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ヒカリ

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光と影
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#ストーリー

金平糖のような星を一粒

金平糖のような星を一粒

これは誰かが忘れた純粋な陽の光。
少しの振動や風に当たると消えてしまいそう。

この小さくて無垢な希望の光を
絶やすことのないように
陽の光の番人は大切に守り続けた。

もうすでに旅立った大人は
この光を見るたび懐かしさと切なさで涙を流す。

番人はただ何も話さず見守っている。

丘の上から砂嵐がやってきて
光の前で静かに止まった。

砂嵐の中に人影が浮かぶ。
じっと目を凝らして見てみると
一つの

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緩んだ輪郭に光を灯す

緩んだ輪郭に光を灯す

気がついた時から、周りは燦々と明るい。
一歩進むたび、明るい場所が増えていく。

周りを良く観察してみると、
人やモノの輪郭が色濃く出てる。
それぞれの個性が際立ち、とても魅力的。

心の中で太陽が顔を出し、
全身がじんわりと暖かくなる。
もっとたくさん見てみたいなと思い、
旅に出ることにした。

ある街に着くと、人々が歓迎してくれた。
ただ、話しかけても言葉が通じない。
きっと素敵な魅力が詰まっ

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キャンドルを焚く

キャンドルを焚く

その人との時間がとても楽しくて、
永遠に続けばいいのにと願った。

ああ、なんて楽しい時間。
少しよそ見をして、その人の後ろを見ると
足跡がなかった。

これから進む先の明かりも見せてくれない。

その人は現在でしか会えない人だった。

どうにかこの時間が続いて欲しい。
最初は純粋な願いだったのに
不安が大きくなるにつれ
その人がいる場所を探し回った。

現在の時間を共有し続けたい。
繋ぎ止めたい

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暖かな光を羽織る

暖かな光を羽織る

火を灯す。
暗闇の中、ぼうっと柔らかな明かりが
冷え切った体を優しく包み込む。
今日もまた夜が始まった。

ここはどこなんだろう。

先が見えないから
いつまでも続いていきそうな闇に
吸い込まれてしまいそうだ。

いつか闇との境目はなくなり
心も体も交わっていくんだろう。

そのいつかが来るまでは
この暖かな光を身に付けて
果てしなく続く闇の中を泳いでみよう。

≪光と暗闇に溶け合う≫