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緩んだ輪郭に光を灯す

気がついた時から、周りは燦々と明るい。
一歩進むたび、明るい場所が増えていく。

周りを良く観察してみると、
人やモノの輪郭が色濃く出てる。
それぞれの個性が際立ち、とても魅力的。

心の中で太陽が顔を出し、
全身がじんわりと暖かくなる。
もっとたくさん見てみたいなと思い、
旅に出ることにした。

ある街に着くと、人々が歓迎してくれた。
ただ、話しかけても言葉が通じない。
きっと素敵な魅力が詰まっているだろうと思い、
見守ることにした。


人々は、目を細めながら近づいてきて、
少し距離を置いて生活するようになった。

私を見る表情はいつも険しく、顔を背けたりする。
そんなに嫌なら離れれば良いのにと、
心の中でつぶやいた。

みんなの表情を見るたび、心がちくりと痛い。
何もしていないのに苦しい感情ばかり積もり、
人の顔を見られなくなった。 

もう何も知りたくない。
1人になりたいと思い、暗闇を探しに旅に出た。

樹が生い茂る森の中で、
ゆったり流れる川に吸いよせられる。


ああ、疲れた。
少し休もう。

川をぼーっと見ていると、底に暗闇を見つけた。

「あなたのもとへ行きたいんだ」

暗闇に話しかけると、
「君には難しいよ」
と静かに呟く。

「君は全ての光の源なんだ。
君の心にも私が存在するように、
みんなの心にも光と暗闇を併せ持っているんだ。

君が話したり楽しんでいるだけで、
周りはとても明るくなる。
君に触発されて、少しやってみようって
力が湧いてくる人がたくさんいるんだ。

ただ、君の個性はとても魅力的だけど、
影響力が強くてすぐに近づけないだけなんだ。

君は変わらず、今を充分に楽しめばいい。

きっと、深く関わりたいと
勇気を持って近づく人がいるはずさ。」


はっきりと目に見えるものだけが
全てじゃないんだね。 

光の当たる部分だけではなく、
影へとグラデーションに変わる、
輪郭の緩んだ瞬間を見てみようと思った。

≪輪郭が緩む瞬間≫