「ぼくのアイス、どこに行っちゃったんだろう」

長男がしょんぼりしながら言う。
今まで、こんなに長く長男の好きなアイスが品切れになることはなかった。何か事情があるかもしれない。

意を決して、ネットで検索してみた。
すると、赤字で「販売休止中」と出ているではないか。

「たいへん!販売休止中だって!」

さっそく長男に知らせた。
長男は検索画面をのぞき込み、さらにしょんぼりしてしまった。

「なんで休止したんだろう」

私は焦って、長男を励ます。

「休止ってことは販売終了ではないから、そのうち復活するんじゃない?またいつか食べれるようになるよ」

すると、長男は少し考えた。

「しばらく食べられないってことは、間をつなぐアイスが必要だねぇ」

おやおや。他のアイスでもいいんだ。
私は軽い気持ちで提案してみた。

「確かに、そうだね。アイス食べないっていう選択肢もあるけど」

すると長男は、食い気味に言ってきた。

「だめ。何かしらアイスは食べたい」

どうやら、彼はアイスがないと生きていけない体になってしまったらしい。私の食育は、間違ってしまった。アイスがなくたって生きていけるのに、お気に入りのアイスがないという事態が、長男にとって相当ショックだったようだ。

「じゃあさ、お母さんのアイスでも食べる?」

その場しのぎとして、私は自分のアイスを差し出した。それは、私のとっておき。ここぞというときに食べるために、冷凍庫に隠し持っていたものだった。

「あ!このアイス!気になってたんだよね~。食べていいの?」

長男はいちおう遠慮がちに私に聞く。

「いいよ、何もないのはかわいそうだから。これ気に入ったら、また買ってきてあげる」

私が言うと、長男は嬉しそうにパッケージを開け、かじりついた。

「おいしい!これ、ぼくが2番目に好きなアイスだ!」

長男の機嫌はすっかり直り、あっという間に平らげてしまった。

「じゃあ、しばらくこれ買ってきてね」

かくして、私のとっておきアイスは、長男が2番目に好きなアイスとなってしまった。この記事を書いている今も、長男はソファに座ってもりもり食べている。

その場しのぎでやったこととはいえ、私のとっておきは順調に減っている。正直しまったと思うけど、かわいい長男のためだから仕方ない。我慢するか。

アイスに夢中な長男の様子を見ていたら、夫がちょろちょろと冷蔵庫前をうろつき始めた。冷凍庫に手を突っ込み、私のとっておきを掴みだす。

「あー!それ、ぼくとお母さんのアイス!」

どさくさにまぎれて、夫は何をやってるんだ。
長男が目ざとく見つけ、二男と一緒に夫に詰め寄る。

「お父さん!それ、あんたのアイスじゃないでしょ!」

夫は子どもたちから、きつくお灸をすえられた。

我が家は今日も、平和だ。


☆長男が一番好きなアイス(2025.1.9時点で販売休止中)

☆私のとっておき


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